研究課題/領域番号 |
20H00136
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分14:プラズマ学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小野 靖 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (30214191)
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研究分担者 |
堀内 利得 核融合科学研究所, その他部局等, 名誉教授 (00229220)
井 通暁 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (00324799)
田辺 博士 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (30726013)
宇佐見 俊介 核融合科学研究所, 研究部, 准教授 (80413996)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
44,980千円 (直接経費: 34,600千円、間接経費: 10,380千円)
2024年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
2022年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2021年度: 13,130千円 (直接経費: 10,100千円、間接経費: 3,030千円)
2020年度: 14,300千円 (直接経費: 11,000千円、間接経費: 3,300千円)
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キーワード | 合体加熱 / 高ベータ化 / 第二安定化 / 球状トカマク / 点火 / 絶対極小磁場 / 負磁気シア / 電流駆動 / 核融合点火 / 磁気リコネクション / リコネクション加熱 / 絶対極小磁場配位 |
研究開始時の研究の概要 |
2個のトカマクを合体するとポロイダル磁場の2乗に比例した高イオン温度を得る。この高出力合体加熱で,追加熱なし・安価な核融合プラズマ点火シナリオを確立する。磁場で決まる単位体積当たりの加熱出力を最大化するため,装置寸法を絞って高磁場化し,数keVのイオン温度と安定性が確保できる合体加熱を実現する。独自開発の2次元計測3種と粒子シミュレーションを画像比較して,合体生成される高ベータトカマクのホローな熱圧力・電流分布の安定性と輸送,特に絶対極小磁場と負磁気シアの効果を解明する。最後に合体加熱を制御して自在な熱圧力分布を形成し,中性粒子粒子ビームも駆使して合体加熱配位の安定化と輸送の最適化を試みる。
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研究実績の概要 |
4年目は,合体する球状トカマク(ST)の電流シート幅を制御すれば,合体による(1)高出力イオン加熱と(2)磁気エネルギー注入(電流駆動)を使い分けられることを,Fusion Energy Conference 2023の口頭発表として報告した。即ち,合体するSTの初期速度を加減し,電流シート幅をイオンラーマ半径程度まで圧縮するか,否かによって,ポロイダル磁場エネルギーの40%程度がイオン運動・熱エネルギーとなる高出力イオン加熱,あるいはイオン加熱が5-10%に過ぎない磁気エネルギー・ヘリシティ注入が選択できる。 さらにこの2種類の運転は,合体生成される高ベータSTの平衡配位を大きく変えることが判明した。(1)の運転でイオン加熱パワーを最大化すると,極めてホローな電流分布を持つ高ベータ配位が形成され,この配位はBalloo安定解析コードによれば,バルーニング不安定に対する第2安定領域に位置し,さらにq値をある程度小さく設定すると絶対極小磁場配位が生成される。一方,(2)の運転では磁気軸付近にトロイダル磁束が注入されて,負磁気シア配位が簡単に形成できることがわかった。合体ではST配位の磁気面は外側から内側へと順に形成されるため,合体速度の時系列制御によって,生成するST配位の分布制御が可能になったといえる。 一方,ワッシャーガンで出力を0.5MW に倍増させた独自の15kV中性粒子ビームを(1)の高ベータ配位に入射すると,ベータ値が高いほど,安定性が大きく向上することがわかった。また,高磁場領域の合体実験を行うST-40実験では0.2Tの合体でkeVのイオン温度をルーチン的に実現している。従来の平衡コードに立脚したE-Fitでは合体するSTの2次元磁場分布が再構成できないため,MHDシミュレーションに立脚したE-Fitを開発したところ,直ちに採用されて,現在,論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
電流シート幅の制御による球状トカマク(ST)合体運転の高出力イオン加熱,磁気ヘリシティー注入の使い分けは,Fusion Energy Conference 2023の口頭発表となり,対応するPICシミュレーションも現れるなど広く認知された。この使い分けが,合体生成されたSTの分布を決めることがわかったことも今年度の大きな進歩である。合体加熱を抑制すると簡単に負磁気シア配位が形成され,合体加熱を最大化すると多くは第2安定化領域の高ベータSTが生成され,q値などを更に低めに調整すると絶対極小磁場配位が形成されることがわかってきた。これはST配位を外側の磁気面から順に生成していく合体過程において,その電流シート幅を時間的に制御すれば,生成される高ベータSTの外側磁気面から内側磁気面までの熱圧力プロファイルを人為的に制御できるようになりつつあることを意味しており,当初計画以上の成果と言える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,合体加熱を用いた球状トカマク(ST)の立ち上げ・点火のシナリオを完成させる。課題は 1)高出力加熱あるいは電流駆動を最高の効率で実現する合体制御法の完成, 2)合体生成されたSTの分布制御と特性解明である。 高磁場,2次元計測に長けたそれぞれST-40,TS-6装置に合体型PICシミュレーションを駆使し,MHD方程式に基づく内部磁場再構成コード:MHD-Fitを用いたkeVレベルの高磁場合体実験と磁気プローブ計測が可能な100eVレベルの合体実験を使い分ける。1)では,合体するSTが形成する電流シート幅を外部磁気圧によって変化させ,加熱パワーを制御する手法を完成させ,A)高出力加熱,B)磁気ヘリシティー注入(電流駆動)の最適合体運転を確立する。 2)では,開発済の2次元画像計測・再構成法を駆使し,合体生成した高ベータSTが有するi)負磁気シアやii)絶対極小磁場配位の最適な合体形成法を確立し,iii)高ベータ配位の安定性や輸送との関係を明らかにする。また,iv) 同じく電流シート幅変化によってリコネクションアウトフロー速度やイオン温度を外側の磁気面から内側の磁気面まで時系列で制御し,合体生成STの熱圧力・電流分布の自在な制御を完成させる。内部磁場再構成を含む磁場計測と安定解析コートやMHD/PICシミュレーションの連携により解明を進める。負磁気シアは合体加熱を抑制した場合に形成されやすい点を追究し,輸送障壁形成との関係を検証する予定である。 また独自の0.5MW, 15kVワッシャーガン型中性粒子ビーム入射(NBI)を駆使して,iv)運動論的イオンを用いた合体生成高ベータ配位の安定性向上や合体加熱・電流駆動の制御,v)合体加熱とNBIの運動論的安定化を用いた高ベータSTの安定性と輸送の向上を試みる。以上によって,合体立ち上げ・点火のシナリオを完成する予定である。
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