研究課題/領域番号 |
20H00138
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分14:プラズマ学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大野 哲靖 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (60203890)
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研究分担者 |
梶田 信 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (00455297)
澤田 圭司 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (40262688)
荒巻 光利 日本大学, 生産工学部, 教授 (50335072)
星野 一生 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (50513222)
田中 宏彦 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (60609981)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
44,460千円 (直接経費: 34,200千円、間接経費: 10,260千円)
2022年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2021年度: 20,930千円 (直接経費: 16,100千円、間接経費: 4,830千円)
2020年度: 12,090千円 (直接経費: 9,300千円、間接経費: 2,790千円)
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キーワード | 核融合 / ダイバータ / 再結合プラズマ / 非接触プラズマ / 非熱平衡過程 / 電子-イオン再結合 / 三体再結合 / 放射再結合 / プラズマ電位計測 / 流体コード / 衝突輻射モデル / 電子再加熱効果 / 分子駆動再結合 / 非熱平衡 |
研究開始時の研究の概要 |
プラズマプロセッシングや核融合研究において重要な課題となっている気相中で消えるプラズマの物性を明らかにする。電子・イオン再結合(三体再結合,放射再結合)が主要な過程となる再結合プラズマ中の非熱平衡性,電位構造に関連した熱・粒子輸送過程を,直線型高密度プラズマ発生装置を用いた基礎実験とシミュレーションとの相補的な研究により明らかにする。また,振動励起水素分子により駆動される再結合(分子駆動再結合)プラズマ生成に関して,固体壁で生成される振動・回転励起水素分子の影響と同位体効果を明らかにする。さらに,再結合プラズマのパルス応答を高時間分解で調べ,時空間変化を決定する物理・化学過程を明らかにする。
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研究実績の概要 |
プラズマプロセッシングや核融合研究において重要な課題となっている気相中で消えるプラズマ(非接触プラズマ)の物性,特に電子・イオン再結合(三体再結合,放射再結合)が主要な過程となる再結合プラズマ中の非熱平衡性,電位構造に関連した熱・粒子輸送過程を明らかにする。 非接触プラズマ中のプラズマ電位(VP)計測の高精度化を行った。非接触プラズマ中においても電子温度の計測精度が保証されたダブルプローブ(DP)を用いて,シングルプローブ(SP)による浮遊電位計測を援用した高精度なプラズマ電位計測手法(DSP)を確立した。さらに,加熱用のスイッチング回路を導入したエミッシブプローブ(EP)計測法によるVP計測法も開発した。空間電荷制限効果を考慮することによりEP計測とDSP計測は,電子温度が1eVを下回っている領域においても良い一致を示した。二つの計測手法により非接触プラズマにおいてもVP計測が可能であることを示した。さらに,EP計測とSPの浮遊電位の同時計測により,VPの高時間分解計測手法を開発した。 原子・分子過程の精度が非接触プラズマシミュレーションに対する影響を系統的に調べた。ヘリウム衝突輻射(CR)モデルを用いて流体コードのシミュレーションモデルを高精度化した。CRモデルを用いて電離過程と再結合過程における実効的な速度係数を計算したところ,実効的な速度係数は経験的な速度係数に対して,電離過程では大きく,再結合過程では小さくなることが分かった。また,新たに電子冷却速度係数と放射損失率を計算し,より厳密な電子エネルギー生成項を導入した。この三体再結合による再加熱効果を考慮しない場合はより電子温度が減少した。また,電子温度の低下により,電子密度も大きく減少した。再加熱効果を考慮しないと,電子温度・電子密度ともに過小評価されるため,この効果を考慮することは重要であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験研究においては,低電子温度で電位揺動が大きい非接触プラズマ中のプラズマ電位分布の計測法を確立することができた。また,空間電荷制限効果を考慮したプラズマ電位の高時間分解計測法も確立した。また,シミュレーション研究においては,ヘリウムプラズマを対象として,衝突輻射モデルを用いて,電離,励起,再結合などの原子・分子データの電子密度・電子温度依存性を詳細に解析して,データベースを構築した。それらのデータを流体コードに組み込むことにより,高精度の非接触プラズマのシミュレーションの可能となった。上記の成果は,国際会議などで発表されるとともに,学術論文としてPhysics of Plasmas誌,Plasma and Fusion Research誌に公表されている。以上より,当該年度の研究は順調に進展したと判断した。 さらに,直線型プラズマ装置の下流側のレーザートムソン散乱計測(LTS)装置の改良(光学系の改良)を行い,より低電子密度で1 eV以下の電子温度計測を可能とした。一方,上流側のLTSの整備を実施しているが,ポートの制限などにより光学系が複雑であり,SNの向上のために迷光対策を含めた改良がさらに必要である。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度は,実験及びシミュレーション研究において,主にヘリウムプラズマを対象に研究を進めてきたが,今後,水素プラズマによる分子駆動再結合プラズマに対して研究を進める。流体・衝突輻射コードによる定常非接触再結合プラズマ解析においては,流体コードと改良を加えた中性粒子輸送コードを結合させることにより,非接触(再結合)プラズマの構造,特に再結合フロント近傍の解析を行い,実験との比較検討を行う。また,分子駆動再結合過程による非接触プラズマ形成のモデリングを行うために,多種水素分子イオンを考慮した流体コードの開発を行う。実験的には,現行の直流放電システムでは大きな放電電力時に水素ガス放電が不安定になることを改善するために,放電の安定化のために分割型中間電極群を導入し,放電条件の最適化により,高密度水素プラズマの生成を可能とする。 さらに,非接触プラズマの動的挙動を明らかにするために,非接触プラズマへの摂動印加方法を確立し,非接触プラズマ摂動応答を高時間分解計測(プローブ,分光)により明らかにする
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