研究課題/領域番号 |
20H00153
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 忠幸 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (50183851)
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研究分担者 |
松本 重貴 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (00451625)
Melia Thomas 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 准教授 (30814909)
渡辺 伸 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (60446599)
内山 泰伸 立教大学, 人工知能科学研究科, 教授 (00435801)
米田 浩基 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (30881867)
Caradonna Pietro 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (10846520)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
43,550千円 (直接経費: 33,500千円、間接経費: 10,050千円)
2023年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
2022年度: 11,310千円 (直接経費: 8,700千円、間接経費: 2,610千円)
2021年度: 11,440千円 (直接経費: 8,800千円、間接経費: 2,640千円)
2020年度: 11,570千円 (直接経費: 8,900千円、間接経費: 2,670千円)
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キーワード | ガンマ線天文学 / コンプトンカメラ / ダークマター / 多価イオン / ガンマ線偏光 / 多価重イオン |
研究開始時の研究の概要 |
感度のギャプに埋もれて進展が妨げられている数100keVから数MeVの領域での宇宙物理学観測に革新をもたらすための新たなガンマ線宇宙望遠鏡の研究を行う。このエネルギー領域は、ブラックホールや低エネルギー宇宙線の研究、ダークマター探査などにおいて、極めて重要であるが、現在、観測ミッションが存在しない。本研究では、次世代半導体コンプトンカメラによるMeVガンマ線観測技術の確立をめざすと同時に、ダークマター探査のための理論研究を行う。
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研究実績の概要 |
将来のMeVガンマ線観測に向けた電子飛跡追跡型のSi/CdTeコンプトンカメラの開発を進め、その実現に必要なSi-CMOSセンサに用いるROICチップの設計検討を行なった。ROICチップは両面シリコン素子の20ミクロンピッチのピクセルの信号処理を行う集積回路として電子軌跡を高精度に検出する。本研究では画素回路や列並列ADC、それらをコントロールする内部回路の設計を行った。高橋、渡辺、米田は多価重イオンのエネルギー準位や相互作用にあらわれる量子電磁力学効果の検証のため、Si/CdTe多層半導体コンプトンカメラを用いた実験を行なった。暗黒物質の研究を通じて、MeV天文衛星を用いた暗黒物質探査の可能性についての観測的・理論的評価を進めた。高橋、松本、Meliaは COSI衛星プロジェクトにおける暗黒物質探査の共同リーダーとして、COSI衛星の感度を考慮した上で、MeVガンマ線を放出する暗黒物質の探索戦略をたてる作業を進めた。 高橋、米田はCOSI衛星搭載のバックグランドモニタ検出器の開発に関わり、重イオンをシンチレータに照射して応答を調べた。松本は、Sub-GeVの質量を持つ対消滅をする軽いスカラー暗黒物質模型を構築し、本模型の検証においてCOSIを始めとするMeVガンマ線観測を用いた間接検出が重要な役割を果たすことを明らかにした。また、軽い暗黒物質模型において必然的に導入される媒介粒子について、その可能な崩壊モードを系統的に分類し、現実的なシミュレーションを行うことで、将来のLHC加速器実験等における探査感度の評価も行った。高橋、内山、米田はブラックホール天体などの高エネルギー天体に関してX線天文衛星やH.E.S.S.チェレンコフ望遠鏡のデータ解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでに開発したCMOS-Siハイブリッド検出器のROIC(CMOS読み出し回路)からの情報はアナログ信号で、それがフレームごとで送られてくる。そのため外部にADCを別途用意する必要があった。そのため、外部回路が複雑になり読み出し高速化が難しい。これを解決するために列ごとにADCを内蔵させ、デジタル信号として出力するような機能をもつことが必要である。本研究ではそのような回路を実際に設計し、今後の製造に向けた重要なステップとなった。多価重イオンを用いた量子電磁力学効果の検証のための偏光測定実験においては、我々は「ひとみ」衛星のために開発した Si/CdTe コンプトンカメラを用いて 70keV 前後の X 線 偏光の高精度測定に成功し、Be-like イオンの 2 電子性再結合 X 線から全く予想されていなかった 量子干渉の効果を発見し、Physical Review Letterに掲載された。 COSI衛星プロジェクトが本格的に稼働し、我々はバックグランドやトランジェント天体をモニターするためのBTO検出器の開発に参画するとともに暗黒物質探査のサブグループを主導することとなった。COSI衛星はGe半導体を用いたコンプトンカメラをベースにしており将来のMeV観測衛星を立案する上で非常に重要である。我々はMeV領域に信号が現れる暗黒物質モデルの理論的検討を開始し、軽い暗黒物質の模型構築、様々な実験・観測からの制限の定量的評価、そしてその検証におけるMeVガンマ線観測の果たす役割を明らかにする研究が順調に進捗している。6月にはBTOに用いるシンチレータの選定のため、C(350 MeV/u)とHe(230 MeV/u)の照射実験を行った。検出器のスペクトルなどの基本特性の測定を行うとともに、重イオン通過時のNaI(Tl)とCsI(Tl)のアフターパルス信号を調べた。
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今後の研究の推進方策 |
CMOS-Siハイブリッド素子の開発を進める。本年度の設計をもとに読み出し素子の製造を実施する。Si/CdTeコンプトンカメラの効率を向上させるための厚型CdTeセンサーやその読み出し回路、実装方法などについて研究を行う。多価重イオンのエネルギー準位や相互作用にあらわれる量子電磁力学効果の検証のため、Si/CdTeコンプトンカメラを用いた研究を継続する。原子核実験におけるガンマ線偏光測定についてひきつづき検討を行う。 本研究では、 NASAのSMEXミッションに採用されたCOSI衛星に参加している。バックグランド検出器の開発のため QSTのHIMACにより、シンチレータの重粒子イオンに対する応答を調べる実験を昨年度に引き続いて行い、信号処理のためのアナログ回路、デジタル回路の設計を実施する。また COSIのデータチャレンジに参加するほか、理論面から、軽い暗黒物質探索に向けた具体的な計算を行う。研究範囲をO(1)MeV程度の質量を持つより軽い対消滅する暗黒物質に広げる。また、軽い崩壊する暗黒物質についての研究も展開する。更に、媒介粒子の記述において、場の理論の観点から曖昧な点があることが知られているが、これについての研究も進展させる。COSIの暗黒物質探査サブグループのワークショップを開催し、理論的検討を行う。
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