研究課題/領域番号 |
20H00155
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
仲澤 和馬 岐阜大学, 教育学部, 招へい教員 (60198059)
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研究分担者 |
肥山 詠美子 東北大学, 理学研究科, 教授 (10311359)
齋藤 武彦 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (50750874)
中川 真菜美 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 基礎科学特別研究員 (20894687)
吉田 純也 東北大学, 理学研究科, 助教 (60573186)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
44,330千円 (直接経費: 34,100千円、間接経費: 10,230千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
2021年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2020年度: 23,010千円 (直接経費: 17,700千円、間接経費: 5,310千円)
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キーワード | ダブルハイパー核 / 原子核乾板(エマルション) / 全面探査 / 飛跡線分端点検出 / 厳密少数理論計算 / 機械学習 / 原子核乾板(エマルション) |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、原子核乾板(特殊な写真乾板)に記録されているストレンジクォーク二つが関与するダブルラムダハイパー核やグザイハイパー核を、進歩の著しい画像認識技術を取り入れた顕微鏡探査システムの構築により、これまでの数十倍も検出するとともに、検出事象の解析手法の高速化をも達成し、理論との協働により、バリオン間互作用の統一的な理解をとおして核力をクォークレベルから理解することを可能とするものである。
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研究実績の概要 |
過去の数十倍のダブルハイパー核を検出し、新たな知見を得るためには、生成・崩壊という特徴的な形状を高速に撮像して検出する顕微鏡駆動システムの構築と、生成核種を同定するための崩壊娘粒子の静止点までの自動追跡とその粒子同定が必要である。 乾板のスキャニング・反応に付随する粒子飛跡の追跡・事象解析・エネルギー較正といった一連の解析を行う顕微鏡システムとその運用体制を構築した。特に原子核乾板中の荷電粒子の飛程とエネルギーの関係を較正する、乾板中に混入する自然放射性同位元素の崩壊に伴い放出されるアルファ崩壊事象の検出は、下記「8.現在までの進捗状況」に示す新たな機械学習モデル(Mask R-CNN)の導入により格段の進展が見られた。さらにΛ粒子の束縛エネルギーと寿命との関係で大きな問題となっている、最も軽いハイパートライトンにおけるΛ粒子の束縛エネルギーを、原子核乾板中をくまなく探査することで、世界で最も小さい系統的誤差で示すことができることが分かった。また、SPring-8のX線顕微鏡を用いて、分岐点が一意に同定できない事象6例の生成・崩壊の分岐点を同定した。これによりΞ粒子が深く束縛した事象の発見には至らなかったが、束縛エネルギーの測定精度を4MeVから0.8MeVへと数倍向上させることができた。このようにSPring-8のX線顕微鏡を用いた乾板中のハイパー核事象の精密解析手法を確立させると同時に、娘粒子の種類同定の可能性が見えてきた。 理論面では、カーボンやボロンアイソトープのラムダハイパー核の構造計算を行った。これは、ダブルラムダハイパー核が発見された際、崩壊過程を考える上で、これらのハイパー核の構造が重要であるためである。これらのハイパー核の研究について、Physical Review Cに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最も軽いシングルハイパー核(ハイパートライトン)の崩壊事象を用いて、機械学習モデルの適用による一連の解析の妥当性の評価や高速化を進めた。ハイパートライトンにおけるΛ粒子の束縛エネルギーの大きさは、その崩壊寿命との関係で近年大きな問題となっており、原子核乾板で高精度に束縛エネルギーを測定できること示したことは、非常に大きな成果である。また、エネルギー較正に用いるα崩壊事象の収集は従来の線分検出ベースの画像処理から機械学習ベースの物体検出器(Mask R-CNN)に置き換えた。これにより検出効率は約2倍に増加し、さらにヒトが行う目視の量を、線分検出の従来手法に対して検出効率を落とすことなく約1/17に削減することができた。X線顕微鏡を用いて飛跡を撮影すると、陽子(電荷+1)とヘリウム(電荷+2)の飛跡を構成する現像銀粒子の数密度が相違する兆候が見られる。この相違を定量化すれば、わずか0.1mmの飛跡の長さで粒子電荷識別が可能になるという新たな知見が得られた。 理論面ではダブルハイパー核だけに閉じず、シングルΛハイパー核の構造を研究することで、崩壊過程も含めて網羅的に研究を進めているため、本研究も重要であると判断し、また論文についても着実に掲載できていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
得られた最も軽いシングルハイパー核の崩壊事象を用い、それらのΛ粒子の束縛エネルギーを評価するなど物理解析を行う。ダブルラムダハイパー核やグザイハイパー核事象を検出するべく、これらの模擬画像を生成し、この画像で物体検出器を訓練し、物体検出器を実際の顕微鏡画像に適応して事象探索を行う。引き続き一連の解析の流れの高速化に取り組む。一方X線顕微鏡を用いて、陽子およびヘリウムに着目して、その現像銀粒子の数密度から電荷の識別を試みる。 理論面では今後、A=7Ξハイパー核の構造研究とその反応の研究、およびA=10ハイパー核の研究を進める。
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