研究課題/領域番号 |
20H00160
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
兼村 晋哉 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (10362609)
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研究分担者 |
進藤 哲央 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 教授 (60553039)
青木 真由美 金沢大学, 数物科学系, 教授 (70425601)
柿崎 充 富山大学, 学術研究部理学系, 准教授 (90612622)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,640千円 (直接経費: 32,800千円、間接経費: 9,840千円)
2024年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
2023年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
2022年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
2021年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
2020年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
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キーワード | 電弱対称性の自発的破れ / 標準理論を超える物理 / ヒッグス粒子 / 加速器実験 / 重力波実験 / 標準理論を超える物理理論 / 電弱対照性の自発的破れ / 表樹理論を超える物理 / 標準理論を超える新物理 / ヒッグス粒子の物理 / 電弱対象性の自発的破れ / 電弱相転移の物理 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒッグスセクターの物理は、電弱対称性の自発的破れの力学的要因や、標準理論を超える新物理を決定するうえで鍵となる。本研究は、未解決の諸現象を説明する新物理モデルに現れるヒッグスセクターを系統的に研究し、様々な実験を組み合わせてヒッグスセクターを解明することから新物理に迫る方法を明らかにする。現行の各種実験の成果を踏まえつつ、将来の近い時期に実施される 1) 高輝度LHCでの新粒子探索、2) ILC等におけるヒッグス精密測定、 3) 宇宙重力波干渉計(LISAやDECIGO計画等)における電弱相転移の検証等を融合して、ヒッグスセクター解明への新時代に向けた理論的研究を世界に先駆けて実施する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、現行実験に加えて将来のHL-LHCでの新粒子探索、ILC等でのヒッグス超精密測定、LISA (さらに日本のDECIGO計画)における重力波観測等を組み合わせ、ヒッグスセクターを解明し、新物理に迫ることにある。ヒッグスセクターの検証は、質量の起源を担うヒッグス機構 (弱ゲージ場や物質場とヒッグス粒子の結合)の部分と、電弱対称性の自発的破れを引き起こし電弱真空構造を決めるヒッグスポテンシャルの 部分に分けられる。これらを包括的に研究しヒッグスセクターを徹底的に解明して新物理に迫るには、上に述べた将来実験を総合的に活用することが鍵となる。実験間の相補性と、将来のほぼ同時代に行われる相乗効果に注目し、ヒッグス物理の全貌を解明する為の理論研究を実施することにより、ヒッグス物理から新物理に迫る方法を確立する。その成果に基づいてヒッグス物理の解明に対する最適化を検討し、各実験に提言したい。本研究では期間5年間を以下の3段階に分けて実施する。 ・第一段階2020-2021年度 拡張ヒッグス模型の理論的性質と既存実験による制限の研究 ・第二段階 2022-2023年度 各実験で相補的にモデルを検証するための理論的研究 ・第三段階 2024年度 3実験の相乗効果でヒッグスセクターを解明する方法の確立 期間5年で成果を上げるため、様々な新物理に現れる拡張ヒッグスセクターのいくつかのモデルに焦点を絞り、その性質の研究と検証に向けた解析に集中する。厳選した次の模型群をベンチマーク模型として中心的に扱う。 1) 点モデル1ヒッグス2重項または1重項が追加された拡張ヒッグス模型 2) モデル2追加されたスカラー場が新対称性の下で暗黒物質となる拡張模型 3) モデル3複合ヒッグス場のシナリオに基づくヒッグス模型、を研究する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2021年度は昨年度に着手した第一段階の研究を進めた。既存データとしては現行のLHC実験、SuperKEKBやT2K等の各種フレーバー実験、各種暗黒物質実験等の成果を全て考慮し慎重に精査した。 モデル1では、追加された重いヒッグス粒子について輻射補正を含む崩壊率等の精密計算を系統的に進める。また2020年度にCPの破れに対する電気双極子モーメント(EDM)からの制限をクリアするパラメータ領域を精査し、ILCでの検証可能性を研究したが、2021年度ではこの模型に関して高輝度LHC実験における検証可能性を定量的に明らかにする研究を行う。さらにこの模型に基づいて、電弱バリオン数生成シナリオにおける生成バリオン数を研究した。モデル2では暗黒物質の直接探索・間接探索のデータとLHCでの暗黒物質生成過程の解析を用いてパラメータ領域 を精査した。特に暗黒物質の直接探索では見ることが難しい軽いWIMP暗黒物質の模型を研究し、成果を論文にまとめた。モデル3では、ヒッグス粒子が高いスケールでの大局的対称性の自発的破れに伴う擬南部ゴールドストン粒子とする「複合ヒッグス模型」の理論的特徴を研究し、ヒッグス粒子の結合定数に対する輻射補正を有効に計算するための方法論を研究する予定であったが、この研究については協力研究者の確保の困難があった理由などで、現在も研究継続中である。全体として研究は非常に順調に進展し、計画に沿った多数の新しい成果が出た。得られた成果は、多くのレター論文やフル論文等にまとめて逐次出版し、また国内、国外で催された多数の学会、研究会、国際会議等に参加し研究代表者や研究分担者、研究協力者が成果発表した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究は全体として順調に進んでいるので、当初計画に沿って研究を続行する。拡張ヒッグスセクターに現れる第2、第3の重いヒッグス粒子の崩壊現象に対する輻射補正の系統的な研究を完成させ高輝度LHC実験や計画中のILC実験を用いてすでに発見されているヒッグス粒子の精密測定に加え、重いヒッグス粒子の探索も加えたヒッグスセクターの決定法を完成させる。また、電弱対称性の自発的破れが初期宇宙に生じた際の相転移現象が一次相転移かどうかは、宇宙バリオン数生成のシナリオにも大きく影響するので非常に重要である。まず一次相転移が伴う電弱バリオン数生成のさまざまなモデルを理論的に研究する。次に加速器現象や重力波による一次相転移の痕跡の探究に関する現象論研究を増強することに加え、新たに原始ブラックホールを用いた検証可能性を探究し、強い一次相転移を伴う新物理モデルを将来実験で立体的に検証する可能性を探究し、世界をリードする研究を行う。一部に遅れが見られる複合ヒッグス模型の理論研究については、新たな研究協力者を加えてより効果的に研究を進め、成果をあげる。複合ヒッグスモデルに関するこれまでの先行研究の調査を行い、現状の実験データを踏まえつつ、相転移現象を中心に研究を行い、加速器物理、フレーバー物理、重力波、原始ブラックホールなどの実験を用いた理論の検証可能性に迫る。
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