研究課題/領域番号 |
20H00162
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
小汐 由介 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 准教授 (80292960)
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研究分担者 |
中島 康博 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (80792704)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
44,460千円 (直接経費: 34,200千円、間接経費: 10,260千円)
2024年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
2023年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2022年度: 12,220千円 (直接経費: 9,400千円、間接経費: 2,820千円)
2021年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2020年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
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キーワード | 超新星背景ニュートリノ / スーパーカミオカンデ / 中性子捕獲 / 素粒子・原子核反応 |
研究開始時の研究の概要 |
世界最大のニュートリノ検出器・スーパーカミオカンデでは2020年よりガドリニウムを導入する SK-Gd 実験が稼働する。その実験での超新星背景ニュートリノの発見が本研究の目的である。宇宙誕生から現在までの140億年の間に起こった超新星爆発により放出され、現在の宇宙に漂っている超新星背景ニュートリノの発見は、宇宙の歴史や恒星進化の謎に対するブレイクスルーとなる。本研究では、素粒子・原子核実験での精密測定を通してスーパーカミオカンデ検出器の性能を極限まで引き出し、宇宙物理学の歴史に新たな一歩を記すことを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、宇宙が始まって以来、超新星爆発によって放出された超新星背景ニュートリノ(SRN)を、スーパーカミオカンデ(SK)で、世界で始めて発見することが目的である。 2023年度の成果としては、まず2020年夏に始まったSK-Gd実験における初めてのSRN探索結果を報告したことである。残念ながら世界初の発見には至らなかったが、先行研究の約5分の1の期間で、同等の探索感度を実現し、世界最高感度での探索結果となった。並行して前年度に追加導入した期間のデータ解析も進めており、予想通りの検出器性能が実現していることを示した。さらにSRN探索も鋭意、進めている。また本研究で特に重視している大気ニュートリノによる中性カレント準弾性散乱(NCQE)反応による背景事象の精密観測の報告も行った。この研究により、反応断面積の測定に加え、中性子と酸素原子核反応に対する新たな知見を得ることにも成功した。 この NCQE反応は、素性のよくわかったニュートリノビームを同じSK検出器で捉えるT2K実験でも測定することが可能である。T2K実験では、過去に取得したデータ再解析を進めており、NCQE解析手法は確立できた。本研究では、T2K実験における NCQE反応の精度をさらに上げるために、ニュートリノビームフラックスの不定性を削減する NA61/SHINE実験と、酸素原子核と核子とのビーム実験も進めている。前者では、前年度に取得した新たなデータ解析を進めており、今年度までに基本的な検出器較正の解析は完了した。また後者では、まず大阪大学核物理研究センター(RCNP)で過去に取得した中性子と酸素原子核の反応を測定する実験結果を論文として出版した。さらに、理化学研究所の RIBF を用いた全く新たな実験を実施すべく、関係する研究者と議論を進め、実験が提案できる段階まで進んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、本研究の実験結果に関する論文を3本出版した。まず、当初の研究計画では研究最終年度の来年度に出版する予定のSK-Gd実験におけるSRN探索の論文を、1年前倒しで出版することができた。残念ながら世界で初めての発見には至らなかったが、現時点での世界最高感度での探索結果であるとともに、SK-Gd実験が超新星背景ニュートリノ探索では、世界で最高の性能を持つことを実証した。 また、本研究での背景事象である大気ニュートリノによる NCQE 信号の確認、及び、そのデータを用いた中性子・酸素原子核反応モデルの決定に示唆を与える論文も出版した。この結果は、世界で初めて当該反応モデルの検証を系統的に行った研究成果である。 さらに過去のRCNPで行った中性子・酸素原子核反応実験の論文も出版された。この実験は世界で始めて、数10MeVから数100MeV中性子と酸素原子核との反応を系統的に測定するものであり、様々な原子核反応の断面積を精密に導出した。 後者2本の論文は、宇宙物理学・素粒子物理学から原子核物理学まで広がる研究テーマの創出とも言える成果である。 他にも超新星爆発の理論に関する論文、また超新星背景ニュートリノのレビュー論文など、本研究に関係する論文を立て続けに出版することができた。 以上の研究成果から、当初の計画以上に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
SK-Gd実験での SRN 探索では、初期データの結果を報告できたが、さらに硫酸ガドリニウムを追加導入したフェーズでのデータ解析を鋭意行なっており、来年度には報告できるように進めていく。 T2K実験では、新たな NCQE の解析手法を用いて過去のデータを再解析することで、特に特に中性子と酸素原子核反応による不定性を削減した結果を来年度に報告できるように研究を進める。 NA61/SHINE実験では、2022年度に行った陽子とT2Kレプリカ標的(炭素)とのハドロン反応により発生するK粒子測定実験のデータ解析を進め、来年度中に最初の結果を導出するべく進めていく。 原子核実験については、まずRCNPの残っているデータ解析を完了し、最終結果を報告するとともに、この結果を用いた原子核反応モデルの精密化を行う。
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