研究課題/領域番号 |
20H00163
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
志垣 賢太 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 教授 (70354743)
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研究分担者 |
八野 哲 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 助教 (20850720)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
44,460千円 (直接経費: 34,200千円、間接経費: 10,260千円)
2024年度: 9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円)
2023年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
2022年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
2021年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
2020年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | 高エネルギー原子核衝突 / パートン多体系 / カイラル対称性 / ミュー粒子測定 |
研究開始時の研究の概要 |
ビッグバン直後の極初期宇宙など超高温ではクォークが閉込から解放される。クォーク相の情報を伝え得る探針として、原子核衝突の運動学的中心領域では電子を、前方領域ではミュー粒子を主として用いてきた。しかしLHC加速器の衝突エネルギーでは物理的に興味ある運動学的中心領域が延伸して技術的にミュー粒子測定が優位となる前方領域と重なり始める。この邂逅に着目し、同加速器において高精度高統計ミュー粒子測定を推進する。新規検出器をALICE実験に導入し高精度かつ従前の10-100倍の高統計データを収集して、クォーク相の生成機構、条件、性質の解明、特に特徴的な重いクォークの挙動とカイラル対称性回復現象にまで迫る。
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研究実績の概要 |
クォークは強い相互作用により通常はその少数多体系であるハドロン中に閉込められ、単独で存在し得ない。約2兆ケルビンを越える超高温で閉込から解放されるクォーク相の性質解明は、高温極限における強い相互作用の振舞や、極初期宇宙発展シナリオ検証に欠かせない。衝突系の初期にのみ存在するクォーク相の情報を実験的に伝え得る探針が、再閉込後のハドロン相通過の際に強い相互作用による擾乱を受けない、電子、ミュー粒子、光子など、いわゆる透過的探針である。 従来、衝突系の運動学的中心領域を探る探針として低運動量での粒子識別の容易な電子を、強いブーストを受ける前方領域を探る探針として高運動量で識別容易なミュー粒子を、各々主として用いてきた。物理的には前者運動学領域の到達エネルギー密度がより高くより興味深いが、電子測定はミュー粒子測定に比べ背景事象が多く、両者は一長一短の関係にあった。ところが衝突エネルギーが高い欧州CERN研究所LHC加速器では、ビーム軸方向の強い一次元膨張のため、物理的に興味ある運動学的中心領域が延伸し、低横運動量を含むミュー粒子測定が技術的に可能かつ優位な前方領域と重なり始める。 本研究では、この新たな邂逅に着目し、LHC加速器において高精度高統計ミュー粒子測定を強力に推進する。ALICE実験においてミュー粒子生成点近傍での高精度飛跡測定を目的に前方ミュー粒子飛跡検出器を開発建設実装し、立上調整較正を行った。データ収集系高度化と併せ、従前の10倍の統計に及ぶミュー粒子測定と100倍の電子測定を可能とする。同実験第三期運転を牽引し、陽子+陽子衝突運転および鉛原子核+鉛原子核または陽子+鉛原子核衝突運転において、新規高精度高統計データの収集を進める。 2022年度は、ALICE実験第三期運転を開始し、陽子+陽子衝突データおよび鉛原子核+鉛原子核衝突試験データを収集し、初段解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ビッグバン直後の極初期宇宙など超高温ではクォークが閉込から解放される。クォーク相の情報を伝え得る探針として、原子核衝突の運動学的中心領域では電子を、前方領域ではミュー粒子を主として用いてきた。しかしLHC加速器の衝突エネルギーでは物理的に興味ある運動学的中心領域が延伸して技術的にミュー粒子測定が優位となる前方領域と重なり始める。この邂逅に着目し、同加速器において高精度高統計ミュー粒子測定を推進する。新規検出器をALICE実験に導入し高精度かつ従前の10-100倍の高統計データを収集して、クォーク相の生成機構、条件、性質の解明、特に特徴的な重いクォークの挙動とカイラル対称性回復現象にまで 迫る。 研究期間内の確実な物理目標達成に向け、本研究計画実施に不可欠な要素である前方ミュー粒子飛跡検出器を建設完了しALICE実験に導入して初期立上運用まで完遂した。さらにALICE実験第三期運転を開始し、陽子+陽子衝突データおよび鉛原子核+鉛原子核衝突試験データを収集して、初段解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、LHC加速器ALICE実験における前方ミュー粒子測定高度化を推進し、かつ最大限に活用して、以下3点の目的達成を目指す。 (0) 基礎目標として、ALICE実験検出器高度化の重要な要素である前方ミュー粒子飛跡検出器の建設導入実現、および立上、較正、初段解析の完遂により、同実験第三期運転における高品質データ収集の実現完遂。 (1) 喫緊の物理課題への挑戦として、小さい衝突系(陽子+陽子、陽子+原子核)の高粒子多重度事象におけるクォーク相生成の実験的な確証。 (2) 積年の物理課題への発展的挑戦として、クォーク相に関わる最大の未解決物理課題である、カイラル対称性回復によるハドロン質量状態変化の探索。
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