研究課題/領域番号 |
20H00172
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分16:天文学およびその関連分野
|
研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
濤崎 智佳 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (40356126)
|
研究分担者 |
鎌崎 剛 国立天文台, アルマプロジェクト, 助教 (00413956)
田中 邦彦 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (00534562)
小宮山 裕 法政大学, 理工学部, 教授 (20370108)
江草 芙実 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (30644843)
廿日出 文洋 国立天文台, アルマプロジェクト, 准教授 (70719484)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
44,980千円 (直接経費: 34,600千円、間接経費: 10,380千円)
2023年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
2022年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
2021年度: 12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
2020年度: 13,520千円 (直接経費: 10,400千円、間接経費: 3,120千円)
|
キーワード | 星間物質 / サブミリ波 / 中性炭素原子輝線 / 低金属量銀河 / デジタル分光システム / 中性炭素原子 |
研究開始時の研究の概要 |
低金属量銀河において,銀河の進化過程を理解する上で不可欠な,星形成の母体である低温の分子雲を定量,その分布や物理状態を知ることを目的として,世界最高水準の観測条件を持つチリ・アタカマに設置されたASTE望遠鏡に,広帯域・高周波数分解能観測を可能にする分光計を導入する。我が国が開発したALMA超伝導受信機の優れた性能を引き出しつつ,低金属量環境下の近傍銀河に対して分子雲スケールまで分解,かつALMAでは観測が難しい,薄く広がった放射成分までしっかり捉えた,銀河全域にわたる中性炭素原子 [CI](1-0) 輝線データを取得し,低金属量銀河における分子雲量のトレーサーとして確立する。
|
研究実績の概要 |
本年度は、開発した新デジタル分光観測システムを使い、運用を再開したASTE望遠鏡で中性炭素原子からの[CI](3P0→3P0)輝線の観測を実施することができた。まず、大質量星形成領域の代表例として、天の川銀河の分子雲W51を観測し性能評価を行った。サブミリ波望遠鏡JCMTによる観測データと強度および速度がよく一致することを確認できた。その上で、本研究の観測ターゲットである低金属量矮小銀河NGC6822のいくつか大質量星形成領域に対し、中性水素原子輝線[CI]と一酸化炭素分子輝線CO(J=4-3)及びCO(J=3-2)の観測を行った。並行して、ALMA望遠鏡によって取得したNGC6822のCO(J=1-0) 広域観測のデータ解析を進めた。その結果、ASTE望遠鏡によって取得されたCO(4-3)とCO(3-2)のCO(1-0)に対する強度比は、大質量星形成領域HubbleVにおいては、両者とも~1という値が得られた。この領域の分子ガスは、形成されている大質量星の加熱により、少なくともJ=4まで熱化されていると考えられる。一方、[CI]輝線は検出されず、[CI]/CO(3-2)の輝度温度比の上限として <1.6が得られた。低金属量環境下にある大質量星形成領域では、紫外線や宇宙線の影響でCOが乖離され、CO輝線ではトレースされない、「COダーク・分子ガス」が存在し、[CI]/CO輝線比が上昇すること、そして[CI]輝線が、より良い分子ガスのトレーサーになることが理論的に予測されている。その一方で近傍の低金属量銀河であるSMCでは、0.4-0.1程度が報告されていた。本研究によるNGC6822の観測結果は、SMCでの観測結果と整合的で、[CI]の分子量のトレーサーとしての有効性の検証に重要な意味を持つ可能性がある。しかしながら、その検証にはより深い観測が必要になると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度に発生した望遠鏡の不具合と、その後のコロナ禍のため、観測再開まで長い時間を要したが、新分光計システムのASTE望遠鏡への搭載と、性能評価、一部観測を開始できた。しかし、天候や望遠鏡の別の不具合の発生により、観測時間が当初予定よりも短くなったため、目的とする領域に対する観測の完遂には至らなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に発生した望遠鏡の不具合については、調査により原因がほぼ特定され、現在具体的な対処を検討中である。次年度以降、この問題を解消し、観測領域の拡大とより深い観測を行うことで、[CI]の分子量のトレーサーとしての有効性の検証を進め、研究を加速させたい。
|