研究課題/領域番号 |
20H00186
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
杉山 慎 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (20421951)
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研究分担者 |
菅 浩伸 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (20294390)
古屋 正人 北海道大学, 理学研究院, 教授 (60313045)
青木 茂 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (80281583)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
44,850千円 (直接経費: 34,500千円、間接経費: 10,350千円)
2024年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2023年度: 9,880千円 (直接経費: 7,600千円、間接経費: 2,280千円)
2022年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2021年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2020年度: 11,700千円 (直接経費: 9,000千円、間接経費: 2,700千円)
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キーワード | カービング氷河 / パタゴニア / 湖 / 海洋 / 氷河末端消耗 / 南極 / 溢流氷河 |
研究開始時の研究の概要 |
カービング氷河(海・湖に流入する氷河)は近年の後退が著しく、海水準上昇に深刻な影響を与えている。しかしながら特に湖(淡水)に流入する氷河は研究例に乏しく、氷河変動予測の制約となっている。本研究では、南米パタゴニアにおいて湖と海洋に流入する両タイプのカービング氷河を観測し、氷河変動メカニズムの違いを明らかにする。さらにその知見を活かして、パタゴニアにおける氷河変動の実態を把握して将来変動を予測する。
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研究実績の概要 |
COVID-19に関する状況改善を受けて、7~8月にはグリーンランド、2~3月にはチリに渡航して現地観測を実施した。また期間を通じて人工衛星データを用いた解析を行った他、過去にパタゴニア・南極・グリーンランドのカービング氷河で取得した現地データの解析を進めた。これらの結果を内外の学会で発表し、一部を論文として出版した。 (1) 野外観測:2023年2~3月にかけて、チリ・パタゴニアの湖に流入するグレイ氷河にて観測を実施した。海洋調査会社(マリン・ワーク・ジャパン)の協力を得て、マルチビームソナーによる測定が実現し、氷河末端の水中形状と湖底地形の精密測量に成功した。湖に流入するカービング氷河の末端における同種の測定は世界で初めてとなり、画期的なデータを取得することができた。またLiDARやインターバルカメラを用いた氷河測量を実施した。さらに2022年7~8月にはグリーンランド北西部にて調査を行った。カービング氷河が流入するフィヨルドで、海水特性と音響を測定する係留系を設置して、通年の観測を実施した。 (2)データ解析:人工衛星データの解析によって、2020年にパタゴニア西部で起きた大規模な氷河湖決壊を発見し、その規模と決壊メカニズムを解明した。また東南極・リュツォ・ホルム湾に流入するカービング氷河について、その変動と流動が海氷に影響を受けていることを明らかにした。また南極ラングホブデ氷河にて取得した、掘削孔を使った測定データの解析を進めた。 (3) 論文出版・学会発表:パタゴニアで見出した氷河湖排水イベントと、グリーンランドのフィヨルド環境にカービング氷河が与える影響について、それぞれ国際誌に論文を出版してプレスリリースを行った。またグレイ氷河の前縁湖で測定した湖水温度の通年変化と、ラングホブデ氷河での掘削孔測定について国際学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
COVID-19に関する状況がようやく改善し、2022年度にはパタゴニアとグリーンランドにおける野外観測が実現した。2021年度に調査を行った南極と合わせて、カービング氷河によって特徴づけられる3つの重要な氷河地域で観測を実施したことになる。その結果、当初の計画であった淡水性および海洋性カービング氷河の比較に加えて、南極・グリーンランド・パタゴニアにおけるカービング氷河の比較まで、研究課題が発展しつつある。このような状況と、以下に記す詳細から総合的に判断して「当初の計画以上に進展している」と判断する。 (1) 野外観測:パタゴニアにおける観測が実現し、最大の目標であったマルチビームソナーによる氷河末端測量が実現した。海洋調査会社の協力により、今後他の氷河で同様の観測を実施できる見込みが立った。またグリーンランドでの観測では、通年の海洋データが期待できる係留系の設置に成功した。この装置を回収すれば、カービング氷河とフィヨルドの相互作用に関して重要なデータが取得できる。 (2)データ解析:人工衛星データの解析によって、パタゴニアにおける大規模な氷河湖決壊を明らかにした。氷河湖の排水後に流入する氷河に大きな変化が確認されており、水位変動がカービング氷河に与える影響を解析するユニークな研究機会を得た。またグリーンランドの氷河フィヨルドで取得した過去のデータから、氷河流出がフィヨルド環境に与える影響について想定以上の成果が得られた。 (3) その他の研究活動:マルチビームソナーによる氷河末端測量の手法確立に加え、LiDAR、加速度計、インターバルカメラなどを用いた新しい観測手法の開発が進んでいる。 (4) 論文出版・学会発表:研究成果の論文出版が順調に進んでいる他、海外渡航の再開に伴って国際学会で発表も当初の計画通り実施できている。
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今後の研究の推進方策 |
ようやくCOVID-19が収束して海外渡航が可能な状況となった。今後はパタゴニアを中心に現地観測を実施して、淡水性および海洋性カービング氷河の比較を行うと共に、グリーンランドと南極で得た観測データも使って、パタゴニア・グリーンランド・南極の比較というより大きな課題にも挑戦する。 (1) 野外観測:2023年度は、パタゴニアの海洋性氷河において野外観測を実施する。チリの研究協力者に依頼して、チリ西岸に流出する氷河へのアプローチを目指す。またグリーンランドにおいて係留系の回収を行う他、南極ラングホブデ氷河に設置した測定装置のメンテナンスとデータ回収を実施する。 (2) 人工衛星データ解析:パタゴニアにおいて見出した氷河湖排水イベントに着目し、この湖に流入するカービング氷河の変動から、湖水面の変化が氷河変動に与える影響を解明する。また南極リュツォ・ホルム湾に流入するカービング氷河の変動解析を進め、氷河変動に海氷が果たす役割を解明する。 (3) 観測データの解析:グレイ湖で取得したマルチビームソナーのデータを解析し、氷河の水中融解とカービングのメカニズムを解明する。また詳細な湖底地形データと過去の氷河変動を比較し、カービング氷河の変動に地形が果たす役割を明らかにする。また南極ラングホブデ氷河において得られた掘削孔測定データから、氷河底面の水理環境と氷河流動の関係を明らかにする。 (4) 論文出版・学会発表:パタゴニアの氷河湖排水に伴う氷河変動、南極のカービング氷河変動、グリーンランドと南極の氷河流動メカニズムに関する論文出版を行う。また、国内外の学会で発表を行い、特にパタゴニアに関する国際的研究コミュニティとの情報交換、国際共同研究を進める。
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