研究課題/領域番号 |
20H00199
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
島 伸和 神戸大学, 理学研究科, 教授 (30270862)
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研究分担者 |
山本 揚二朗 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(地震津波予測研究開発センター), 副主任研究員 (10540859)
松野 哲男 神戸大学, 海洋底探査センター, 准教授 (80512508)
伊藤 亜妃 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター), 副主任研究員 (90371723)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
46,930千円 (直接経費: 36,100千円、間接経費: 10,830千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2021年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2020年度: 35,100千円 (直接経費: 27,000千円、間接経費: 8,100千円)
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キーワード | 巨大カルデラ噴火 / 鬼界海底カルデラ火山 / マグマ供給系 / 海陸統合地震観測 / 海底電磁気観測 |
研究開始時の研究の概要 |
日本火山列島で最も直近(7300年前)に巨大カルデラ噴火を起こした「鬼界海底カルデラ火山」を対象として、海底・陸上でのアレイ長期観測で得られる自然地震・地磁気変化を利用した地震波・電磁気トモグラフィを行い、上部マントルから地殻にかけて高精度イメージングを実施する。これにより、(a) モホ面直下までの上部マントル内を上昇するマントルダイアピル、(b) 地殻最下部の部分融解ゾーン、(c) 上部地殻内で成長/残存する巨大マグマ溜り、の存在とその位置・規模・形状・状態を明らかにする。その結果、巨大カルデラ噴火を導いたマグマ供給系の現状を把握し、巨大カルデラ噴火に至るメカニズムの理解を進める。
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研究実績の概要 |
研究目的を達成するために、鹿児島市の南約100kmの海域に位置する「鬼界海底カルデラ火山」を対象として、この巨大カルデラ火山のマグマ供給系全体の地球物理学的なイメージングを実施する。これにより、鬼界カルデラ直下に存在すると考えられる特徴的な構造の位置や大きさ等を把握する。 本年度は、巨大カルデラ火山のマグマ供給系全体のイメージングのために、継続して実施してきた海底および陸上での地震観測と電磁気観測を概ね終了し、観測機器の回収を行うことで観測データを取得した。海底で長期観測を行った広帯域海底地震計および、短周期海底地震計、海底磁力計は令和2年度10月に海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究船「かいれい」KR20-11航海で、海底電位差磁力計は令和3年度7月にJAMSTECの研究船「かいめい」KM21-05航海で設置したものである。これらの海底観測機器の回収を、JAMSTECの研究船「新青丸」によるKS-23-3航海(令和5年2月)により行った。また、臨時陸上観測点として長期観測を行っていた広帯域地震計の一部および磁力計の全台の回収を11月および1月に行った。竹島と種子島では地震観測を継続している。 一方で、これまでに海底観測機器で得られた観測データを順次解析を進めており、得られた成果を学会・シンポジウム等で発表した。例えば、短周期海底地震計および陸上観測で得られた地震波形データから、観測網の直下で発生していた地震のデータを取り出し、走時を用いたローカルトモグラフィの初期的な解析結果が得られた。また、屈折法地震探査により得られたデータの解析を進め、鬼界カルデラ直下を含む全長175 kmの測線下の地震波速度構造を推定した。さらに、海底で得られたMTレスポンス等から3次元比抵抗構造を推定するためのインバージョン手法の開発をさらに進め、実データへの応用に着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度も新型コロナウイルス感染症の影響により、「鬼界海底カルデラ火山」とその周辺で観測していた観測機器を回収するための研究航海ならび陸上での現地作業にも多少の支障がでたが、感染状況を見極めながら適切に対応したことにより、計画していた項目を概ね実施することができた。 令和2年度から多数の観測機器を海底および陸上の臨時観測点として設置したが、計画していたようにほぼすべての機器を回収することで、巨大カルデラ火山のマグマ供給系全体のイメージングに必要な観測データを取得することができた。特に「鬼界海底カルデラ火山」とその周辺海域の海底で長期観測していた広帯域海底地震計と海底電位差磁力計を、JAMSTECの研究船「新青丸」によるKS-23-3航海で、これらのすべての観測機器が回収できたことが研究を進める上で大きな成果である。この研究航海は、1年に1度の公募によるもので、昨年度に採択されて航海そのもの確保はできていたが、日程等は研究者が自由に設定できるものではない。このため現実問題として荒天により希望する研究内容を実施できないリスクも高かったが、短期間の航海でかつ悪天候だったにも関わらず十分な成果が得られた。 これまでに得られた観測データは限られていたが、それらの観測データの解析を進めており、その解析結果が出始めており、まだ一部ではあるが巨大カルデラ火山のマグマ供給系全体のイメージングが進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画では、今年度まで継続して実施してきた海底および陸上での長期観測で得られた観測データの解析を進めることで、鬼界カルデラ火山のマグマ供給系全体のイメージングを行い、その中から特徴的な構造の抽出等により地球科学的な考察を行う。 ・海底電位差磁力計(OBEM)で観測した海底電磁場変動データから得られたMTレスポンスを使い鬼界カルデラ火山近辺の詳細な3次元比抵抗構造を推定する。この比抵抗構造推定の精度向上のために、次の3つの点を重点的に行う。1)新たに昨年度に回収したOBEMのデータを加える。2)この比抵抗構造の推定には、新たに開発をしたインバージョン手法を利用しているが、実データに対応させてインバージョン手法のチューニングを行う。3)本海域は浅海であり、観測データには強い潮流の影響を受けていることが明らかになったが、この影響を避ける工夫を解析で行う。 ・屈折法地震探査により推定した鬼界カルデラ直下を含む浅部の地震波速度構造の結果を学術論文としてまとめる。 ・短周期海底地震計および臨時陸上観測点で得られたデータから取り出した観測網の直下で発生していた地震のデータを用いて、走時を用いたローカルトモグラフィ解析を進めている。昨年度に新たに回収した広帯域海底地震計のデータも活用し、特にカルデラ直下の深さ50㎞より浅い部分において、高解像度となる10-15kmの空間分解能の構造イメージを得る。 ・長周期の波形を観測できる広帯域海底地震計と陸上広帯域地震計による観測データを使用して、遠地地震のデータを用いたグローバルトモグラフィによる、マントルダイアピル~部分融解ゾーンのP波速度構造推定を行う。これにより、マントルダイアピルの起源などを押さえることを試みる。
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