研究課題/領域番号 |
20H00201
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
河野 義生 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 准教授 (20452683)
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研究分担者 |
新田 清文 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 分光推進室, 研究員 (00596009)
尾原 幸治 島根大学, 学術研究院機能強化推進学系, 教授 (00625486)
則竹 史哉 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (50755569)
近藤 望 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 特定研究員 (70824275)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
45,630千円 (直接経費: 35,100千円、間接経費: 10,530千円)
2023年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2021年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2020年度: 29,640千円 (直接経費: 22,800千円、間接経費: 6,840千円)
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キーワード | 高圧 / マグマ / 動径分布関数 / マントル / ケイ酸塩 / ガラス / 非晶質構造 / 動径分布関数測定 |
研究開始時の研究の概要 |
高圧下におけるケイ酸塩マグマの構造転移の理解は、鉱物の結晶構造転移と同様に、地球深部の構造・状態を理解する上で必要不可欠である。本研究では、研究代表者が独自に開発した対向型二段式大容量セル技術を基に、核-マントル境界の超高圧下における非晶質大試料の超高圧実験技術の開発と、それと組み合わせた高精度のケイ酸塩ガラスの動径分布関数測定システムを開発することにより、ケイ酸塩マグマのアナログ物質であるケイ酸塩ガラスにおけるSi-O配位数6配位以上の超高圧構造転移を実験的に明らかにし、核-マントル境界の超高圧下におけるケイ酸塩マグマの構造・状態の理解を目指す。
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研究実績の概要 |
2022年度は、本研究で開発した高圧下その場におけるガラスのPDF(pair distribution function)測定装置を用いたSiO2ガラスの高圧構造変化の研究を推進した。2020-2021年度の実験において、SPring-8のBL05XU、BL37XUビームラインにおける高強度の高エネルギーX線を活用したSiO2ガラスの高圧下PDF測定を行った。その結果、海外施設におけるこれまでの研究よりも遥かに高いQ範囲(20 A-1)までの高品質な構造因子S(Q)結果を最大6GPaまでの高圧下で測定することに成功した。この高品質な実験結果と、分子動力学シミュレーション、逆モンテカルロ解析を組み合わせることで、高圧その場環境下におけるSiO2ガラスの精密な構造解析に成功し、理論研究により予測されていたSiO2ガラスに潜む四面体的対称構造の存在とその高圧下における崩壊を実験的に捉えることに成功した。この研究成果は、2022年4月に高インパクトファクター雑誌であるNature Communications誌に掲載され、さらに同雑誌のEditors’ Highlightsウェブページにおいて、Inorganic and physical chemistry分野におけるFeatured articlesに選ばれるなどの高い評価を受けている。さらに、圧力最大46GPaの超高圧下におけるSiO2ガラスのS(Q)測定を行い、合計17点のデータを得ることに成功した。これら実験データの一次解析の結果、圧力16GPaから32GPaの間でSi-O近接距離の急激な増加が得られており、これはSi-O配位数の増加を伴う構造転移を示していると考えられる。この圧力最大46GPaまでの超高圧実験結果について、現在、分子動力学シミュレーション、逆モンテカルロ解析を行っており、精密な構造の解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において開発した高精度のコリメーションスリットシステムを搭載した多連検出器回折計システムと、パリーエジンバラ型高圧プレス装置を組み合わせることにより、海外施設におけるこれまでの高圧PDF測定研究よりも遥かに高いQ範囲(20 A-1以上)での高圧下その場PDF測定に成功した。この新しい装置の開発により、1気圧下でのPDF測定研究と同等の精密な非晶質構造解析を、高圧下その場で測定したデータについて行うことに成功し、高圧下その場におけるケイ酸塩ガラスの構造変化の詳細を研究することが可能になった。そして、ケイ酸塩マグマのアナログ物質であるSiO2ガラスについての高圧下構造測定研究を行った。本研究で新しく開発した実験システムを用いることにより得られた高品質な実験結果と、分子動力学シミュレーション、逆モンテカルロ解析を組み合わせることで、高圧その場環境下におけるSiO2ガラスの精密な構造の解析に成功した。その結果、これまで理論研究において予測されながら実験的には捉えられていなかったSiO2ガラスにおける四面体的対称構造の存在と、その高圧下における崩壊を実験的に捉えることに世界で初めて成功した。この研究成果は2022年4月に高インパクトファクター雑誌であるNature Communications誌(インパクトファクター:14.9)に出版された。さらに、この論文に関連して、2023年度に国際会議における招待講演をすでに2件受けているなど、本研究の成果について高い評価を受けている。加えて、本研究では、2020年にも高インパクトファクター雑誌であるPhysical Review Letters(インパクトファクター:8.4)に論文を出版しており、継続的にインパクトの高い研究を生み出している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、高圧下その場におけるケイ酸塩ガラスの精密な構造測定を、SPring-8のBL37XU、BL05XUビームラインにおいて行うことに成功している。研究課題最終年度となる2023年度は、まず2022年度の実験により得られているSiO2ガラスの圧力最大46GPaまでの超高圧実験の結果について、逆モンテカルロ解析、分子動力学シミュレーションを組み合わせた精密構造解析を進める。特に、それら実験データの一次解析により、圧力16GPaから32GPaにおいてSi-O配位数の増加を伴う構造転移が起こっていることが示唆されている。そのため、それら圧力下における構造変化についての精密構造解析を行うことにより、マントル深部の超高圧下におけるSi-O配位数変化を伴う構造転移の詳細を明らかにすることを目指している。さらに、SiO2組成以外にも、その他酸化物組成・ケイ酸塩組成・アルミネート組成ガラスについて、すでに高圧下でのS(Q)測定結果を得ている。それらケイ酸塩マグマのアナログ物質である酸化物・ケイ酸塩・アルミネート組成ガラスの高圧構造変化の解析を進めることにより、高圧下におけるケイ酸塩マグマの構造変化の理解のための研究を推進する。また、本研究課題で開発した高精度のコリメーションスリットシステムを搭載した多連検出器用回折計システムと、パリーエジンバラ型高圧プレス装置を組み合わせた高圧下その場PDF測定システムについての技術的な論文を現在執筆しており、2023年度中の出版を目指す。さらに、2023年度において、すでに招待講演依頼を受けている国際会議2つだけでなく、その他国内学会においても本研究の成果についての発表を行う。
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