研究課題/領域番号 |
20H00245
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分21:電気電子工学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
雨宮 尚之 京都大学, 工学研究科, 教授 (10222697)
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研究分担者 |
曽我部 友輔 京都大学, 工学研究科, 助教 (40847216)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
44,720千円 (直接経費: 34,400千円、間接経費: 10,320千円)
2023年度: 10,270千円 (直接経費: 7,900千円、間接経費: 2,370千円)
2022年度: 13,390千円 (直接経費: 10,300千円、間接経費: 3,090千円)
2021年度: 11,830千円 (直接経費: 9,100千円、間接経費: 2,730千円)
2020年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
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キーワード | 超伝導 / 電磁石 / 加速器 / がん治療 / 交流 / 交流損失 / 遮蔽電流磁界 |
研究開始時の研究の概要 |
高温超伝導線を用いて重粒子線がん治療用スキャニング電磁石を実現する高速変動高磁界発生技術を構築する。マルチフィラメント化し銅分流層を複合した薄膜高温超伝導線を円形コアに多層巻きするSCSCケーブルを用いてコイルを巻くことにより、交流損失、磁界精度劣化、高い端子電圧というボトルネックを解決する。SCSCケーブルで巻いたコイルと鉄ヨークにより構成した電磁石の電磁現象を解明し、交流損失・遮蔽電流磁界低減指針を構築する。これに基づき、重粒子線がん治療用スキャニング電磁石に適用可能な高速変動高磁界電磁石技術を構築し、200 Hz, 1 T,磁界精度0.2%のスキャニング電磁石の概念設計を行う。
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研究実績の概要 |
①変動磁界下におけるSCSCケーブルの特性評価:種々のマルチフィラメント薄膜線材の臨界電流・結合時定数・結合損失形状因子の測定結果を用いた解析式によって、スキャニング電磁石の運転条件におけるSCSCケーブルの交流損失を計算することを可能にした。 ②集合導体で構成した高速変動電磁石の電磁現象解明:SCSCケーブルを対象とした大規模数値電磁界解析プログラムを改良し、スキャニング電磁石の超伝導コイルの、鉄ヨークの磁化の影響を考慮した交流損失評価を可能にした。また、鉄ヨークをもつ高温超伝導電磁石における遮蔽電流磁界の磁界精度への影響を汎用電磁界解析ソフトウェアを用いた簡易的手法によって評価し、その影響が発生磁界に対して千分の一以下と十分小さいことを明らかにした。SCSCケーブルを模擬したスパイラル状マルチフィラメント線における動的抵抗を測定し、理論的に予想される通りの動的抵抗低減効果が得られることを確認した。また、交流磁界下・交流通電におけるスパイラル状マルチフィラメント線の交流損失の実験的評価を行い初期データを得た。 ③高速変動高磁界スキャニング電磁石の設計:スキャニング電磁石の概念設計を進め、現在実用化されている常伝導スキャニング電磁石の諸元をもとに、より高磁界化した場合の磁界発生領域や磁極形状を決定し、汎用電磁石解析ソフトウェアを用いて電磁石の断面形状設計を行った。 ④スキャニング電磁石の交流損失・磁界精度評価:①で構築したSCSCケーブルの交流損失の解析式を用い、③で設計したスキャニング電磁石の交流損失を計算した。冷却方式や構造の観点からスキャニング電磁石の運転温度について検討し、減圧した液体窒素による65 K程度の冷却が現実的であるという結果を得た。磁場精度について、②で構築した手法を適用した評価を行い、遮蔽電流磁界が磁界精度に与える影響は十分小さいことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
回転ガントリーの小型化するために高速変動高磁界スキャニング電磁石が必要であるが、これを実現するために鉄ヨークとSCSCケーブルで巻かれた高温超伝導コイルを含むスキャニング電磁石を設計することに成功し、設計された電磁石の形状や運転条件をもとに、消費電力や冷媒の消費量、発生電圧などの多角的視点からの評価を行い、このようなスキャニング電磁石が実現可能であることを示したことは非常に大きな意義のある成果である。 また、このような電磁石を銅コイルやSCSCケーブル以外の高温超伝導集合導体で構成した場合には損失の観点から現実的ではなくなることを確認し、低損失かつ高磁界の変動磁界電磁石への応用の点でSCSCケーブルがもつ優位性を明らかにしたことは学術的に重要である。 鉄ヨークを含む電磁石における高温超伝導コイルの遮蔽電流磁界の磁界精度への影響は数値解析による評価が困難でありこれまでに行われていなかったが、鉄ヨークを含む実際の電磁石を対象とした数値電磁界解析手法を用いて発生磁界を評価し、高温超伝導コイルにおける遮蔽電流が磁界精度へ与える影響は十分小さいことを確認したことは、スキャニング電磁石のみならず、種々の鉄ヨークを含む高温超伝導電磁石が低消費電力化という観点で実現できる可能性を示すものであり、先進的な研究成果である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き照射システム全体の小型化を意識した電磁石設計を進める。発生磁場や形状の異なる電磁石を設計対象に加え、これまでに行っていた損失・磁界精度評価に加え、照射システムの小型化がどの程度実現可能かを評価する。また、これらの電磁石に冷却手法についても引き続き検討し、超伝導体の臨界電流特性・交流損失特性、並びにそれらから決まる冷媒の消費量または冷却に必要な消費電力などを評価していく。 実際の電磁石における運転環境により近い、交流磁界下で交流通電しているSCSCケーブルの交流損失特性の評価を続ける。運転環境やケーブルの諸元によって交流損失特性がどのように影響を受けるのかを明らかにする。
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