研究課題/領域番号 |
20H00249
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分21:電気電子工学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
冨士田 誠之 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (40432364)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
45,760千円 (直接経費: 35,200千円、間接経費: 10,560千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2021年度: 18,200千円 (直接経費: 14,000千円、間接経費: 4,200千円)
2020年度: 20,020千円 (直接経費: 15,400千円、間接経費: 4,620千円)
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キーワード | トポロジカルフォトニクス / テラヘルツ / フォトニック結晶 / テラヘルツ通信 / テラヘルツセンシング / 導波路 / 伝送路 / 通信 |
研究開始時の研究の概要 |
電波と光波の境界領域の周波数を有するテラヘルツ波は,未だ人類に有効利用されていない未開の電磁波である.これは,テラヘルツ帯がエレクトロニクスの高周波極限に相当し,金属配線の損失が大きく,デバイスシステムを小型集積化するための回路技術が未開発のためである.本研究では,研究代表者らが世界に先駆けて開拓してきた世界最小損失のテラヘルツフォトニック結晶回路技術に物質科学に変革をもたらしているトポロジカルな性質を与えることで飛躍的な発展をはかり,テラヘルツ波を利用した通信やセンシングなどの応用を切り拓く.
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研究実績の概要 |
本研究では,研究代表者らが世界に先駆けて開拓してきた世界最小損失のテラヘルツフォトニック結晶回路技術に物質科学に変革をもたらしているトポロジカルな性質を与えることで飛躍的な発展をはかり,テラヘルツ波を利用した通信やセンシングなどの応用を切り拓くことを目指している. トポロジカルフォトニック結晶では周期構造中に界面を形成すると,それが伝送路として働く伝搬状態を生成される.そのような伝送路では,テラヘルツ波のトポロジカルな性質によって,通常の伝送路では生じる曲げ,分岐およびフィルタ構造における後方散乱の抑制効果が期待できる. トポロジカルフォトニック結晶の基本構造として,トポロジカルな性質の起源といえる電磁波に対する擬スピン状態を生成可能な大小の三角空孔をシリコンスラブに六員環状に周期的に配置した構造を採用した.その際,高い抵抗率を有するシリコンを利用することでテラヘルツ帯で課題となる吸収損失を抑制した.そして,フォトリソグラフィ,プラズマエッチングといった微細加工技術で利用することで実験用の試料を作製した. 曲げ構造が伝送特性に与える影響を曲げ回数の異なる伝送路を比較することで検証した.曲げ回数を増加させてもトポロジカルな性質を反映し,群遅延の周波数特性で決まる低分散帯域および透過率の3 dB帯域がほとんど変化しないという結果が得られた.分岐構造に関して,異なる種類の界面による電磁界分布の対称性の違いを考慮することでその設計に成功した.トポロジカルな性質を反映し,分岐1回あたりの損失は0.3 dB以下となった.さらに,異なる種類の界面を有する伝送路を並列に配置すると,通常の伝送路とは異なり,逆方向に伝搬する電磁波が結合し,モードギャップが生じることでフィルタとして動作することを見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トポロジカルな性質を有する伝送路では,電磁波の伝搬に関して,曲げや分岐といった構造の乱れを導入した際の堅牢性が期待されている.曲げ伝送路に関して,損失の抑制に加え,高速通信に重要な分散特性への影響が小さいこと,分岐構造に関しても,曲げ構造同様に極めて低い損失であることを示すことに成功した.また,異なる種類の界面で生成される伝送路の結合させることによって,フィルタという新たな機能が得られることを見出した.
以上の状況を鑑みて,本研究は順調に進展していると判断したい.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究を通じて,トポロジカル導波路の特性を活かした新たなテラヘルツ応用の可能性が切り拓かれてきた.今後は,フィルタと曲げ構造を融合することで優れた周波数特性を有する合分波器を開発して,周波数多重通信を実現するとともに,極低損失な分岐構造を利用した出力合成回路の開発を行うとともに,特に極めて広い比帯域動作が要求されるテラヘルツ帯において,今後,トポロジカルフォトニック結晶をさらに有効利用するため,動作帯域を決定するフォトニックバンドギャップを拡大するための構造を探求する予定である.
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