研究課題/領域番号 |
20H00250
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分21:電気電子工学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森 伸也 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (70239614)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,380千円 (直接経費: 32,600千円、間接経費: 9,780千円)
2024年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
2023年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
2022年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
2021年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
2020年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
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キーワード | 量子輸送シミュレーション / 低次元半導体 / 電子 / フォノン / 非平衡グリーン関数法 / 省電力デバイス / トンネルトランジスタ / 熱電変換デバイス / 2次元物質 / バンド間トンネル |
研究開始時の研究の概要 |
これまでは,電子を古典力学に従って運動する粒子として扱い,デバイスを連続体として扱うという枠組みの中で,半導体電子デバイスの設計や解析が行われてきました.しかし,極めて微細なデバイスのシミュレーションにおいては,電子が量子力学に従って運動するという量子性や,デバイスが原子から構成されているという原子論的な効果を無視することができません.本研究では,申請者らが確立してきた原子論に基づく量子輸送シミュレーション技術を基盤に,原子層1層程度の極めて薄い物質からなるデバイスにおいて,電子輸送とフォノン輸送とを同時に取り扱うことができるシミュレータを実現することを目的としています.
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研究実績の概要 |
本研究では,2次元物質ヘテロ構造の電子・フォノン連成シミュレータを実現し,デバイス開発の指針を早期に得る環境を構築することを目的にしている.本年度は,弾道輸送シミュレーションの結果から,平均自由行程を抽出する計算手法の開発,ランダム不純物などが作るランダムなポテンシャル分布が,2次元電子状態に与える影響の解析,グラフェンの移動度向上に関するモンテカルロ・シミュレーションを用いた解析などを行った. 不純物散乱や界面ラフネス散乱などの非弾性散乱過程で定まる平均自由行程を,量子輸送計算から抽出する従来の計算手法には,アンダーソン局在の影響が無視できるような,短いチャネル長の試料のみにしか適用できないという問題があった.すなわち,従来手法では,透過率のチャネル長依存性から平均自由行程を抽出するため,短いチャネル長に限って計算する必要があり,高精度の抽出が困難であった.特に,界面ラフネス散乱を考察する場合,ラフネスの相関長より十分長いチャネル長を持つ試料に関する計算が必要であるが,その場合,アンダーソン局在の影響が無視できなくなり,従来手法を用いることができなかった.本年度,弾道輸送領域から拡散領域,局在領域までをすべてカバーすることができる計算手法を新たに開発した.開発した手法では,平均自由行程を系の無次元化抵抗の対数に関する集団平均から抽出する.提案手法を用いて,半導体ナノシートの平均自由行程のチャネル膜厚依存性を有効質量近似に基づき解析し,膜厚が厚い領域では,よく知られた依存性を示すが,膜厚が薄い領域では膜厚依存性が弱くなることなどがわかった.また,膜厚が薄い領域の依存性は,自己無撞着ボルン近似の結果と整合することを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,2次元物質ヘテロ構造の電子・フォノン連成シミュレータを実現し,デバイス開発の指針を早期に得る環境を構築することを目的にしている.独立したシミュレータを用いた研究において当初予期しなかった結果が多数現れ,それらの解析等を行っていたため,連成プログラムの開発が遅れている.最終年度に向けて当初の目的を達成できるよう開発を進める.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度であり,これまの研究で得られた知見および計算手法をまとめて,低次元系における異常熱拡散に不純物乱れおよび電子・フォノン相互作用が与える影響を解明する.電子とフォノンとの連成解析プログラムを完成させ,ランダム不純物を考慮した異常熱拡散の解析を行う.さらに,低次元系として,これまでの研究対象をひろげ,近年,応用上の重要度が急速に高まっている,極薄半導体および半導体ナノシートにおける電子輸送解析プログラムを開発する.計算手法としては,非平衡グリーン関数法・不連続ガラーキン法・モンテカルロ法を用いる.その際,特に,結晶の異方性を考慮した電子・変調フォノン相互作用,電子状態の異方性を考慮した場合に生じるサブバンド間遷移,乱れたポテンシャル分布による電子状態変調などを計算に取り入れ,従来モデルの詳細化をおこない,極薄半導体および半導体ナノシートにおける電子輸送解析を行い,次世代高性能半導体デバイスの開発に資する知見を得る.
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