研究課題/領域番号 |
20H00254
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分21:電気電子工学およびその関連分野
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
石原 康利 明治大学, 理工学部, 専任教授 (00377219)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
45,110千円 (直接経費: 34,700千円、間接経費: 10,410千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 11,310千円 (直接経費: 8,700千円、間接経費: 2,610千円)
2022年度: 12,090千円 (直接経費: 9,300千円、間接経費: 2,790千円)
2021年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2020年度: 13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
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キーワード | 磁性ナノ粒子イメージング / 超音波 / 画像診断 / 画像再構成 / 磁性ナノ粒子 / MPI |
研究開始時の研究の概要 |
がんや循環器疾患等の早期診断を可能にする“磁性ナノ粒子イメージング(Magnetic Particle Imaging、MPI)”では、交番磁場と傾斜磁場とを生体に印加して信号を検出する必要があり、磁場生成モジュールを含むシステムが大規模になること、また、交番磁場の印加に起因した生体の発熱等が懸念されている。本研究では、交番磁場の印加に代わり、生体内に分布した磁性ナノ粒子を超音波音響放射圧によって振動させることで磁化信号を検出し、さらに、超音波の反射信号に基づいた形態画像を同時収集する革新的なMPIシステムを提案する。これらの要素技術の開発により、臨床用MPIシステムの実現を目指す。
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研究実績の概要 |
(1)粒子振動技術の検討 臨床システムを想定した水槽外での実験を可能とするために、集束超音波トランスデューサをファントムにカップリングさせる水袋を介して音響放射圧を照射するシステムを構築した。後述するように、トランスデューサの焦点領域に磁場ゼロ線状分布(field free line:FFL)を生成し、この空間内に配置されたファントム内部の加振変位を検出する必要があることから、アクリルで作成した容器に生体と同等の弾性率を有するウレタンゲルを充填し、ファントム内の磁性ナノ粒子を音響放射圧によってマイクロメートルオーダで振動させられることを確認した。また、音響―構造連成過渡解析が可能な有限要素モデルを構築し、焦点領域における加振変位を解析し、実験結果との相互評価を行った。 (2)データ収集技術と画像再構成技術の検討 磁性ナノ粒子の加振変位に基づいた磁化信号を検出するために、FFLに直交する方向から音響放射圧をウレタンゲルファントムに照射し、磁化信号の検出を試みた。しかし、トランスデューサの駆動波形が電磁波として検出コイルに重畳し、磁化信号との分離が困難となることが明らかになった。超音波トランスデューサを駆動するバースト正弦波を矩形波状に振幅変調して磁化信号を検出しているが、矩形波に同期した加振変位による磁化信号のみを分離検出するためのシールド技術や、差動コイル、差分信号処理技術を新たに検討する必要がある。 (3)粒子振動に基づいたMPIシステムの構築 上記までの要素技術開発によって、ファントム内の局所領域でFFLを走査しながら音響放射圧をファントムに照射し、加振変位に伴う磁化信号を検出する最小システムを構築した。また、より適切な加振変位を得るための大口径集束超音波トランスデューサの音場分布の評価とともに、このトランスデューサに適合したFFLを形成する磁場発生装置の磁場分布の評価を終えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度からの新型コロナ感染症拡大防止対策の影響により遅れていた当初の要素技術検討を昨年度までにほぼ終えたが、トランスデューサの駆動に伴い発生する電磁波の影響が明らかになり、加振変位に伴う磁化信号を効果的に分離検出するためのシールド技術や、差動コイル・差分信号処理技術を新たに検討する必要が生じている。磁性ナノ粒子をマイクロメートルオーダで強制振動させた場合には、有意な磁化信号を検出できていることから、最優先で上記技術の新規開発を行う。 また、最終システムの構築に必要な個々の要素技術開発に伴う基礎データの取得は終えているものの、本研究成果を新規技術として外部発表するためには、最終システム形態において収集された磁性ナノ粒子分布データを提示する必要があり、これまでに十分な発表が行えていない。この観点からは、プロジェクト全体の計画に対して遅れが生じている。統合的・相互的なシステム検証を行いつつ、収集された基礎データを適切な時期に公表する活動にも注力する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
(1)粒子振動技術の検討 ファントムに音響放射圧を照射することで、ファントム内の磁性ナノ粒子を振動させられることを確認したが、バースト正弦波を矩形波で振幅変調した波形を用いてトランスデューサを駆動した場合の正弦波振幅・変調波形の形状・周波数・デューティ比・駆動波形の繰り返し時間(間隔)と、得られる加振変位との関係を評価することで、より最適な加振条件を明らかにする。また、ファントムの形状・大きさ・弾性率によっても、得られる加振変位が異なるため、生体パラメータを考慮した適切な範囲でファントムの物性値との関係を評価する。また、これまでに構築した有限要素法に基づく音響-構造連成解析モデルによって、上記トランスデューサの駆動条件や、ファントムの物性値の違いによる音響分布と加振変位を詳細に解析し、各条件値の妥当性を検証する。 (2)データ収集技術と画像再構成技術の検討 磁性ナノ粒子の振動に伴う磁化信号を高感度に検出する際に、検出信号がトランスデューサの駆動により発生する電磁波に埋もれてしまうことが明らかになったため、電磁波の影響を抑制する必要がある。このため、電磁波から検出信号を分離するためのシールド技術や差動コイル・信号処理技術を検討する。また、FFL走査が可能な基本システムを利用して画像再構成法を検討しているが、高分解能化を図るためにニューラルネットワークを導入した画像再構成法の有用性検証を進める。 (3)粒子振動に基づいたMPIシステムの構築 上記トランスデューサを駆動する際に生じる電磁波の影響を解決し、磁性ナノ粒子分布の画像化を図り、将来的な臨床MPIを実現するための課題を明らかにする。また、より適切な加振変位を得るための大口径集束超音波トランスデューサとともに、このトランスデューサに適合したFFLを形成する磁場発生装置を導入してシステムの改善を図る。
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