研究課題/領域番号 |
20H00303
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
宇佐美 徳隆 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (20262107)
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研究分担者 |
大山 研司 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (60241569)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
46,150千円 (直接経費: 35,500千円、間接経費: 10,650千円)
2023年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2021年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2020年度: 27,170千円 (直接経費: 20,900千円、間接経費: 6,270千円)
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キーワード | 多元混晶 / 軽元素 / 局所構造 / 白色中性子ホログラフィー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、印刷・焼成からなるシリコンゲルマニウム混晶の独自成長プロセスを、スズと水素を含む多元素化と非平衡化に拡張し、ハイスループット実験にデータ科学を援用する新たな方法論により、準安定な高スズ組成と水素終端による高性能化を同時達成する多変量パラメータを効率的に決定する。この過程において、スズ位置の確定と置換率の定量評価の確実な実施に加え、白色中性子ホログラフィーの高度化により局所構造観測範囲を薄膜中の水素に拡大することに挑戦し、機能発現要因の解明を進める。
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研究実績の概要 |
半導体材料を含む特殊なぺーストを印刷した半導体単結晶基板を非真空下で熱処理するというシンプルなプロセスをベースに、高品質シリコン系多元混晶薄膜の成長技術の開発に取り組んでいる。本年度は、アルミニウムとゲルマニウムの合金粒子を含むペーストを用いたシリコンゲルマニウム混晶薄膜の成長において、短パルスレーザ熱処理により、シリコンゲルマニウム混晶を急速成長させ、レーザ照射条件の影響を調査した。レーザ照射後に選択エッチングにより表面のアルミニウム残留物を除去し、走査型電子顕微鏡、共焦点レーザ顕微鏡、顕微ラマン分光により構造解析を行った。その結果、表面形状とゲルマニウムの組成や膜中の歪み分布に強い相関があることを見出した。その要因として、レーザ溶融プロセスのシミュレーションを行うことで、表面のマランゴニ対流や表面エネルギーの観点から解明を進めた。また、短パルス化によるゲルマニウムの高濃度化を観測し、スズを含む混晶の非平衡プロセス設計に対し有用な知見が得られた。また、平衡成長で作製したゲルマニウムスズ薄膜、シリコンスズ薄膜を対象として、放射光X線施設SPring-8での原子分解能ホログラフィー実験を実施した。スズ周囲の原子像を可視化することで、格子中でのスズの位置を検証した。その結果、スズがゲルマニウム、シリコンの格子位置を置換することを検証し、格子間に存在する可能性は非常に小さいことを示した。一方、物質中の水素位置を確定する手法として、大強度陽子加速器施設J-PARCでの強力な白色中性子を用いたホログラフィー実験を大強度モードで行う環境を整備し、水素化パラジウム単結晶において水素の像が検出されることを初めて確認した。この測定のため、令和3年度までに導入した多検出器系遮蔽体の最適化をモンテカルロシミュレーションで行い、実機の設計を行い、データ精度の大幅な向上に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シリコンゲルマニウム薄膜成長をモデルとした短パルスレーザ加熱による急速成長プロセスについて、系統的にレーザ照射条件を変化させて実験と、構造評価、シミュレーションを連携させることで、成長メカニズムや組成制御についての知見が蓄積された。これらの知見は、次年度における非平衡成長を利用した高性能多元混晶材料の創製にいかされる。また、放射光施設での蛍光X線ホログラフィー実験の成果は、研究を進めている大学院生が国際ワークショップに招待され、口頭発表を行うなど高い評価を受けている。さらに、これまで進めてきた多検出器系の整備・高度化により、バルク結晶においての中性子ホログラフィーで水素観測に初めて成功した。以上のような成果から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
シリコン系多元混晶薄膜の成長においては、短パルスレーザ加熱によりスズを含む混晶材料の成長を進める。構造評価に加えて光学特性評価を進め、シリコン単体では得ることのでいない優れた物性の発現を実証することを目指す。ホログラフィー実験では、薄膜試料での原子像再生のため、実際に薄膜試料での測定を行い、ホウ素など観測が容易な添加元素周りの原子像再生に挑戦する。薄膜試料観測は中性子ホログラフィーでは世界的にも初めての挑戦となる。これにより水素終端の位置決定の実験へ道が開ける。
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