研究課題/領域番号 |
20H00311
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
高島 和希 熊本大学, 国際先端科学技術研究機構, 卓越教授 (60163193)
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研究分担者 |
峯 洋二 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (90372755)
郭 光植 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 助教 (90847170)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
46,800千円 (直接経費: 36,000千円、間接経費: 10,800千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2020年度: 34,450千円 (直接経費: 26,500千円、間接経費: 7,950千円)
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キーワード | 構造・機能材料 / 鉄鋼材料 / マルテンサイト / 疲労き裂伝播 / 耐疲労強化 / 構造機能材料 / 疲労き裂伝播機構 / 耐疲労設計 / 機能・構造材料 |
研究開始時の研究の概要 |
マルテンサイト組織は鋼の強化設計の基盤となるきわめて重要な組織であるが、耐久性、信頼性の基礎となる疲労特性については、現在でも不明な点が残されている。これはマルテンサイト組織が複雑な階層的な微視組織構造をしているためである。本研究では、我々が開発したマイクロ疲労試験法を駆使して、これまで明らかにされていないマルテンサイトの疲労き裂伝播機構の解明を行うとともに、疲労き裂伝播抵抗に優れる鉄鋼材料設計の指導原理の提案を行う。得られる成果は、高強度鋼の耐疲労強化設計へと繋がるものであり、先端鉄鋼材料開発における我が国の国際競争力向上にも大きく寄与できる。
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研究実績の概要 |
2023年度においては、当初の計画に示したように、パケット境界、旧オーステナイト粒界が関与する疲労き裂伝播挙動に関して、さらに詳細な検討を進めた。試料には昨年度までと同様に低炭素鋼を全面ラスマルテンサイト組織としたものを用いた。試料をマイクロ試験片が採取できる50μm程度まで研磨し、電子線後方散乱回折法により組織観察を行い、試験片採取位置を選択後、微細レーザ加工機及び集束イオンビーム加工機を用いて微小CT試験片を作製した。2022年度は主として境界面に沿った疲労き裂伝播を検討したが、2023年度は、より現実の構造物におけるき裂伝播を検討するため、ラスマルテンサイト下部組織の各境界面に対して、き裂の伝播方向がある角度を有する場合のき裂伝播挙動を調査した。疲労試験は本研究の初年度に開発した微小疲労試験機を用い、昨年度までと同じ条件下で行った。その結果、パケット内を進展する際には昨年度までと同様に、き裂先端での晶癖面内すべと面外すべりの活動の状況の違い基づいてき裂伝播が生じたが、き裂先端がパケット境界、旧オーステナイト粒界に近づくにつれて、伝播速度に変化が生じ、境界面に対してほぼ垂直に方向にき裂が伝播する場合にき裂伝播速度が大きく低下した。また、伝播速度低下の度合いは境界面の方位に影響していた。上記の結果は、境界面における方位差に基づいたき裂先端におけるすべりの非対称性によるものと推定される。このことは疲労き裂伝播抵抗に優れるマルテンサイト組織鋼の開発において重要なポイントとなるが、その詳細を明らかにすることができなかったため、次年度への課題としたい。一方、当初の目的ではなかったが、ラスマルテンサイトと同様に特定の結晶方位関係を持つラメラ組織で構成されるチタン合金の疲労き裂伝播機構の解明にも本研究の手法が適用できることが判明したことから、この課題についても次年度に検討したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
疲労き裂伝播試験に関しては、ほぼ当初計画通りの研究を進めることができた。ただし、研究成果の公表に関しては、新型コロナの影響が少し残っており、発表を予定していた海外の講演会がハイブリッド開催となったことも重なって旅費の支出がなかったが、計画時に計上していた旅費を、計測に必要な高精度ロードルや治具等の消耗品費に充当することで、より精度の高い疲労き裂伝播の計測を行うことができ、最終的には、本年度予定していた計画内容をほぼ実行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度はほぼ当初の計画通りの研究を実施できたが、き裂がパケット境界、旧オーステナイト粒界に対してある特定の角度を有して伝播する際のメカニズムの詳細に関して不明の点が残された。そのようなき裂伝播は、現実の構造物における疲労において重要となることから、さらに検討を進める。ところで、本研究を進める上で、ラスマルテンサイトと同様に特定の結晶方位関係を持つラメラ組織で構成されるチタン合金の疲労き裂伝播の解明にも本研究の手法が適用できることが判明した。この課題に関しても研究を同時に進めることで、層状組織を有する材料の疲労き裂伝播に関する統一的な理論を構築することが可能となる。そこで、当初の目的には加えていなかったが、ラメラ構造を有するチタン合金の疲労き裂伝播に関する研究も併せて進めたい。これに加え、次年度は本研究課題の最終年度となるため、これまでの成果をまとめた成果発表を積極的に進める。
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