研究課題/領域番号 |
20H00335
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分28:ナノマイクロ科学およびその関連分野
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研究機関 | 岡山大学 (2021-2023) 大阪市立大学 (2020) |
研究代表者 |
藤原 正澄 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 研究教授 (30540190)
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研究分担者 |
松原 勤 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (20628698)
中台 枝里子 (鹿毛枝里子) 大阪公立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (40453790)
鹿野 豊 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (80634691)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
45,240千円 (直接経費: 34,800千円、間接経費: 10,440千円)
2023年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
2022年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2021年度: 11,310千円 (直接経費: 8,700千円、間接経費: 2,610千円)
2020年度: 17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
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キーワード | 蛍光ナノダイヤモンド / 温度計測 / 生体試料 / 量子計測 / 温度測定 / 蛍光顕微鏡 / 線虫 / 光検出磁気共鳴 / C. elegans / 細胞 / 熱計測 / 細胞機能 / 生体機能 / ナノダイヤモンド |
研究開始時の研究の概要 |
蛍光性ナノ粒子は、細胞や生物個体の内部を長期間安定して可視化することの可能なバイオイメージングナノ材料である。特に、蛍光ナノダイヤモンドでは、電子スピン共鳴の量子計測を組み合わせた超高感度温度センシングが可能である。本研究ではこれを用いてリアルタイム3次元温度計測顕微鏡を開発し、線虫の温度特性を細胞レベルで時空間横断的に機能解析可能とする。そして線虫の神経システムをつかさどる動力学を個々の細胞活動度を踏まえて解明する。
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研究実績の概要 |
①広視野・3次元・高速化技術・局所加熱技術の実装:今年度、これまで構築してきた広視野蛍光ナノダイヤモンドスピン測定を温度測定に実際に実装し、温度イメージングを可能とした。カメラの露光時間や読み出し速度の最適化作業を重ね、温度精度1℃程度での測定に成功している。また、測定中に焦点がずれる問題に関しても、自動焦点機能を取り込ませることに成功し、例えば、100倍の油浸対物レンズで焦点が10um程度シフトしても追尾することが可能となった。局所加熱に関しても、生きた線虫をライブ映像で確認しながら、狙った点に近赤外レーザーをピンポイント照射することができるようになった。 ②線虫へのナノ粒子導入:前年度までに、線虫内への蛍光ナノダイヤモンド滞留を成功させている。この滞留現象をより詳細に調べたところ、表面電荷の影響で滞留の程度が大きく変わることが明らかとなった。ナノ粒子の滞留と毒性などの関係についても詳細に検討し、ナノ粒子の表面電荷が線虫のナノ粒子取り込み機能に対して与える影響を解明した(論文執筆中)。本研究の目的である温度測定にとって、最適なナノ粒子ラベリング条件を決定する上で重要な知見である。 ③線虫のカルシウムイメージング:本研究では、線虫の局部精密加熱と神経活動の相関を得ることを目指している。神経活動の測定のために、カルシウム指示性のあるGCaMPを発現した遺伝子組換え線虫の実験を開始した。複数の遺伝子組換え株を導入しているが、株によって培養条件が若干異なるため、カルシウムイメージングを実施するに当たっての条件検討を重ねている。 ④オミクス解析への検討:本研究では、局所温度刺激を加えた際に生じる線虫のオミクス解析を行う。そのために、代謝物測定(メタボロミクス)に着目し、質量分析による測定を行うことに決定した。国際共同研究によるパートナーを見つけ、次年度測定する段階まで到達した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は4年間の3年目終了中間地点であったが、これまでの研究で、蛍光ナノダイヤモンド温度測定の広視野化に成功しており、線虫の局所レーザー加熱も同時にできるようになった。カルシウムイメージングシステムについても条件検討を積み重ねている。次年度には、精密な局所温度刺激を加えた上で、神経細胞群の興奮を測定することが可能になると十分考えられる。今年度の論文発表でも、Lab on a Chip誌という重要雑誌に成果が発表されている。代表者以外にも、筆頭著者の学生が招待講演に呼ばれるなど非常に注目されている。論文発表数自体は1本であったが、次年度に論文発表できるまでのデータ蓄積を複数件できており、大きな収穫となっている。最終年度である次年度に向けて、研究は順調な進展を見せている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる本年度は次の5点について研究・開発を実施する。①広視野・3次元・高速化技術の実装:これまでの研究で、焦点自動追尾を行いながら温度測定する技術を構築できている。今年度は、さらに精度を保った上での時間分解能を30秒程度まで短縮する。②カルシウムイメージング技術:昨年度、カルシウムイメージング用のトランスジェニック線虫を用いて、カルシウムイメージングの条件検討を行ってきた。温度測定、熱刺激、カルシウムイメージングの同時実施の際の条件検討が完了していないため、これらを引き続き検討する。また、本測定に特化した顕微鏡ステージトップインキュベーターが必要なため自作で構築する。③局所加熱技術の構築:線虫に対して任意の場所をレーザー刺激する事のできるシステムをすでに構築している。今年度は、このレーザー強度と温度上昇の関係を決定し、それをもとに線虫への精密温度刺激を行う。④神経細胞の温度感受性に関する研究:上記3つの項目を統合し、生きた線虫を精密に局所温度刺激し、その神経応答を観察し、その動態を解析する。⑤局所加熱に対するオミクス解析:上記技術で局所温度刺激した線虫体内の変化を、質量分析法を用いて解析する。これにより、温度と代謝の関係を細胞レベルで捉えるとともに、線虫における神経系の興奮の有無での代謝機能変化などを調べ、新しい視点の生物学研究に取り組む。
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