研究課題/領域番号 |
20H00337
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分28:ナノマイクロ科学およびその関連分野
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
望月 維人 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80450419)
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研究分担者 |
笹川 崇男 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (30332597)
安藤 和也 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (30579610)
小野 輝男 京都大学, 化学研究所, 教授 (90296749)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
44,590千円 (直接経費: 34,300千円、間接経費: 10,290千円)
2023年度: 11,830千円 (直接経費: 9,100千円、間接経費: 2,730千円)
2022年度: 11,700千円 (直接経費: 9,000千円、間接経費: 2,700千円)
2021年度: 12,870千円 (直接経費: 9,900千円、間接経費: 2,970千円)
2020年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
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キーワード | スキルミオン / スキルミオニクス / 磁気デバイス / 電流駆動 / スピントロニクス / トポロジカル磁性 / 磁気トポロジー / キラル磁性体 / DM相互作用 / マイクロ波素子 / 磁気多層膜系 / スピン軌道トルク / 垂直磁気異方性 / マイクロ波応答 |
研究開始時の研究の概要 |
磁性体中に発現するナノサイズの磁気渦「磁気スキルミオン」は (1)ナノスケールの極小サイズと,(2)トポロジカルに保護された安定性,(3)室温を超える動作温度,(4) 高い省電力性,といった磁気デバイスへの応用に最適な性質をいくつも持っています。これらの性質を生かし、近い将来の高度情報化社会を担う「磁気メモリ」や「磁気センサ」、「脳型情報処理素子」の実現を目指し、これらの素子の基盤となる「高性能な磁気材料」と「生成・消去・検出・伝送といった要素技術」を「理論設計」と「実験実証」により開発します。これにより、スキルミオンを使った次世代エレクトロニクスである「スキルミオニクス」の創出を目指します。
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研究実績の概要 |
空間反転対称性を持つ金属磁性体を記述する近藤格子模型において、マイクロ波電磁場を照射した時の局在磁化の時間発展を数値的にシミュレーションする計算コードを開発し、円偏光マイクロ波照射による磁気トポロジーのスイッチングができることを理論的に実証した。2009年に中性子小角散乱実験によってキラル磁性体であるB20化合物中で発見されて以来、スキルミオンをはじめとするトポロジカル磁性は、DM相互作用が活性になるキラル磁性体や極性磁性体といった空間反転対称性の破れた磁性体での発現するものだと、素朴に信じられてきた。しかし近年、空間反転対称な結晶構造を持つ様々な金属磁性体において、スキルミオンやそれに類似したトポロジカル磁性が発現していることが発見されている。このような系の長所は、キラル磁性体や極性磁性体では凍結してしまっているvorticity(渦度)やhelicityと言った、磁気構造の持つ自由度が凍結せずに生き残っている点にある。このような自由度を、光やマイクロ波、その他の外場や外部刺激によって操作・制御できれば、新しい物質機能として利用できる可能性がある。本研究により、実際に円偏光マイクロ波の照射により、磁気トポロジーを高速にスイッチできることや、マイクロ波のパラメータ(強度や周波数)を調節することでトポロジカル数が「2」、「1」、「0」の間をある程度自在に飛び移れること、動的相転移であるこを反映して「決定論的」、「確率的」、「時間揺らぎ的」といった様々な相転移の様相が現れることを明らかにした。これは、空間反転対称性を持つ金属磁性体のスキルミオンの技術応用に向けた重要な成果に位置づけられる。また、これ以外にも、物質のトポロジカルな性質に関する書籍において、スキルミオンのマイクロ波ダイオード効果に関する章を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度に着任を予定していた研究員(台湾国籍)がコロナ感染拡大による入国制限により入国が1年以上遅れ、この研究員と進める予定であった、「スキルミオンのリザバー型情報処理応用の実証研究」に大きな支障が生じた。キラル磁性体の薄片試料に閉じ込めたスキルミオン結晶中を伝わるスピン波を活用したリザバーに、「汎化性」、「非線形性」、「短期記憶性」というリザバーに要求される性質や性能が高いレベルで備わっているかどうかを数値計算により検証する研究計画であった。それぞれの性能指標を調べるために、これらの性能を定量的に検証する典型的なテスクである「信号時間推定タスク」、「パリティチェックタスク」、「短期記憶タスク」を採用し、数値計算による性能実証を目的としたプログラムコードの開発に取り組んだ。しかし、オンライン会議ツールやメールを使った議論を頻繁に行い、定期的に研究進捗を報告させるなど、少しでも研究の進展に影響がでないように努力をしたが、コード開発の詳細な部分を突き詰める場面において、対面で画面や資料を並べて見ながら議論できないことが大きな支障となった。そのため、当初予定していた「スキルミオンのリザバー型情報処理応用の実証研究」にはやや遅れがみられる。しかし、同時に、計画を前倒しして取り組んだ上述の「空間反転対称性を持つ磁性体の磁気トポロジーのマイクロ波照射による操作・制御の理論実証研究」では期待していた以上の成果が出ている。これらを総合的に勘案して、本研究課題の進捗状況を「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
1)スキルミオン結晶中を伝搬するスピン波を活用した「スキルミオンスピン波リザバー素子」について、ここまでの研究期間で行ってきた、リザバーとしての基本性能を実証する理論研究を発展させ、より実用的な性能の検証タスクである「手書き数字認識タスク」による性能実証を行う。0から9までの無数の手書き数字画像のデータベースを利用し、手書き数字を認識できるかどうかを検証する。さらに、入力・出力ノードの数や位置、時間方向のデータ読取り点(仮想ノード)の設定、入力信号の強度・幅などを最適化し、より高い認識率を実現するための設計指針を明らかにする。 2)スピン軌道トルクを利用した電流によるスキルミオンの生成・駆動方法を理論設計する。スキルミオンを電流により制御することは、メモリ素子をはじめとするスキルミオンのスピントロニクス応用に欠かせない基盤技術である。これまでに、電流の伝導電子が持つスピン角運動量が局在磁化に移行することで、磁気構造を駆動する「スピン移行トルク」を利用したスキルミオンの駆動や生成が精力的に研究されてきた。これは、キラル磁性体のスキルミオンを電流で制御することを念頭に置いている。しかし近年、磁気多層構造において界面DM相互作用により発現するスキルミオンが注目を集めている。このような系のスキルミオンの操作には、スピン移行トルクではなく、スピン軌道トルクを利用することが試料の構造上自然である。このスピン軌道トルクを用いた磁気多層膜系のスキルミオンの電流による生成・駆動方法を理論的に探索・予言する。 3)その他に、3次元金属キラル磁性体で発見されている磁気ヘッジホッグ格子のマイクロ波応答やスピン波モードを明らかにし、この磁気構造のマイクロ波に関連した機能や現象を探索したり、磁気・電気双極子相互作用の協力に起因する新しいトポロジカル磁気構造と発現機構を探索・解明したりする。
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