研究課題/領域番号 |
20H00367
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分32:物理化学、機能物性化学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
朝倉 清高 北海道大学, 触媒科学研究所, 教授 (60175164)
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研究分担者 |
和田 敬広 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (10632317)
三輪 寛子 電気通信大学, 燃料電池・水素イノベーション研究センター, 特任准教授 (90570911)
増田 卓也 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料解析研究拠点, グループリーダー (20466460)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
44,980千円 (直接経費: 34,600千円、間接経費: 10,380千円)
2023年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
2022年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2021年度: 10,790千円 (直接経費: 8,300千円、間接経費: 2,490千円)
2020年度: 13,650千円 (直接経費: 10,500千円、間接経費: 3,150千円)
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キーワード | X線吸収分光 / オペランド / 燃料電池 / 構造解明 / Pt/Pd/Au / サラーサーチ / PtAuナノ粒子 / サラーサーチ法 |
研究開始時の研究の概要 |
高効率燃料電池の開発を目的に Pt合金ナノクラスターの合金効果の解明研究を行う。具体的には、Au上にCoを蒸着し、Coの厚みを変化させることで、Co-Coの結合距離を変化させ、その上にのったPtの結合距離と活性を追跡することで、合金効果がPt-Ptの結合距離短縮効果なのか電子移動によるのかを明らかにする。このために必要なBCLA+PTRF-XAFS法の開発を行う。最終的にPt-Ptの結合距離と活性相関、電子状態と結合距離の関係および理論計算や表面科学的手法からの知見を総合し、合金効果を明らかにする。これにより、燃料電池触媒開発に必要な知見を提供し、開発を加速する。
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研究実績の概要 |
燃料電池白金触媒を合金化すると高活性化する。本研究では、この高活性化の要因が、電荷移動がおき、電子密度が変化するためなのか,構造が変化し、状態密度が変化するためなのかをしらべる。 そこで単結晶基板上にPdを1層から複数層載せ、その上のPtの結合距離と活性の関係を調べて、上記の学問的問いの回答を得る。本年、いくつかの成果を得た。Pd1,2,4層をAu(111)につけたPd薄層のPd-Pdの結合距離を観測した。 その結果、Pdを1層アンダーポテンシャル電着法で載せた時はPd-Pdの結合距離はAu-Auの結合距離と等しく、2.88Åという結果を得た。これは、PdがAuの表面上にエピタキシャルに成長していることを示している。これまでのXRDやSTMの結果を再現することができた。一方、2-4層のPdを電位と電荷量をコントロールして慎重に載せたところ、AFM(原子間力顕微鏡)で平らなPd薄膜ができることを観測した。さらに偏光全反射蛍光XAFS(PTRF-XAFS)法でその結合距離をしらべた。2層載せた時はAuバルクとPdnバルクの結合距離の丁度中間の結合距離(2.82Å)を観測し、4層では、Pd-Pdのそれと等しいものを観測した。この結果から、層数によりPd-Pdの結合距離をコントロールできることがわかった。現在Ptの薄層を付けることができるか検討している。またこれまで開発したサラーサーチおよびマイクロリバースモンテカルロ法を開発し、WO3の光励起過程の解析等に適用した。また3Dプリンターを使って蛍光測定システムの構築により高感度化に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.Pd薄層をAu上に展開できる手法を確立し、その構造の解明に成功した。このときにAFMにより4層まで平坦な薄層を作ることがわかった。また、薄層の層数も電荷量を精密にコントロールすることで制御できることを見いだした。このときにPTRF-XAFS法を適用した結果、予想通り薄層の層数で結合距離をコントロールできることを見いだした。すなわち、1層の時はAu-Auと同じ結合距離であり、4層の時はPd-Pdのそれに等しいことをはじめて見いだした。 2.ナノ粒子解析法であるサラサーチ法やマイクロリバースモンテカルロ法を開発することに成功した。これをWO3やCu/Premodified surfaceにて適用して、その構造を明らかにした。 3.Operando PTRF-XAFS法の測定技術も確立することができた。特に3Dプリンターを使って蛍光測定システムの構築により高感度化に成功した。 4.こうした成果により、最終年度に向けて準備は整ったといえる。3報の論文執筆を進めている。すなわち、Au(111)上のPt、Au(111)のPdの構造とその層数依存性、マイクロリバースモンテカルロ法によるCuの表面構想決定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果をもとにいよいよPt/Pdn/Au(111)表面の設計に取り組む。Pdのn=1,3と変化させ、Pdを成長させ、PdおよびPtの結合距離をPTRF-XAFSで測定し、その結合距離の変化の様子をとらえる。また、PtのL3 edgeXANESの強度より、電子状態とくに、d軌道の空きの状態を調べる。また、今年度開発した回転電極を用いて、それぞれの活性を調べる。以上の結果をもとに、Pt-Ptの結合距離や電子状態と活性の相関を調べる。さらに、DFT計算を行って、活性化メカニズムを明らかにする。また、高感度PTRF-XAFS法を確立して、電気化学反応以外の固液界面現象解析手法としての確立を図る。今回開発するサラーサーチ法やマイクロリバースモンテカルロ法をより広範囲なXAFS解析法として確立するため、新たな共同研究を展開し、その実用化に向けた問題点の洗い出しを行う。こうした成果により、XAFSの新たな解析法を確立する。
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