研究課題/領域番号 |
20H00385
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分34:無機・錯体化学、分析化学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐藤 治 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (80270693)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
44,980千円 (直接経費: 34,600千円、間接経費: 10,380千円)
2023年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2022年度: 12,220千円 (直接経費: 9,400千円、間接経費: 2,820千円)
2021年度: 12,220千円 (直接経費: 9,400千円、間接経費: 2,820千円)
2020年度: 13,520千円 (直接経費: 10,400千円、間接経費: 3,120千円)
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キーワード | 分極 / 電子移動 |
研究開始時の研究の概要 |
メモリー、センサー、エネルギー変換素子をはじめ様々なデバイスに分極機能が利用されている。しかし、現在実用化されている分極制御物質の分極変化のメカニズムはイオン変位や分子配向変化であり、電子の持つ特性・自由度が十分には生かされていない。本研究では、分極変化の源が電子移動である新しいタイプの分極制御物質を開発することを目指す。
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研究実績の概要 |
物質の分極特性を電場、温度、圧力等により制御できる分極制御物質は強誘電メモリー、センサー、環境発電素子をはじめとした幅広い応用を有する。このため、強誘電体を中心に新物質開発、基礎物性の解明およびその応用研究が盛んに行われてきた。分子性物質においてもイオン変位、分子配向変化、電子移動を分極変化のメカニズムとする様々な新物質が開発されている。本研究では、エナンチオピュアな配位子の利用した新規分極制御物質の開発を検討した。エナンチオピュアな配位子を有する錯体はエナンチオモルフィックな構造をとり、焦電特性を有する極性結晶を形成する確率が高い。本研究で検討した錯体は、[Co(3,5-dbdiox)2RR-L]dioxane (RR-1) および [Co(3,5-dbdiox)2SS-L]dioxane (SS-1)である(RR-L = RR体配位子L、SS-L = SS体配位子)。磁気特性、赤外吸収スペクトル、量子化学計算の結果により、RR-1およびSS-1は室温付近でコバルト-配位子間電子移動を示し、電子状態が低温相の[Co3+LS-(3,5-dbcat)2-]から高温相の[Co2+HS-(3,5-dbsq)-]に変化することを明らかにした。これらの結果により、RR-1およびSS-1は温度変化により分子レベルで双極子モーメントがスイッチすることが分かった。さらに、X線構造解析を行い、RR-1とSS-1が極性構造を有し空間群がいずれもP21であることを明らかにした。以上の結果は、RR-1とSS-1は分子レベルでの双極子モーメントの変化が互いに打ち消しあうことなく、マクロな分極の変化として現れる新物質であることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キラル配位子と分子内電子移動を用いる電子移動型分極制御物質開発のための設計指針の提案、新物質([Co(3,5-dbdiox)2RR-L]dioxane (RR-1)と[Co(3,5-dbdiox)2SS-L]dioxane (SS-1))の開発およびその電子状態の解明に成功した。研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発してきた分子内電子移動を用いる電子移動型分極制御物質において、電気分極特性の電場制御および磁場制御を試みる。
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