研究課題/領域番号 |
20H00388
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分35:高分子、有機材料およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉田 亮 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (80256495)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
44,720千円 (直接経費: 34,400千円、間接経費: 10,320千円)
2023年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
2022年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
2021年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
2020年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
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キーワード | 高分子材料 / ゲル / 生体模倣 / 自律機能 / 自励振動 / 高分子 / 自律機能材料 |
研究開始時の研究の概要 |
自己組織化材料に関する種々の研究が盛んに行われている中で、他とは一線を画する新しいソフトマテリアルとして申請者が開発した「自励振動高分子/ゲル」を基盤とし、生体のように自律的な機能を有する新たな高分子材料システムを構築する。「分子設計による自己集合の制御」という観点だけでなく、時間構造を含み「材料の中に散逸構造を作り出すシステムデザインによりユニークな機能を創出する」4D材料設計概念を提唱し、自律機能材料としてその基盤研究を推進する。時空間構造をもつ4Dソフトマテリアルとしての新しい学理を創出するとともに、将来的にメカノバイオロジーによる医療の高度化やマイクロロボット開発等への貢献を目指す。
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研究実績の概要 |
自然や生体に見られるような自己組織化を示す機能性材料研究が盛んに行われている中、他とは一線を画する、心筋のように自律的な周期運動を行う新しいソフトマテリアルとして「自励振動高分子ゲル」を開発した。生体の代謝反応(TCA回路)の化学モデル反応としても知られているBelousov-Zhabotinsky(BZ)反応をN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)とRu錯体を共重合したゲル内で引き起こし、その化学エネルギーを力学エネルギーに変換することにより、ゲルの周期的な膨潤収縮振動、および化学反応波の伝播に伴う自律的な蠕動運動を生み出すことに成功した。本研究では、生体における細胞や組織、器官に学びながら、更に多岐にわたる自律的な運動・機能を自励振動高分子およびゲルを基盤として実現し、新たな高分子材料システムを設計・構築するとともに、時空間構造(三次元+時間の4次元構造)をもつソフトマテリアル提唱するためのゲル開発を行った。 心筋や大腸・輸送器官を規範とした自律運動機能の創製(その挙動制御と力学特性評価・発現機構解明)、繊毛を規範とした自律運動機能の創製(自励振動ポリマーブラシ表面の創製と表面ナノ輸送システムへの展開)、細胞や組織を規範とした自律運動機能の創製(構造制御された自励振動ブロック共重合体の周期的構造転移の解明)、細胞膜を規範とした自律運動機能の創製(自律的な膜揺動(ゆらぎ)を示す中空カプセル型自励振動ゲルの創製とそのゆらぎ現象の解析)、アメーバを規範とした自律運動機能の創製(自律的にゾルゲル振動する高分子溶液の創製とその巨視・微視的解析)、呼吸に学ぶ、酸および酸化剤供給部位を有する生体環境駆動型自励振動ゲルの化学構造設計と構築、などを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞呼吸で重要な役割を担うTCAサイクルでは、細胞内に存在する電子伝達物質が酸化反応を担っているのに対し、BZ反応を用いた自励振動高分子系は外部から添加される酸化剤NaBrO3がその役割を担っており、生体システムとは未だ隔たりがある。自励振動高分子を駆動する際に酸化剤が材料自身から供給されれば、より生体系に近づくといえる。そこで、酸化剤の外部添加なしで自律的な形成・崩壊振動を発現する新たな自励振動ミセルやゾルゲル振動する高分子溶液の創製を目指した。これまで分散安定性のみ担っていた親水性セグメントに、酸化剤を対アニオンとして有するカチオン性モノマー(BrO3-を対イオン交換した[3-(methacryloylamino)propyl] trimethyl-ammonium chloride (MAPTAB))を導入することで、酸化剤供給サイトとしての機能を新たに付与した。ポリマー自身から供給される酸化剤で自励振動セグメントの凝集分散振動が発現し、ミセルの形成崩壊振動が期待される。これが実現されれば、もう一つのBZ基質であるプロトン供給サイトを分子構造に組み込む材料設計への足掛かりにもなり、マロン酸(あるいはクエン酸)のみが存在する生体環境下で駆動する、より生物に近い自励振動高分子の創製が可能となる。既に、2-acrylamido-2-methyl-1-propanesulfonic acid (AMPS)などがBZ反応のプロトンソースとなり得ることを明らかにしており、これらを共重合成分として組み込んだ。
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今後の研究の推進方策 |
将来的にはマイクロロボット開発やメカノバイオロジー等への貢献も見据え、自動物質輸送システム、機能性流体など、多様な新規自律機能材料への応用展開を試みる。革新的なバイオ/バイオミメティックマテリアルして展開することを見据えた新しい各基盤技術(ゲルの自律運動挙動制御と力学特性評価・発現機構解明、構造制御された自励振動ブロック共重合体の周期的構造相転移の解明、自律的にゾル-ゲル振動するアメーバのような高分子溶液の創製とその巨視・微視的解析、酸および酸化剤供給部位を有する生体環境駆動型自励振動ゲルの化学構造設計など)を確立することを目指す。4Dでの分子設計をさらに深化・展開する方法論として、他分野の知見の融合(新しいマイクロロボット開発や、新規な時空間制御足場材料として用いた細胞制御システムの開発などメカノバイオロジーへの応用等)にも目を向けた時空間機能創出を図る。
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