研究課題/領域番号 |
20H00393
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分35:高分子、有機材料およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
但馬 敬介 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, チームリーダー (90376484)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
44,460千円 (直接経費: 34,200千円、間接経費: 10,260千円)
2024年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2023年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2022年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2021年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2020年度: 9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円)
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キーワード | 有機薄膜 / 結晶化 / 表面 / 構造制御 / 有機電子デバイス / 自発配向分極 / 配向 / キラリティ / 表面偏析単分子膜 / 有機半導体薄膜 / 磁気抵抗 / 分極 / 有機半導体 |
研究開始時の研究の概要 |
分子の自己組織化によって有機薄膜表面に形成する単分子膜を用いて、表面からの誘起によって薄膜内部の構造制御を行うという汎用性の高い手法を確立し、様々な有機電子デバイスに広く応用することを目指す。低分子および高分子の有機半導体材料において、表面層とバルク層の分子間相互作用と構造制御性の相関を調べることで、薄膜内部の構造を自在に制御することを目指す。また、分子配向や結晶構造が電界効果トランジスタや有機薄膜太陽電池の性能に及ぼす影響を明らかにする。さらに、表面から薄膜内部の構造キラリティや分極構造の制御を行うことで、電子スピンや内蔵電場を利用する新たな光・電子デバイスへの応用に展開する。
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研究実績の概要 |
今年度は、有機薄膜の分子構造と自発配向分極(SOP)の関係を調べるために、2,5,8-トリス(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)ベンゾ[1,2-b:3,4-b´:5,6-b´]トリチオフェン(TPBTT)およびそのエチル誘導体(m-エチル-TPBTT)を合成した。分光エリプソメトリおよび2次元斜入射広角X線散乱法により、TPBTTおよびm-ethyl-TPBTTの真空蒸着膜は、 2′,2″-(1,3,5-ベンジントリル)-トリス(1-フェニル-1-H-ベンズイミダゾール)(TPBi)に比べて基板に平行な分子配向の度合いが高いことがわかった。π共役ベンゾトリチオフェンのコアが大きく水平配向しやすいものと考えられる。しかし、TPBTT膜はTPBi膜(+77.3 mV/nm)に比べてSOPが+54.4 mV/nmと低く、分子配向だけではSOPは決まらないことがわかった。一方、m-エチル-TPBTTは、膜中で+104.0mV/nmと大きなSOPを示した。密度汎関数理論に基づく量子化学計算により、TPBTTとm-エチル-TPBTTの安定コンフォメーションや永久双極子モーメントの違いが、SOPの違いを引き起こしたことが示唆された。これらの結果から、薄膜中で大きなSOPを得るためには、分子の配向秩序とコンフォメーションを同時に制御することが重要であることが示唆された。 また、1,3,5,7-テトラキス(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)アダマンタン(TPBAD)のSOPと光安定性について検討し、TPBiと比較した。TPBAD(正四面体状)とTPBi(円盤状)の分子形状は大きく異なるが、これらの真空蒸着膜はそれぞれ+74.7および+77.2 mV/nmという同様の高いSOPを示した。アダマンタンの非共役コアにより、TPBADはTPBi(3.50 eV)よりも広い光学バンドギャップ(4.22 eV)を有していた。この結果、TPBAD膜中のSOPの光照射下での安定性が向上し、減衰時定数はTPBi膜の10倍となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TPBiのπ共役コアを拡張することで、分子配向を制御することに成功した。SOPがさらに大きくなることを期待したが、配向に加えて分子コンフォメーションを同時に制御する必要があり、最高値の達成にまでは至っていない。光照射下のSOP安定性については、バンドギャップを広げるという単純な戦略で効果があることが分かった。表面偏析単分子膜を形成する分子設計については、分子間相互作用を強めるさらなる分子設計が必要であることが明らかになっており、継続して検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
TPBi分子の設計を検討するうちに、プロペラ型のコンフォメーションに周辺の分子キラリティを転写できるのではないかという着想を得て、現在分子設計を検討中である。具体的には、昨年度までのアルキル化TPBiに加えて、N-アルキル化したトリベンゾイミダゾールの合成を行い、キラリティ導入による構造変化をCDスペクトルなどで分析する。また、薄膜中でのSOPの発現から、分子配向の制御を検討する。最終的には、キラルな構造を持つ半導体分子中の電子輸送を磁場下で測定し、スピンフィルタ効果や磁気抵抗効果の発現の糸口を見い出したい。
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