研究課題/領域番号 |
20H00399
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分36:無機材料化学、エネルギー関連化学およびその関連分野
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
坂口 裕樹 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (00202086)
|
研究分担者 |
薄井 洋行 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (60423240)
道見 康弘 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (50576717)
西川 慶 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究センター, 主幹研究員 (30457824)
後藤 和馬 北陸先端科学技術大学院大学, ナノマテリアルテクノロジーセンター, 教授 (20385975)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
45,760千円 (直接経費: 35,200千円、間接経費: 10,560千円)
2024年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 13,130千円 (直接経費: 10,100千円、間接経費: 3,030千円)
2020年度: 19,370千円 (直接経費: 14,900千円、間接経費: 4,470千円)
|
キーワード | リチウム二次電池 / ケイ素系電極 / 不純物元素ドープ / 金属ケイ化物 / コンポジット / ケイ素系負極 / ケイ化物 / 多相化 / 多元化 / リンドープ / イオン液体 / 単粒子測定 / コンポジット化 / シリサイド / イオン液体電解液 / 軟X線発光分光法 / 電極/電解質界面 |
研究開始時の研究の概要 |
ケイ素(Si)はリチウム二次電池用系高容量負極活物質として大変魅力的であるが,充放電時の大きな体積変化に起因して乏しいサイクル寿命しか示さない.これに対し,応募者は(I)Siへの不純物ドープ,(II)金属のケイ化物化および(III)Siと金属ケイ化物のコンポジット化により優れた電極性能が得られることを見出してきた.本研究ではこれらの方法論の可能性を追求し,Siの高容量の魅力を保持しつつその欠点を克服したSi系活物質の創製とその充放電反応機構の解明に取り組む.また,得られた活物質の性能を一層引き出すべく液体・固体の電解質の最適化等も行い真に実用に値する次世代リチウム二次電池の創製に挑戦する.
|
研究実績の概要 |
LaSi2/Siコンポジット電極は優れた充放電サイクル寿命を示すが,それでも1200サイクル程で劣化してしまう.充放電前ではLaSi2マトリックス相中にSi相が微分散した組織が形成されていたことから,弾性的なLaSi2がSiからの応力を緩和し電極崩壊を抑制することは確かであると考えられる.しかしながら,充放電後には両相の位置関係が逆転するほど激しい組織変化が起きていることがわかった.そこで,LaSi2/Si中に剛性的なケイ化物(CrSi2)を予め添加しておけば性能をさらに改善できると着想し実施したところ,予想通りCrSi2/SiおよびLaSi2/Si電極よりも優れたサイクル寿命が得られることを見出してきた. 昨年度までに剛性の指標であるビッカース硬度の異なるケイ化物を用いてサイクル試験を実施した結果,LaSi2/NbSi2/Si電極が最も長い寿命を示すことを見出してきた.今年度は応力緩和機能の高い弾性的なケイ化物の方の種類を変えてサイクル寿命を調べた (剛性的なケイ化物はCrSi2に固定).その結果,Cu3Si, FeSi2, NiSi2, LaSi2, CeSi2およびSmSi2の順に寿命が伸長した.ただし,弾性の指標である押し込み仕事比率と性能との間に相関性を確認できなかったことから,他の機械的性質が寄与していると推察される. これまでにCr, V, MoおよびSiからなる四元系ケイ化物と単体Siとのコンポジット電極が優れたサイクル寿命を示すことを見出してきた.今年度はこの性能向上メカニズムを調べた.その結果,多元化によりビッカース硬度が向上しており,サイクル経過にともないケイ化物相が微粉化していないことがわかった.このことから多元化を通して活物質相の弾性と剛性の釣り合いを適度に調節することがサイクル寿命の向上には肝要であるというケイ素電極開発の重要な指針が得られた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は主に弾性的な機械的性質有するケイ化物の種類を変えることで機能の異なる2種類のケイ化物とSiからなるコンポジット電極の負極特性を調べたが,これ以外にも2種類のケイ化物の比率およびケイ化物と単体のSiとの比率を変えた場合の負極特性の違いについても調べてきた.また,実用化を強く意識して,より大量生産に適した冶金的手法により合成した試料を用いて負極特性を評価してきた.さらに,Si系電極の反応挙動解析も取り組んでおり,得られた知見を材料創製にフィードバックし負極特性の向上を図った. 研究を進める中で若干の計画変更があったものの,当初の予定通り試料合成やメカニズム解明が滞りなく進んでいるので「おおむね順調に進展している」と判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
機能の異なる2種類のケイ化物とSiからなるコンポジット電極の負極特性に関して,サイクル寿命と押し込み仕事比率との間に相関性が認められなかった.今後は原子間力顕微鏡を用いてナノサイズレベルで機械的性質を調べていく予定である.また,これまでにコンポジット中のケイ化物はLi拡散経路として機能するが容量はほとんど担わないことを充放電カーブや第一原理計算などの結果に基づいて報告してきた.この確証を得るためにLi吸蔵にともなう機械的性質の変化を原子間力顕微鏡により追跡する予定である. 現行の黒鉛負極には六フッ化リン酸リチウムを溶解させたエチレンカーボネート系電解液が用いられており,プロピレンカーボネート系電解液の適用は難しい.他方,Si系負極に最適な電解液は不明である.そこで,容量可逆率,温度特性,充放電サイクルにともなうSi層中のLi濃度分布や電極の厚さの変化などを詳細に調べSi系負極に最適な電解液を明らかにする予定である.
|