研究課題/領域番号 |
20H00427
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分40:森林圏科学、水圏応用科学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木下 滋晴 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (40401179)
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研究分担者 |
浅川 修一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30231872)
吉武 和敏 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (50646552)
渡辺 佑基 総合研究大学院大学, 統合進化科学研究センター, 教授 (60531043)
神澤 裕平 群馬県水産試験場, その他部局等, 研究員 (90450387)
松原 利光 群馬県水産試験場, その他部局等, 研究員 (70450385)
阿久津 崇 群馬県水産試験場, その他部局等, 研究員 (70828128)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
44,850千円 (直接経費: 34,500千円、間接経費: 10,350千円)
2023年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2022年度: 10,790千円 (直接経費: 8,300千円、間接経費: 2,490千円)
2021年度: 11,180千円 (直接経費: 8,600千円、間接経費: 2,580千円)
2020年度: 12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
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キーワード | 寿命 / 老化 / 魚 / 脊椎動物 / 筋肉 / 魚類 / ニシオンデンザメ / アユ / ゼブラフィッシュ / ゲノム解析 / オンデンザメ / 成長 |
研究開始時の研究の概要 |
老化や寿命は種によって異なる。早く死ぬ種と長く生きる種の違いは何なのか、それを規定する機構は明確でない。魚は死ぬまで成長するなど様々な抗老化特性を示し、392歳のニシオンデンサメなど超長命種がいる一方、アユのように一年で死ぬ種もいるなど、老化や寿命の多様性を解析する魅力的対象である。魚を解析することで、なぜわれわれは老い死ぬのかに関する新しい答えが得られるかもしれない。本研究では、上述の超長命種や短命種を実際に対象とし、ゲノムの比較、成長・老化に伴う発現遺伝子情報の比較、老化に伴う血液成分の解析、さらにはゲノム改変等の技術を駆使し、脊椎動物の老化と寿命の多様性形成のメカニズムの解明を目指す。
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研究実績の概要 |
魚の抗老化特性としてわれわれが着目してきたのが筋肉の抗老化である。哺乳類において筋肉は老化と密接に関連し、加齢性の筋委縮はマイオカインなどと連動して全身的な老化を引き起こすが、魚は筋肉が終生的に成長し、老化が抑制されている。ゼブラフィッシュの加齢に伴う遺伝子発現変化とシングルセルRNA-seqのデータから、AP-1転写因子群の発現および活性が哺乳類では加齢により低下するのに対し、ゼブラフィッシュでは加齢個体で上昇することを見出だした。ゼブラフィッシュ筋肉では老化個体でAP-1転写因子の結合部位を持つ遺伝子群の発現上昇も確認された。一方、アユでは、生殖後に急激に衰弱死するが、その際、哺乳類の老化個体の様に筋萎縮が起きていることが本研究で示されている。生殖後のアユ筋肉のRNA-seqデータを解析したところ、生殖後のアユでは哺乳類の老化個体同様に、AP-1転写因子群の発現低下が起きていることが明らかになった。以上より、魚類特有の筋肉の抗老化、あるいは生殖後の筋委縮といった現象に、AP-1転写因子群が関与する可能性が示された。 アユに関しては、タグ標識した未成熟魚の血液と鰭をサンプリングし、その後採卵・採精を行って死亡までの日数を測定した。早く死んだグループと長く生きたグループ間の比較RNA-seqを行い、発現変動遺伝子を抽出した。 超長命魚ゲノム解析では、ニシオンデンザメのゲノムシーケンスを行った。ニシオンデンザメは6Gを超える大きなゲノムを持つこと、視覚オプシンの種類や構造から深海に適応した視覚を持つことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ計画通りに研究が進んでいる。ニシオンデンザメについても、コロナパンデミックの影響でサンプルの確保に時間がかかったが、無事にサンプルを入手し、ゲノムシーケンスを進めることができている。ゲノムの完成度はまだ不十分なため、追加のシーケンスが必要であるが、サンプル入手の目途は立っており、問題なく作業を進めることができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ニシオンデンザメについてはロングリードシーケンスのデータを追加取得し、HiCのデータを併せて染色体レベルのアッセンブリを目指す。アユについては、ゲノムデー タの精度向上と、既報のデータとの比較解析を行う。短命種、長命種のゲノムについて、既報の寿命・老化関連遺伝子における欠失や重複、ゲノム全体にわたっての選択圧の違いなどを検討し、ゲノム構造と寿命との関わりを調べる。 アユについては、タグ標識した未成熟魚の血液と鰭をサンプリングし、その後採卵・採精を行って死亡までの日数データと紐付けることで、早く死んだグループと長く生きたグループ間の比較RNA-seqを行っている。このデータ解析から、寿命の長短を予測する遺伝子のスクリーニングを行うと共に、再現性の確認を行う。 また、魚類の筋肉の抗老化特性と関わる可能性のあるAP-1転写因子群については、ノックアウトの作成を行っており、今年度はそれらの継続し、表現型解析を行う。 また、哺乳類の老化に伴うNAD+の減少と関連し、魚類における老化とNAD+量の検討を始めたが、イワシなど、年齢が明らかにできる様々な魚種について、加齢とNAD+量との関連を調べる。
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