研究課題/領域番号 |
20H00431
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分40:森林圏科学、水圏応用科学およびその関連分野
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
坂本 崇 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (40313390)
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研究分担者 |
加藤 豪司 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (50624219)
中本 正俊 東京海洋大学, 学術研究院, 博士研究員 (80447721)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
44,850千円 (直接経費: 34,500千円、間接経費: 10,350千円)
2023年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
2022年度: 11,050千円 (直接経費: 8,500千円、間接経費: 2,550千円)
2021年度: 12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
2020年度: 11,700千円 (直接経費: 9,000千円、間接経費: 2,700千円)
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キーワード | 耐病性 / 責任遺伝子 / ゲノム / 細菌性疾病 / 自然選択 / 育種 / 魚類 / 遺伝的影響 / アユ |
研究開始時の研究の概要 |
魚類において、細菌性疾病の耐病性メカニズムは解明されていない。本研究では、これまでの申請者らの研究グループにより、単一遺伝子座で支配されていることが明らかになった細菌性疾病(アユ冷水病)耐病性形質の責任遺伝子候補について解析し、その責任遺伝子を同定し、その機能解析から耐病性メカニズムを明らかする。また、自然河川で毎年採集されてきた野生個体(同一河川の疾病初発生前後)を用いて、新規疾病被害による野生集団の遺伝的変異(自然選択の痕跡)を明らかにする。さらに、耐病性責任遺伝子のDNA配列情報を用いて野生個体から耐病性個体選抜を可能にする分子育種法を開発する。
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研究実績の概要 |
1. 魚類における細菌性疾病に対する責任遺伝子の同定・・・責任遺伝子が存在すると考えられるゲノム領域の候補遺伝子において、耐病性形質と関連性が示唆されるSNPが明らかになった。そこでこのSNPについて、岐阜県・長良川天然個体を用いた耐病性形質との関連解析を実施した結果、耐病性形質との関連性が示唆された。 2. 魚類における細菌性疾病に対する耐病性メカニズムの解明・・・責任遺伝子が存在すると考えられるゲノム領域に存在する遺伝子Cおける発現解析の結果、耐病性形質に関与ことが示唆された。そこで遺伝子Cについて、哺乳類用発現ベクターに組み込み、BALB 3T3細胞に導入した。発現ベクターのMycエピトープタグを利用して、導入遺伝子の発現を確認し、当該遺伝子産物を細胞表面に発現する細胞株を樹立した。これをBALB/c系マウスに接種して免疫し、定法にてモノクローナル抗体を作製した。樹立細胞株を用いた一次スクリーニングを免疫染色法で実施し、35の陽性クローンを得た。アユの白血球を用いた二次スクリーニングを行い、少なくとも陰性クローンよりも高い蛍光強度を有する2クローンを得ることができた。 3. 自然河川で新規に発生した疾病が野生集団に及ぼす遺伝的な影響の解明・・・本研究では、富山県庄川で1992年から2000年まで採集された流下仔魚を解析する。庄川では、1996年頃には顕著な冷水病の発生が確認されており、冷水病発生前後の解析が可能である。本年度は、冷水病発生前サンプルについて、耐病性形質との関連性が示唆された候補遺伝子について解析を実施し、遺伝情報データを収集した。 4. 責任遺伝子を用いた野生個体から耐病性魚を遺伝子選抜する新規育種技術の開発・・・岐阜県・長良川天然個体にピットタグを装着し、責任遺伝子候補のDNA情報で親魚候補を選抜・交配し、次世代を作出・維持管理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は4項目を実施計画とした。研究項目1. 魚類における細菌性疾病に対する責任遺伝子の同定では、責任遺伝子が存在すると考えられるゲノム領域の候補遺伝子において、昨年度に明らかになった耐病性形質と関連性が示唆されるSNPに関して、岐阜県・長良川天然個体を用いた耐病性形質との関連解析を実施した。その結果、岐阜県・長良川天然個体においても耐病性形質との関連性が示唆されたことから信頼性は高く、十分に目標を達成したと考えられた。また、研究項目2. 魚類における細菌性疾病に対する耐病性メカニズムの解明においても、昨年度に発現解析によって耐病性形質に関与することが示唆された遺伝子において、その遺伝子産物を細胞表面に発現する細胞株を樹立すると共にモノクローナル抗体を作製し、少なくとも陰性クローンよりも高い蛍光強度を有する2クローンを得ることができたことから、目標を達成したと考えられた。研究項目3. 自然河川で新規に発生した疾病が野生 集団に及ぼす遺伝的な影響の解明については、富山県庄川の冷水病発生前サンプルについて、耐病性形質との関連性が示唆された候補遺伝子について解析を実施し、遺伝情報データを収集したことから、目的を達成したと考えられた。研究項目4. 責任遺伝子を用いた野生個体から耐病性魚を遺伝子選抜する新規育種技術の開発においては、岐阜県・長良川天然個体にピットタグを装着し、責任遺伝子候補のDNA情報で親魚候補を選抜・交配し、次世代を作出・維持管理したことから、目標を達成したと考えられた。以上のことから、本研究課題の進捗状況については、「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
研究項目1. 魚類における細菌性疾病に対する責任遺伝子の同定では、これまでの分子遺伝学的解析で絞り込まれた(耐病性形質と関連性が示唆された)SNPについて、これまでの解析とは異なる河川のサンプルを用いて解析する予定である。 研究項目2. 魚類における細菌性疾病に対する耐病性メカニズムの解明では、これまでの分子遺伝学的解析で耐病性形質との関連性が示唆されたSNPが存在する候補遺伝子において、抗体を作製した。そこで、この抗体の有効性を確認するとともに、目的とする抗原を有する血球をフローサイトメトリーにより分取し、血球の種類、抗体を保有する血球割合などを解析する予定である。 研究項目3. 自然河川で新規に発生した疾病が野生集団に及ぼす遺伝的な影響の解明では、これまでの分子遺伝学的解析で耐病性形質との関連性が示唆されたSNPが存在する候補遺伝子を中心に、冷水病発生後サンプルについて解析を実施する予定である。 研究項目4. 責任遺伝子を用いた野生個体から耐病性魚を遺伝子選抜する新規育種技術の開発については、耐病性責任遺伝子候補のDNA配列情報で選抜・生産された耐病性形質を保持する候補群(耐病性区)および耐病性形質を 保持しない候補群(感受性区)について、感染実験を実施する予定である。
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