研究課題/領域番号 |
20H00438
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分41:社会経済農学、農業工学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中嶋 康博 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (50202213)
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研究分担者 |
中谷 朋昭 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (60280864)
海津 裕 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (70313070)
橋本 禅 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20462492)
佐藤 赳 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (30756599)
飯田 俊彰 岩手大学, 農学部, 教授 (30193139)
中嶋 晋作 明治大学, 農学部, 専任准教授 (00569494)
村上 智明 農林水産省農林水産政策研究所, その他部局等, 研究員 (60748523)
竹田 麻里 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (60529709)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,250千円 (直接経費: 32,500千円、間接経費: 9,750千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2022年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2021年度: 12,220千円 (直接経費: 9,400千円、間接経費: 2,820千円)
2020年度: 16,120千円 (直接経費: 12,400千円、間接経費: 3,720千円)
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キーワード | 組織論 / 情報技術 / 社会的分業化 / 情報の不完全性 / 食料・農業・農村政策 / 社会的分業 / Best-Worst Scaling |
研究開始時の研究の概要 |
食料・農業・農村分野では様々な社会的分業化を背景に構造変化が進みつつあり、一部で生産性革命の兆しが現れている。本研究では、最新情報技術の適用可能性を参照しながら現代組織論の再検討をし、これらの技術を生産振興に結びつけるために、わが国食料・農業・農村の制度や組織は機能的かつ実践的にどのように再編されるべきかを、ビジネスと政策の両面から考察する。以上の課題を総合的に研究するため、農業経済学と農業工学・計画学との学際的アプローチにより理論的・実証的分析を進める。
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研究実績の概要 |
【経済学系研究】①流通量が著しく減少し、役割の変化の生じた卸売市場が現れている。構造変化の著しい東北市場の8つの卸売市場間に形成されているネットワーク構造の変化を、野菜と果実の市場間転送量に着目して分析した結果、野菜については相対的に大規模な市場に集約が進んでいること、果実についてはそのような集約が低下しているとともに、市場間ネットワークが弱体化している傾向が明らかとなった。②根釧地域の酪農経営の個票データから生産効率性の計測を行ったところ、飼料作業委託の有無で生産効率性に統計的に有意な差がなかった。費用項目ごとに作業委託の有無で規模変化の影響を見ると、労働時間は特に大規模層で減少させることができていること、資本投入量もやや節約できていることを確認したが、一方で委託費を含むその他の費用については委託経営の経費が大きく、生産性向上の足かせとなっていることが確認できた。 【工学系研究】水田水管理の省力化を目指すスマート水管理機器が商品化されて以来10年以上が経ったが、一般の農家へはほとんど普及していない。現在の日本では1区画に1個以上の水口(または給水栓)をそれぞれ独立して管理するための圃場整備が行われてきた。この方式のままで担い手への集積が進み、水管理労力が増大したことが背景にある。そこで、ブロック一括水管理を導入し、スマート水管理機器の利用を最小限にして低コストで省力化する方式を検討した。ブロック一括水管理の具体的な方法として、均等分水と田越灌漑が考えられる。田面標高が異なる隣接区画での田越灌漑を可能にする浮き弁付きサイホンについて、室内実験を行って検討した。その結果、浮き弁付きサイホンによって上下流の区画の水面を異なる水位でキープできることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【経済学系研究】①作業の効率化や管理の組織化、IoTや情報処理をめぐる技術摘要に関連して、北海道北部の農協組織から提供された5年間の圃場区画のデジタル地図データ整備・解析を行っている。生産分析の基盤となる広域のGISデータを整備したほか、Getis-OrdのG*と呼ばれる空間的自己相関の指標を用いた空間統計分析を行い、統計的に有意に高い単収の圃場が密集しているホットスポット、および、統計的に有意に低い単収の圃場が密集しているコールドスポット、それぞれを特定し、どのような地域・地形において単収や生産性が向上しうるのかを検討している。これにより農業サービスの利用状況や農家経営統計、その他の空間データとマッチングし、農業サービスの利用やスマート化による生産効率性への効果、及び、農業サービスのあり方についての考察を行うことが可能となった。②新潟県西蒲原土地改良区の農家を対象に聞き取り調査を実施し、農家の意向を踏まえた最適な農地集積マッチングをGIS圃場データ上で再現し、マッチングアルゴリズムの性能比較を行っている。分析の結果、集団化率や安定性、公平性の基準から、提案したDA(deferred acceptance)アルゴリズムが最も優れた農地集積マッチングの方式であることが明らかとなった。 【生態学系研究】福井県池田町を対象に、「生命に優しい米づくり」の取組みが地域の水質(窒素流出量)に及ぼす影響の評価を行ってきた。分析の結果、現在水稲が作付けされている農地の全域で、(A)慣行水準で水稲栽培を仮定した場合と、(B)現在の生命に優しい米づくりの作付け状況を仮定した場合を比較すると、町全域で(A)よりも(B)の方が窒素の流出量が47キロ/年程度多く、水域レベルでは生命に優しい米づくり(B)への取り組みにより、慣行農法(A)の時よりも窒素流出が減少していることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
【経済学系研究】①食品購買行動に関する統計分析を継続するとともに、食料や農産物の安定的な供給の観点から農業生産者の個別の作付行動・土地利用の態様について検討する。②大規模な水田が存在する地域として北海道・東北・北陸の一定規模数以上の土地改良区に対して、ITC化の現状と課題に関する網羅的なアンケート調査を実施し、解析を行う。③新潟県西蒲原土地改良区の農家を対象に詳細な意向調査(圃場への選好把握)を実施し、そのデータを踏まえて農地集積マッチングの社会実装の可能性について検討する。また、農地集積を補完する制度や組織の在り方について明らかにする。④GPSによる管理システムサービスを行っているICT業者のヒアリングを行って、酪農の作業受託側の生産性向上の可能性を検討する。 【工学系研究】①浮き弁付きサイホンを実際の水田圃場に設置し、灌漑期を通しての屋外での耐久性試験を行う。最終的に、均等分水と組み合わせてブロック一括水管理による低コストでの水管理省力化を実用化することを目的として検討を継続する。②農業現場における農用車両の自動化を進めるため、水田畦畔の傾斜に合わせて重心の移動を自動的に行うメカニズムを組み込んだ傾斜地に対応したロボット草刈り機の開発を行い、その性能を評価する。自動走行を行い、人が行う作業との効率を比較する。 【生態学系研究】池田町において、区画単位での施肥をはじめとする営農情報を記録することで、生産者の経営努力による自然環境への貢献をより詳細に推定できる可能性を示す。農業分野で経営・生産管理システムが普及することで、今回実施したような区画単位での営農を考慮した評価が進み、その実績に応じた環境支払制度を検討する。
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