研究課題/領域番号 |
20H00446
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分42:獣医学、畜産学およびその関連分野
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
国枝 哲夫 岡山理科大学, 獣医学部, 教授 (80178011)
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研究分担者 |
大月 純子 岡山大学, 生殖補助医療技術教育研究センター, 准教授 (00573031)
佐々木 慎二 琉球大学, 農学部, 教授 (10365439)
渋谷 周作 山口大学, 共同獣医学部, 准教授 (20534473)
桃沢 幸秀 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, チームリーダー (40708583)
藤原 靖浩 東京大学, 定量生命科学研究所, 助教 (50793064)
揖斐 隆之 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 准教授 (70335305)
辻 岳人 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 教授 (90314682)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
44,720千円 (直接経費: 34,400千円、間接経費: 10,320千円)
2023年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
2022年度: 11,310千円 (直接経費: 8,700千円、間接経費: 2,610千円)
2021年度: 11,830千円 (直接経費: 9,100千円、間接経費: 2,730千円)
2020年度: 12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
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キーワード | 近交退化 / 黒毛和種 / 在来馬 / PRDM9 / 日本在来馬 |
研究開始時の研究の概要 |
動物の集団において、近交化が進むことで繁殖性の低下や各種の異常が発生する近交退化と呼ばれる現象は、家畜生産の阻害要因となるだけでなく、個体数が減少した野生動物集団が絶滅する要因ともなる。本研究では、野間馬と黒毛和種牛という近交退化が危惧される二つの家畜集団を対象として、ゲノム解析によりこれら異常の原因となる変異を同定するとともに減数分裂における組換えに関わる分子を主な対象として、近交退化の分子メカニズムの解明を試みる。本研究の成果は、近交退化の原因を解明するだけでなく、黒毛和種および在来馬集団に存在する有害変異を集団中から除去することで近交退化からの回避を実現するという応用的な意義も大きい。
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研究実績の概要 |
本研究では、近交化が進んだ野間馬および黒毛和種の集団を対象として、集団中に存在する有害変異を網羅的に解明し、各種異常の原因を解明にすること、これらの集団においてPRDM9の多様性を明らかにすることで、近交化によるPRDM9の多様性の低下と各種異常との関係を明らかにすることを目標とする。 ウマについてはこれまでに野間馬の現存全個体の全ゲノムのSNPsのタイピングは終了しているが、さらに過去に飼育されていた個体についてもその多くについてSNPsのタイピングを行った。さらに、現在新たに多くの個体が出生しているが、それらの個体に死産、出生後の死亡等の遺伝性が疑われる異常が発生していることから、これらの個体についても詳細な病理学的解析とともに、これら個体についても今後SNPsのタイピングを行う予定である。また、ウシにおいては、全ゲノムを網羅する突然変異の解析の結果、繁殖性に影響を与える可能性のある多くの突然変異を同定した。さらに遺伝性が疑われる繁殖障害を呈する個体について、候補遺伝子の検索を行った結果、性決定、性分化に関わる特定の遺伝子に突然変異が存在することが明らかとなった。 PRDM9遺伝子中のZinc-Finger Domain の塩基配列を解析しウマの集団におけるその多様性を明らかにした結果、他の動物種に比べてその多様性は比較的低いことが明らかとなった。また、野間馬の集団でPRDM9は2ハプロタイプしか存在しないことが明らかとなった。ヒトについては、女性不妊患者について、広くPRDM9遺伝子のハプロタイプを決定したところ、特定の患者に本遺伝子の機能が失われていると考えられる突然変異が存在することが明らかとなり、PRDM9がヒト不妊の原因となっている可能性が示唆された。また、培養細胞を用いてPRDM9が結合するDNA配列を特定する新たな手法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野間馬において、SNPsのタイピング結果を用いて、各個体において相同染色体が同一の祖先に由来してホモ化している領域を特定する予定であったが、現在新たに多くに死産、出生後の死亡等の異常が発生していることから、これらの個体についてもSNPsのタイピングをおこなう必要が生じ、ホモ化している染色体領域の特定については当初計画より若干の遅れが生じている。一方で、黒毛和種において遺伝性が疑われる繁殖障害の原因となる変異を特定したこと、ヒトの不妊症患者においてPRDM9遺伝子に不妊の原因となる可能性のある突然変異を特定したことなど、当初計画にはない成果を達成している。また、PRDM9の分子多様性の解析についても当初計画にしたがって順調に研究計画を実施している。これらの成果を総合的に判断して「概ね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ウマについては、新たに出生した死産等の異常個体を含めて全ゲノムを網羅したSNPsの解析を行い、各個体において共通の祖先に由来してホモ化している染色体領域を特定することで、有害突然変異の存在する場所を限定する。さらに、死産、流産等の異常発症個体について、その病態の解析から候補遺伝子の推定を行うとともに、異常個体の全ゲノムの配列解析を行い、それらの情報から異常の原因となっている変異の同定を試みる。また、野間ウマだけでなくアジア各国の在来馬についても対象としてPRDM9遺伝子のウマの集団における多様性を明らかにする。 ウシににおいても前年度に引き続きPRDM9のウシ集団における分子多様性を明らかにし、これらのPRDM9タンパク質がゲノムDNAに結合するための標的配列を特定することで、黒毛和種に存在する変異型PRDM9タンパク質の繁殖性に関わる特性を明らかにすることを試みる。これらの結果から、PRDM9 の多様性の減少がウシの繁殖性に関わるか否かをを明らかにする。またこれまでに得られている黒毛和種の全ゲノムの塩基配列の情報を用いてゲノム中に存在する有害突然変異の網羅的に同定し、集団中の遺伝子頻度を明らかにすることで、これらの遺伝子が近交退化のリスクとなる可能性について検討する。 ヒトについては、これまでに同定されたPRDM9遺伝子等の減数分裂関連遺伝子の変異について、不妊個体と正常個体における遺伝子頻度を解析することで、これらの変異がヒトの生殖機能と関連しているか否かについて調べる。 以上の課題を通して、集団中に存在する有害変異を網羅的に解明し、その原因を解明にするとともに、これらの集団においてPRDM9の多様性を明らかにすることで、近交化によるPRDM9の多様性の低下と各種異常との関係を明らかにすること試みる。
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