研究課題/領域番号 |
20H00463
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分43:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
正井 久雄 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基礎医科学研究分野, 所長 (40229349)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
44,850千円 (直接経費: 34,500千円、間接経費: 10,350千円)
2023年度: 11,440千円 (直接経費: 8,800千円、間接経費: 2,640千円)
2022年度: 11,570千円 (直接経費: 8,900千円、間接経費: 2,670千円)
2021年度: 11,830千円 (直接経費: 9,100千円、間接経費: 2,730千円)
2020年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
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キーワード | グアニン4重鎖 / クロマチンドメイン / DNA複製タイミング / RNA-DNAハイブリッド / DNA複製開始 / クロマチンループ / 染色体高次構造 / 核膜 / 多量体形成 / グアニン4重鎖DNA |
研究開始時の研究の概要 |
G4によるDNA複製の正と負の制御機構を解明するため次のような実験を行う。 ① Rif1とG4/核膜の相互作用による複製タイミングドメイン形成メカニズム:Rif1-G4複合体構造のクライオ電顕、X線構造解析等による決定。 ② RNA-DNA hybrid/G4に依存する複製開始機構:in vitro複製開始反応系を用いた、複製開始部位の決定と開始機構の解析。ヒト細胞でのG4依存的複製開始系の構築。 ③ RNA-DNA hybrid及びG4の細胞内動態の解析:既存のプローブ、G4リガンド、G4結合タンパク質、及び新たに開発する新規技法により、細胞内G4を網羅的に検出、細胞内動態を解析する。
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研究実績の概要 |
研究代表者は、これまでのDNA複製の研究から、代表的な非B型核酸構造のRNA-DNAハイブリッド/グアニン4重鎖(G4)が、1)染色体高次構造形成を介した複製開始の阻害、及び、2) 複製開始の正のシグナル、のDNA複製の2種類の重要な側面に関与する可能性を発見した。1)では、進化的にヒトから酵母まで保存されたRif1タンパク質が、2)ではPriAおよび機能未知の新規タンパク質が、G4を直接認識することが重要である。これまでの研究から、Rif1のG4認識に必要なドメインとその相互作用の詳細を解明し、Rif1によるクロマチン高次構造形成のモデルを提出した。またRNA-DNAハイブリッド/G4からの複製開始をin vitroで再現し、G4構造の複製開始における重要性を検証した。本研究ではこれらの発見をさらに発展させ、1) Rif1のG4結合と、多量体形成能を担うドメインの詳細な解析と、それによる核膜近傍における核内染色体高次構造形成のメカニズム、2) RNA-DNAハイブリッド/G4に依存した普遍的な複製のメカニズム、さらに、3) 細胞内のRNA-DNAハイブリッド/G4を検出する新規手法の開発、4) RNA-DNAハイブリッド/G4の細胞内プロファイルの決定、5) G4構造のTAD(topologically associated domain)形成やオープンクロマチン形成における役割など、その多様な機能の一部を解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)Rif1とG4/核膜の相互作用による複製タイミングドメイン形成メカニズム:1 Rif1は、リン脂質に直接結合するとともに、リン脂質修飾(パルミトイル化)により、核膜と相互作用する可能性が示された。2 C末300アミノ酸の領域のみでリン脂質に結合するとともにパルミトイル化を受ける。3 N末Heat Repeat領域にシステインの連続配列が存在し、この変異により、C末依存的なリン脂質結合が減少する。 2)RNA-DNAハイブリッド/G4に依存する複製開始のメカニズム: G-rich配列を人為的に転写することにより、染色体複製を誘導できる可能性を示した。3)RNA-DNAハイブリッド及びG4の細胞内動態の解析と新規機能の発見:2 RNaseH1 D145Nポリペプチドプローブにより、大腸菌、分裂酵母細胞内のゲノムワイドRNA-DNA ハイブリッド部位を明らかにし、酵母では、これらの一部(~20%)がRad52により認識されるDNA損傷部位と一致することを示した。2 同様にG4プローブG4Pにより大腸菌染色体上のG4部位をゲノムワイドで検出した。3 分裂酵母ゲノム上のRNA-DNA ハイブリッド形成部位をChIP-seqにより決定した。4 大腸菌ゲノム上のRNA-DNA ハイブリッド形成部位をChIP-seqにより決定した。
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今後の研究の推進方策 |
1)Rif1とG4/核膜の相互作用による複製タイミングドメイン形成メカニズム:1 Rif1C末内のリン脂質修飾(パルミトイル化)候補部位(システイン残基)に変異を有する細胞株を樹立する。2 この変異がパルミトイル化、リン脂質結合に及ぼす影響を解析する。3 すでに樹立したRif1のパルミトイル化責任酵素(S-アシルトランスフェラーゼZDHHC)の欠損株においてRif1のパルミトイル化を検証する。4 23種類のパルミトイル化酵素とRif1の相互作用を検討し、責任ZDHHCの同定を試みる。5 これらの株(ZDHHC欠損株、あるいは増産株)において、Rif1の核膜局在、複製タイミングを検討する。 2)RNA-DNAハイブリッド/G4に依存する複製開始のメカニズム:1 大腸菌ゲノム上の人為的な複製開始ユニットの複製メカニズムを解析する。2 RNA-DNAハイブリッドに依存する複製が変異率に及ぼす影響を大腸菌において慎重に検討する。3 真核細胞におけるRNA-DNAハイブリッドに依存する複製が、どのような条件下、細胞周期時に作動するかを詳細に解析する。 3)RNA-DNAハイブリッド及びG4の細胞内動態の解析と新規機能の発見:1 G4 helicase (RecQ, FancJ, DHX36など)、Topoisomerase、Senatxin(rho)変異体、などにおけるRNA-DNAハイブリッドおよびG4のゲノムプロファイルおよび細胞内動態を解析する(大腸菌、酵母、動物細胞)。2 G4リガンド-SNAP tagとSNAP-A3A シチジンデアミナーゼを用い、細胞内のG4近傍の塩基を書き換える新規技法を開発する(東京農工大・長澤教授との共同研究)
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