研究課題/領域番号 |
20H00470
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分44:細胞レベルから個体レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
伊藤 寿朗 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (90517096)
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研究分担者 |
和田 七夕子 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (50379541)
佐竹 暁子 九州大学, 理学研究院, 教授 (70506237)
白川 一 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (70636969)
山口 暢俊 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (90767899)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
45,110千円 (直接経費: 34,700千円、間接経費: 10,410千円)
2023年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2022年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2021年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2020年度: 13,520千円 (直接経費: 10,400千円、間接経費: 3,120千円)
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キーワード | 発現制御 / 発生・分化 / 細胞周期 / シグナル伝達 / 幹細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
高等植物の花は、種固有の器官数をもつ一方で、サイズは環境条件によって一定幅で変動する。高等生物において器官の数やサイズを決める原理の多くは、未解明である。本研究は、花をつくる幹細胞に着目して、I) 花器官数の不変性、II) 花弁サイズの決定、III) 花の総数の決定における分子機構の解明を目指す。手法としては、環境、発生プログラムに応じた増殖・分化・老化のバランスを制御する遺伝子発現、ヒストン修飾およびホルモンシグナルを単一細胞タイプで定量的に計測する。さらに、I)-III)のシステムレベルでの理解のため、 数理モデル化する。本研究は、多細胞体における秩序形成の基本原理の理解をめざす。
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研究実績の概要 |
本研究では、花における種固有の器官数および、サイズを決める原理の解明として、I) 花器官数の不変性を司るエピジェネティックなバイオタイマーの制御機構、II) 花弁サイズの決定を司るジャスモン酸シグナル系路、III) 花の総数の決定における茎頂幹細胞の老化制御の分子機構の解析を行った。 I) バイオタイマーにより制御されている遺伝子の同定、バイオタイマー遺伝子の細胞周期依存性、エピゲノム制御、さらに代表的な遺伝子の機能解析、および数理モデル解析について、論文 (Plant Cell 2023 under revision)としてまとめた。 II) ジャスモン酸 (JA)シグナル伝達を制御するとの報告があるMYCの三重変異体 (myc2,3,4) で花弁サイズ、および花弁の脱離時期を計測した。野生型と比べてmyc2,3,4では花弁が大きくなり、さらに脱離時期が遅延することがわかった。また、JAによる花弁脱離の時期と花弁基部のダメージとの関係を明らかにするため、DAB染色により花弁基部の活性酸素種 (ROS) の蓄積を可視化したところ、myc2,3,4変異体では、花弁基部におけるROSの蓄積範囲が狭くなっていた。次にJA下流として、花弁の脱離とオートファジーの関係に注目した。オートファジーが進行しないautophagy7 (atg7) 変異体では、花弁の脱離が遅延した。さらに35S::GFP-ATG8の蛍光観察とcleavage assayから、JA関連変異体ではオートファジーの進行が遅れることがわかった。以上の知見を論文としてまとめて投稿した (Nature Comm in revision)。 III) 加齢による花の総数の決定機構として活性酸素による幹細胞の制御系の関与について論文報告した。加えて、これまでの知見や今後の課題を総説として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
花幹細胞制御におけるKNUの作用機序にかんしては、AG下流のバイオタイマー(I)の論文はPlant Cell誌にて2nd minor revisionである。IIは最終まとめのためのデータを取得して、Nature Communications誌にてリバイズ中である。IIIはInternational Journal of Molecular Sciences (2022), 23, 3864. doi.org/10.3390/ijms23073864にて論文報告し、さらにPlant & Cell Physiology (2023)10.1093/pcp/pcac1552023にてこれまでの知見と今後の課題についてまとめた総説を発表した。2020年の研究開始から計16報の論文報告を行ってきた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、花における種固有の器官数および、サイズを決める原理の解明として、3つの関連のある独立したテーマに基づいて解析を進めている。以下にそれぞれについての方策をまとめる。 I) 花器官数の不変性 論文 (Plant Cell 2023 under minor revision)としてまとめたものへのリバイズ実験を完了し、なるべく早く発表する。 II) 花弁サイズの決定 ジャスモン酸下流における花弁の老化制御機構における新知見を論文 (Nature Comm 2023, under revision)としてまとめた際に、レビューワーらから指摘された詳細実験を成し遂げ、なるべく早く、論文として発表することを目指す。また、糖輸送体の発現制御における花弁細胞サイズへの制御にかんしては、分子遺伝学的、メカノバイオロジー的に解析を遂行することで、オートファジーに続く花弁のサイズ制御の論文としてまとめる。 III) 花の総数の決定 今後の課題として、加齢に伴うWUS抑制機構を明らかにするため、時間軸に沿った茎頂の幹細胞領域での単一細胞レベルのRNA-seqを行う。WUSと発現相関のある新規老化関連遺伝子を同定し、変異体を作出してWUS発現への影響を調べる。
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