研究課題
基盤研究(A)
私たちの体は、頭尾・背腹・左右という3つの極性(体軸)を持っている。なかでも左右非対称な形態は、発生のどの時期において、どのような仕組みで生じるのか? 本研究では,2つの異なる脊椎動物において、左右非対称性の起源を明らかにしたい。すなわち、マウスにおいては、繊毛に依存して方向性を持った水流が生じ、その水流を感知する機構を解明する。一方、繊毛に依存しない爬虫類や鳥類においては、繊毛がなくても対称性が破られる機構を調べることで非対称性の起源に迫る。これら2種類の脊椎動物における機構を比較することで、対称性が破られるメカニズムの多様性を明らかにしたい。
2つの異なる脊椎動物を用いて、体の左右非対称な形態が生じる仕組みを解明しようとした。繊毛が生じる水流に依存するマウスにおいては、その水流を感知する機構を解明した。すなわち、ノードの左側の不動繊毛が水流が生じる力学刺激を、メカノセンサーであるイオンチャネルを介して感知する。その結果、Ca2+が流入し、RNA 結合蛋白質Bicc1を介して標的mRNAを分解する。繊毛に依存しない爬虫類や鳥類においては、Nodal遺伝子がノードで非対称に発現することで体の非対称性が誘導される。Nodal遺伝子の転写を制御するエンハンサーを探索し、ノードで非対称な発現をもたらすエンハンサーを同定した。
左右非対称性を決める水流が感知される機構が解明された点は、学術的に大きな意義を持つ。とくに、『水流は左右を決める分子を運搬するのか、それとも力学刺激として感知されるのか?』という長年の疑問に答えを出せたことは大きな進展であった。一方で、繊毛や水流に依存せずに対称性を破る鳥類や爬虫類では、その機構は不明であったが、Nodalの非対称な発現を規定するエンハンサーを同定できたことで、重要な糸口を得ることができた。
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