研究課題
基盤研究(A)
体表の紋様や体色によって捕食者を攪乱する擬態は広範な動物にみられる。擬態などの複雑な適応形質には、染色体上の隣接遺伝子群「超遺伝子(スーパージーン)」が制御しているものがある。シロオビアゲハとナガサキアゲハという近縁な2種の蝶はベイツ型擬態をする。その原因領域はいずれもスーパージーン構造をもつが、その構造や主要遺伝子の比較から両者は独立に平行進化したと考えられた。本研究では、アゲハチョウ属のベイツ型擬態の平行進化とスーパージーンの遺伝的背景を明らかにする。
擬態などの複雑な適応形質には、染色体上の隣接遺伝子群「超遺伝子(スーパージーン)」が制御するものがある。シロオビアゲハのベイツ型擬態の原因領域など、スーパージーンの多くは染色体逆位によって組換えが抑制されるが、近縁種のナガサキアゲハの擬態スーパージーンには逆位は存在しない。本研究では、この2種のアゲハの擬態スーパージーンを構成する複数の遺伝子が擬態紋様形成に関与して働いていることを初めて明らかにした。また、複数のアゲハ近縁種の擬態スーパージーンの構造比較から、ベイツ型擬態の平行進化の遺伝的背景や進化プロセスを明らかにした。
スーパージーンは90年以上前に提唱された遺伝学的概念だが、その実体についてはほとんど実証されていなかった。近年、ゲノム解析の劇的な進展により、数多くの複雑な適応形質がスーパージーンで制御されていることが明らかになったが、スーパージーン内の遺伝子の機能や逆位の役割が明瞭になったものはない。本研究は、スーパージーン内外の複数の遺伝子が適応形質を生み出していること、さらに逆位の外側の遺伝子も形質発現に関与していることを、スーパージーンでは初めて実証した。また、シロオビアゲハとナガサキアゲハの擬態スーパージーンがどのように進化したかをゲノム構造の比較から明瞭にした。
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