研究課題/領域番号 |
20H00478
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分45:個体レベルから集団レベルの生物学と人類学およびその関連分野
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
重信 秀治 基礎生物学研究所, 超階層生物学センター, 教授 (30399555)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
43,940千円 (直接経費: 33,800千円、間接経費: 10,140千円)
2023年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2022年度: 11,310千円 (直接経費: 8,700千円、間接経費: 2,610千円)
2021年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
2020年度: 12,090千円 (直接経費: 9,300千円、間接経費: 2,790千円)
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キーワード | 共生 / ゲノム編集 / 昆虫 / アブラムシ / 比較ゲノム解析 / 社会性 / プロモーター |
研究開始時の研究の概要 |
昆虫アブラムシとその細胞内共生細菌ブフネラはお互い相手なしでは生存が不可能なほど緊密な相互依存関係にあり、共生研究のモデル系として100年以上もの研究の歴史を有している。しかし、アブラムシにはRNAiが効きにくいなど効果的な遺伝子機能解析の技術がなかったため、これまで実証的な研究が不可能であった。私たちは最近、アブラムシでCRISPR/Cas9ゲノム編集の技術を確立することに成功した。本研究ではこのゲノム編集技術を活用して、「共生遺伝子」を同定し、その機能を明らかにすることを目標とする。絶対共生系としては初の遺伝子操作が可能な解析系であり、共生の遺伝子レベルの理解が一気に進むと期待される。
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研究実績の概要 |
半翅目昆虫アブラムシとその細胞内共生細菌ブフネラはお互い相手なしでは生存が不可能なほど緊密な相互依存関係にあり、共生研究のモデル系として広く研究されている。しかし、アブラムシにはRNAiが効きにくいなど、効果的な遺伝子機能解析の技術がなかった。私たちは最近、エンドウヒゲナガアブラムシにおいて CRISPR/Cas9ゲノム編集の技術を確立することに成功した。本研究ではこのゲノム編集技術を最大限に活用し、アブラムシの「共生遺伝子」を同定し、その機能を明らかにすることを目標とする。 3年目となる今年度は、すでにゲノム編集が確立しているCRISPR/Cas9 NHEJ法を用いて、共生遺伝子の候補遺伝子数個のノックアウト実験を昨年に引き続き行なった。遺伝子XとYのノックアウト個体では共生細菌や共生器官に影響が見られ、これらの遺伝子は共生細菌との共生に必須の共生遺伝子であると結論された。遺伝子Zについてはポリクローナル抗体の作出に成功した。その抗体で免疫染色をおこなったところ、ブフネラに局在することが明らかとなった。 ゲノム編集のさらなる高度化を進めた。特にノックイン技術の開発に力を入れている。卵ではなく成虫に直接インジェクションする新技術「DIPA CRISPR」を開発者との共同研究で開始し、順調に開発が進展している。共生細菌ブフネラ側の遺伝子操作の技術開発も開始し順調に進展している。 社会性アブラムシであるササコナフキツノアブラムシをモデル系として確立し、複数の絶対共生細菌が共生する複合共生系であることを新発見し、論文に報告した(Yorimoto et al., 2022 iScience)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ゲノム編集CRISPR/Cas9 NHEJ法を用いた遺伝子のノックアウトは非常に効率の良い系が確立でき、さらに、DIPA CRISPRや遺伝子ノックインについてもまだgerm line 変異系統を得るまでには至ってないものの、G0世代でのゲノム編集に成功した。共生細菌側の遺伝子操作についてもポジティブな結果が得られている。これらは当初の研究計画になかった想定以上の進展と言える。ササコナフキツノアブラムシの複合共生系に関する論文を発表、プレスリリース等でも好評を博した。
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今後の研究の推進方策 |
研究1:ゲノム編集による「共生遺伝子」候補の機能解析:私たちはすでに共生器官のトランスクリプトーム解析等を通して「共生遺伝子」の有力候補を多数リストにしている。本研究ではゲノム編集を用いてこれらの遺伝子をノックアウトして、ブフネラとの共生に与える影響を調べる。表現型として以下をリードアウトとして、共生に対する影響を評価する。i. ブフネラの数や形態。ii. アブラムシの成長に対する影響。iii. 共生器官の遺伝子発現及び形態。これまでの3年間ですでに複数の変異体の作出に成功し、ある遺伝子については良質な抗体も得られているので、次年度はさらに多角的に表現型を解析する。
研究2:新規の「共生遺伝子」・「共生因子」の探索:研究1ではこれまでに研究代表者が蓄積してきたデータに基づいてすでにリストにある共生遺伝子候補を解析対象としたが、研究2では新しいゲノミクスのデータや手法を用いて、新規に「共生遺伝子」や「共生因子」を探索する。今年度までに開発に成功した、マイクロピックシステムを利用した単一核RNA-seq解析法を用いて共生器官の1細胞レベルトランスクリプトーム解析をさらに進め、新たな候補遺伝子を探索する。
研究3:ゲノム編集技術の高度化:私たちはすでにアブラムシでCRISPR/Cas9ゲノム編集によるNHEJ (non-homologous end joining) を介した高効率ノックアウトの技術を確立している。これを基礎にしてゲノム編集のさらなる高度化を進める。特に今年度までに少しずつ成果の上がってきているノックイン技術の開発や新たに着手したDIPA-CRISPRに取り組む。共生細菌側の遺伝子のノックダウンの技術開発も行う。
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