研究課題/領域番号 |
20H00497
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分48:生体の構造と機能およびその関連分野
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
老木 成稔 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 特命教授 (10185176)
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研究分担者 |
清水 貴浩 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 准教授 (40353437)
岩本 真幸 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (40452122)
松森 信明 九州大学, 理学研究院, 教授 (50314357)
許 岩 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (90593898)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
45,240千円 (直接経費: 34,800千円、間接経費: 10,440千円)
2024年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
2023年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
2022年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
2021年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
2020年度: 13,520千円 (直接経費: 10,400千円、間接経費: 3,120千円)
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キーワード | 脂質2重膜 / イオンチャネル / 膜物性 / 膜張力 / 接触バブル2重膜法 / コレステロール / 膜双極子電位 |
研究開始時の研究の概要 |
生体膜は細胞にとって運動・エネルギー変換・情報伝達など様々な機能を担っており、その中心的な役割は膜蛋白質だけではなく脂質2重膜も担っている。細胞膜の複雑さを回避し、自由に化学的・物理的変化を起こし、それを正確に測定できる脂質2重膜での実験を行うことが本研究の目的である。脂質2重膜は外力だけでなく、その化学組成が変化することで張力や膜内電位が変化するのでこれを捉える方法を開発中である。これらの方法を確立することにより脂質2重膜の化学-物理変換機構を明らかにする。そしてこの変化に直接影響を受けるチャネルの機能を一分子測定することで脂質2重膜-チャネル相互作用の新しい機構を解明する。
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研究実績の概要 |
生体膜は複雑であり、膜脂質組成が多様であるだけでなく、膜の外葉・内葉で脂質組成だけでなく、膜物性にも非対称性がある。このような複雑な膜環境の中でイオンチャネルがどのように活動しているか、ということを解明するための方法は限られている。そこで生体膜の特性を抽出し、合成脂質2重膜でそれを再現することによって、チャネルと特異的な膜環境との相互作用を分子レベルで明らかにすることができる。特に、独自の合成脂質2重膜を利用することによって従来実験が難しかった非対称膜や膜張力負荷での実験とその解析が本研究の目的である。 膜組成を自由に変化させ、膜張力の負荷と測定を自由に行える系を確立することができた。これにより、非対称膜での実験が簡単に行えるようになっただけではなく、単一チャネル電流記録中に脂質組成を変えることができるようになり、特定の脂質に対する応答を捉えることができた。 本年度の特筆すべき実績は、チャネルのゲート特性を解析するための新しい方法を開発することに成功したことである。従来の方法では解析できなかった単一チャネルのフリッカー現象を解析できるようになった。この解析方法の確立に膨大な時間を費やしたが、これにより初めてチャネルゲート特性を定量的に捉えることができた。この方法は専門家から高い評価を受けた。もう一つは膜張力を自由にフィードバックコントロールできる実験システムを完成させることができた。これを様々な実験に利用できるようになり、実験効率が従来の数倍になった。新しい解析法と実験法を組み合わせることによって、様々な機械受容チャネルの実験を行い、チャネル特性に関する新しい知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膜物理測定のために接触バブル2重膜法に様々な工夫を行った結果、方法論としてほぼ完成の域に達しつつある。これと並行して単一チャネル電流の解析法を開発することに成功し、出版した。機械受容チャネルにこれらの方法を適用し、チャネルの膜張力応答機構について解明するための準備が整った。現在、チャネルに変異を導入し、張力感受性の変化などを解析中である。 一方、膜脂質のチャネル活性に対する影響については、様々な膜脂質組成の中からチャネルに特異的に結合するものをスクリーニングする方法を確立しつつある。脂質2重膜の組成をあらかじめ設定するだけでなく、単一チャネル電流記録中に脂質組成を変化させる方法を確立することができた。この時、膜の外葉・内葉のどちら側からチャネルに作用するか、に対する実験も可能になった。 本研究で開発した実験・解析法は全く新しいものであり、様々なチャネルにこの方法を適用することによって、本プロジェクトの優位性を証明することができる。 現在、数種類のチャネルを対象に膜―チャネル相互作用について、独自の方法を適用することにより、様々な新しい結果が蓄積しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
接触バブル2重膜法は電気的・力学的測定のために実験法としてほぼ確立し、様々なチャネルと膜自体に対する実験を効率よく進め、結果が蓄積している。すでにほぼ書き上げたものも含め数報の論文が投稿済みあるいは投稿準備段階にあるが、これらの成果を論文として発表することが重要な課題である。 最近の脂質研究の進歩は著しく、それらの成果を踏まえて行うべき実験は多数ある。中でも非対称膜に対する関心が高まっており、我々の実験系で可能ないくつかの課題を進める予定である。他の非対称膜より優れた特性を持つ我々の実験系の特徴を生かした実験を行う。 6月にはグループ全体で対面会議を行い、プロジェクトの成果確立に向けて、さらなる共同・分担体制を整える。
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