研究課題/領域番号 |
20H00500
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分48:生体の構造と機能およびその関連分野
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
鍋倉 淳一 生理学研究所, 所長 (50237583)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
45,110千円 (直接経費: 34,700千円、間接経費: 10,410千円)
2023年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
2022年度: 11,570千円 (直接経費: 8,900千円、間接経費: 2,670千円)
2021年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
2020年度: 14,040千円 (直接経費: 10,800千円、間接経費: 3,240千円)
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キーワード | 神経回路再編 / ミクログリア / アストロサイト / 生体観察 / 慢性疼痛 / 神経細胞 / カルシウム / 経頭蓋直流刺激 / グリア / 神経回路 / 大脳皮質 / 長期再編 |
研究開始時の研究の概要 |
発達・病態や学習によって脳機能が変化する背景には神経ネットワーク活動の長期的な変化がある。その変化を誘導する要因として、脳内環境変化に感受性の高いグリア細胞の関与について、生体イメージング法と細胞操作法を研究手法の軸として検討する。特に、脳内免疫細胞ミクログリア、および培養系実験において神経回路形成や活動制御への関与が報告されているアストロサイトに注目し神経回路の長期再編について検討する。
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研究実績の概要 |
グリア細胞による神経回路再編について、以下の知見が得られた。1)ミクログリア突起の伸展などのダイナミックなシナプス監視の基盤となるミクログリア細胞内カルシウムダイナミックスを検討するためにカルシウム指示タンパク質CaMP6が特異的に発現する遺伝子改変マウスを作成し、昨年度に得られたカルシウム動態のホットスポットと突起伝搬について定量的な解析をおこなった。その結果、細胞体や近位部と比較し、突起遠位部においてホットスポットが有意に局在することが判明した。また、伝搬について、突起におけるカルシウム上昇は同部位から近位方向や遠位方向へのカルシウムフローが起こる場合も見られた。カルシウムフローの方向性や拡散範囲は一定でなく、特に突起の分岐部でその先への拡散が制御されている場合があることが判明し、突起分岐部にカルシウム動態のバリアの存在が示唆された。さらに、カルシウム上昇のイベントは頭蓋骨に観察窓を作成した直後の急性期には多く、数日後の慢性期には、イベント頻度は大きく低下した。今後はニューロン活動との関連を検討する。 2)難治性の異常痛覚を伴う慢性疼痛の新規治療法の確立を目指して、慢性疼痛モデルマウスにおいて、痛覚過敏慢性期にDREADD法により大脳皮質第一次体性感覚野のアストロサイトの選択的活性化と薬理的(テトロドトキシンの慢性投与)な末梢神経活動の局所ブロックを組み合わせた。アストロサイト活性化と末梢神経活動ブロックを同時に行うと、慢性疼痛発症時に新生したシナプスの除去とともに痛覚過敏が長期期に除去された。一方で、ミクログリアを薬理学的に除去した慢性疼痛マウスではアストロサイトを活性化しても痛覚過敏は除去されなかった。アストロサイト活性化の下流にあるメカニズム、およびミクログリアとアストロサイトのグリアーグリア連関の探索、および臨床応用に向けた手技の開発を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題に挙げたミクログリアと神経回路再編について、ミクログリアの活性制御機構の解明を第一の目標と定め、ミクログリア内のカルシウム動態の観察を可能とする遺伝子改変マウスの構築を行い、突起の伸縮の細胞内基盤であるミクログリア内カルシウム動態の可視化に成功し、細胞内カルシウム動態の時空間的特徴を抽出することに成功し、その定量的な解析を行った。更に、同カルシウム動態が神経細胞活動に依存している可能性を見いだした。この結果は、ミクログリアと神経細胞が双方向に機能制御を行っていることを示している。アストロサイトによる神経回路長期再編については、計画課題である慢性疼痛モデルマウスを用いて病態原因回路の再編成へのアストロサイトの関与について研究を進め、アストロサイトの活性化による可塑性が亢進した状態で末梢感覚神経活動を抑制すると痛覚過敏回路が正常化することが認められ、新たな慢性疼痛の治療戦略構築が期待できる成果を得ている。痛覚過敏除去に際し、大脳皮質神経細胞活動も正常まで減弱することを確認している(名古屋大学医学系研究科の研究協力者の技術支援により実施)。さらに、この痛覚過敏の除去にはミクログリアも関連していることが判明し、難治性慢性疼痛の臨床治療法の新たなターゲットを示せる可能が得られた。コロナ禍の状況で遺伝子改変マウスの構築にやや時間がかかったが、着実な進捗が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はミクログリアに関しては、ミクログリアー神経細胞間の相互シグナル因子、特に神経活動に依存して神経細胞からミクログリアへのシグナル因子の探索をおこなう。慢性疼痛解除に関しては、臨床応用をめざして、経頭蓋骨電流刺激(tDCS)によるアストロサイトの活性化や局所麻酔薬の適用の最適化を行う、また、異常痛覚形成時に新生した痛覚過敏関連シナプスの動態(アストロサイトの活性化時に除去されるのか?)、さらにはアストロサイト活性化の下流にミクログリアの活性化がみられるのかに検討を行い、臨床医学研究者との共同研究を検討する。
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