研究課題
基盤研究(A)
本研究は、血管とがん細胞との相互作用を、血管形成によりもたらされる腫瘍微小環境から解明していく研究である。血管形成単独、がん細胞の悪性化を単独のイベントとして解析する研究は国内外でも行われているが、我々は、血管形成の詳細な分子機序の解明を切り口にして、がん細胞の悪性化進展を解析する。がん細胞と血管細胞との相互作用を分断させることで、がんの悪性化を抑制するような新しいメカニズムの解析を計画している。
VEGFという血管形成に必須といわれてきた分子の阻害だけでは抗腫瘍効果は限定的であることが判明し、従来考えられてきた腫瘍血管形成の機序である、既存の血管から新しい血管が発芽して伸長する、いわゆる発芽的血管新生の概念から脱却した、腫瘍血管形成の分子機構の本当の原理を解明し、その機序に立脚した、新しい腫瘍環境の整備法を見いだすための概念を創出することを本研究の目的とした。そして、このような新しい血管形成の分子機序の理解の上で、腫瘍環境の変化と同時に生じる、がん細胞の上皮間葉転換などの悪性化の誘導、あるいはその抑制の機序を解明し、腫瘍生物学における新しい研究分野の創出につなげるべく研究を遂行した。令和2年度においては、研究項目1:新規腫瘍血管形成メカニズムである「伸展型血管新生」の分子機序の解明において、VEGF受容体2阻害抗体やVEGF受容体のチロシンキナーゼ阻害剤など血管新生抑制剤投与によっても腫瘍縮小が観察されない担がんマウスモデルを用いて、腫瘍内の血管と腫瘍環境に存在する血液細胞の質的および量的変化を解析した。その中で、特に変化の多かった骨髄球系細胞をターゲットにして、血管リモデリングとの関係を解析していくことを決定した。また、研究項目2:がんの悪性化に関わるアンジオクライン機構の解明、においては、ケラチノサイトのEMTが候補分子Xによってどのように抑制されるのかを解析し、候補miRNAの導入で、EMT関連遺伝子の発現に抑制がかかることを発見した。一方で、がん細胞に薬剤抵抗性を付与するアンジオクラインシグナルとしてスクリーニング結果得られた候補分子Yについては、血管内皮細胞とがん細胞の共培養系を駆使して、血管内皮細胞で候補分子Yの発現を誘導することで、がん細胞と共培養中にのみ発現が亢進する複数の遺伝子候補が得られた。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
International Immunology
巻: - 号: 5 ページ: 295-305
10.1093/intimm/dxaa008
Cancer Science
巻: 111 号: 7 ページ: 2400-2412
10.1111/cas.14452
Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology
巻: 40 号: 10 ページ: 2425-2439
10.1161/atvbaha.120.315003
Cell Reports
巻: 32 号: 2 ページ: 107906-107906
10.1016/j.celrep.2020.107906
Nature Communications
巻: 11 号: 1 ページ: 3571-3571
10.1038/s41467-020-17391-2
https://st.biken.osaka-u.ac.jp