研究課題/領域番号 |
20H00529
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分52:内科学一般およびその関連分野
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
神田 隆 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授(特命) (40204797)
|
研究分担者 |
竹下 幸男 山口大学, 医学部, 教授(連携講座) (70749829)
清水 文崇 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (90535254)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
44,590千円 (直接経費: 34,300千円、間接経費: 10,290千円)
2024年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2023年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2022年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2021年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2020年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
|
キーワード | 血液脳関門 / 血管内皮細胞 / アストロサイト / ペリサイト / 自己抗体 |
研究開始時の研究の概要 |
難治性中枢神経疾患の新規治療法開発の実現には血液脳関門という大きな障壁がある。本研究は、研究代表者の所属する教室で樹立した3種類のヒト血液脳関門由来不死化細胞株と、同細胞を用いて作成した相互細胞接着型ヒト血液脳関門in vitroモデルを用いて、2つの戦略のもとに難治性中枢神経疾患治療法の確立を試みようというものである。
|
研究実績の概要 |
相互細胞接着型ヒト血液脳関門三次元モデルを用い、血管内皮細胞バリアーを通過して血液脳関門構成アストロサイト、ペリサイトに作用して有用物質を放出させる低分子化合物のスクリーニングを初年度から継続して施行した。この結果、2種類の低分子・脂溶性物質(EP4アゴニスト、S1P5アゴニスト)を三次元モデルの血管内皮細胞側に作用させることで、この相互細胞接着型ヒト血液脳関門三次元モデルのアストロサイトから神経栄養因子BDNFが放出されることが明らかになった。この結果は国際雑誌に掲載された(Fujisawa M et al. J Neuroimmunol 2022)。血液脳関門の向こう側(脳側)に存在する細胞を血管側から操作し、有用な物質を脳内に放出させるという全く新しい発想の仕事の第一歩が結実した。一方、当初予想していた血液脳関門構成ペリサイトからのBDNF放出に関しては、有意な上昇を惹起する物質は同定できなかった。スクリーニングに用いた低分子化合物の範囲内では、ペリサイトよりアストロサイトがより強力な神経栄養因子産生細胞であることが示された。しかし、ペリサイトはBBB構成細胞として極めて強い生物学的活性を有する存在であり、ペリサイトに対するアストロサイトの優越性に関しては、検索対象となる低分子化合物の増加や測定する神経栄養因子の複数化などを通じて、さらなる検討が必要であるという次年度以降の課題が残された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血液脳関門を直接的に破壊して中枢神経に対する有用物質を脳内移行させるのではなく、血管内に注入した血液脳関門を自由に透過できる低分子物質を用いて脳内環境を変化させようという斬新な発想に基づく研究である。先行研究が存在しないので当初は手探りでの研究開始であったが、具体的な低分子化合物2種類(EP4アゴニスト、S1P5アゴニスト)が同定でき、英文一流紙(Fujisawa M et al. J Neuroimmunol 2022)に掲載できたという点ではおおむね順調に進展していると評価してよいものと思われる。COVID-19蔓延の影響で海外学会での発表の機会がこの2年間無く、本研究に関する欧米の研究者との意見交換が十分に行えなかったのが残念であるが、上記論文に関係した研究活動が注目されて、国内の複数の製薬企業との共同研究計画が進行中であり、スクリーニングの対象となる物質のさらなる拡大が期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
以下の4つの実験を推進し、血液脳関門を操作しうる低分子・脂溶性物質を複数ピックアップして今後のin vivo実験、更には医薬品としての実用化を目指す。 1.血液脳関門モデル内アストロサイト、ペリサイトからのBDNF放出を指標とした、EP4アゴニスト、S1P5アゴニスト以外のさらなる低分子・脂溶性物質のスクリーニングを行う。協力製薬企業が複数増加したので、対象となるライブラリーの増加が見込まれる。 2.すでに同定したEP4アゴニスト、S1P5アゴニストによるアストロサイトからのBDNF放出に関して、至適血中濃度の検証を行って、以降計画するin vivo実験の基盤を確立する。 3.EP4アゴニスト、S1P5アゴニストを用いて、BDNF以外の神経栄養因子(GDNF、bFGF、CNTFなど)のアストロサイト、ペリサイトからの放出をスクリーニングする。 4.低分子・脂溶性バリアー脆弱化候補物質のスクリーニングを進める。得られた候補物質に関して、相互細胞接着型ヒト血液脳関門三次元モデルでの再現性を確認する実験と並行して、濃度による効果の変化とバリアー脆弱化効果の持続時間を明らかにする。
|