研究課題/領域番号 |
20H00541
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分55:恒常性維持器官の外科学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石井 秀始 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教授 (10280736)
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研究分担者 |
土岐 祐一郎 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (20291445)
谷口 正輝 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (40362628)
落谷 孝広 東京医科大学, 医学部, 特任教授 (60192530)
江口 英利 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (90542118)
今野 雅允 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 助教 (80618207)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
45,630千円 (直接経費: 35,100千円、間接経費: 10,530千円)
2024年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2023年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2022年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2021年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2020年度: 21,190千円 (直接経費: 16,300千円、間接経費: 4,890千円)
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キーワード | エクソソーム / RNA修飾 / 難治がん / 膵がん / RNA / バイオマーカー |
研究開始時の研究の概要 |
消化器がん患者由来の生体材料を用いて、病態解析と診断のための新技術を研究した。(1)細胞外分泌小胞の『殻』に存在するがん細胞膜に特異的な抗原を指標にした収集法を開発し、(2)その収集したEVの『中身』のRNAの修飾を直接読む技術に発展させ、膵がんの診断での有用性を示した。これらのがんEV抗原と内部RNAを統合した解析により、バイオマーカー技術の最高精度化をはかりつつ膵がん以外のアンメット・ニーズが高い疾患にまで対象を広げて、病態を踏まえ画期的な創薬に応用できる技術基盤を完成させる計画である。
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研究実績の概要 |
前年度に引き続き、今年度は診断(ステージ別予後分類、免疫間質の応答の検討、層別化クラス分類)の検討を進めつつ、治療(RNAシーズを活用した新規治療法の開発)につき、研究を進めた。 (1)メカニズム解析:前臨床試験で臓器組織のメカニズムを明らかにし、ヒト手術材料と術前術後の血清・尿を用いて診断と創薬の基盤を構築した。RNA修飾酵素複合体を組織特異的に発現させるテトラサイクリン条件付き誘導システムを用いて、がんバイオマーカーにおけるRNA修飾を中心とした全オミックス情報の重要性をシングル細胞解析で明らかにした。 (2)バイオプシー:各組織からRNAを抽出してEx-TRを実施した。同一の試料から全オミックス計測して多層性に解析した(mRNA発現量とスプライシング;マイクロRNAの発現量;DNA変異とコピー数およびメチル化)。さらに腫瘍の組織でシングル細胞解析(10x)を実施し、上皮と間質に区分したデータを取得し、バイオマーカーで得られる情報の細胞の起源を検討した。 (3)画期的な治療シーズの展開:大阪大学の核酸プラットフォームを活用し、RNA修飾の情報に基づく新たな創薬展開を行い、知財化を進めている。 特に、治療シーズに関しては、IN VIVOでのスクリーニングで、効果があるものを優先的に選択して開発を進めた。動物実験に関して新しい実験施設がリニューアルされたので、本研究におけるメカニズム解析でも研究の進捗を図ることができた。さらに新たな研究員も参画し、国際化、女性参画、次世代を担う若手人材の育成にも力を入れて展開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
《課題1》国立がん研究センターや東北メガバンクの試料を活用してRNA修飾の情報の解析を進め、抗原 (Exo法)とRNA修飾 (TR法)の統合解析(Ex-TR法)で実用化を進め、他の方法と比較しながら「診断」精度を高めつつ適応範囲を確定した。幅広いがん種において、がん特異的な『殻』であるEVの抗原に応じて、その『中身』のRNA修飾情報を直接取得する技術を用いて解析した。シングル細胞解析による細胞毎の情報と、『殻』であるEVの抗原の情報、および『中身』のRNA修飾の情報を、動物モデルとヒト手術材料を用いて比較した。動物モデルとしては、RNA修飾としてのメチル化を誘導する酵素(Mettl3)のトランスジェニックマウスを用いて検討した。ヒト手術材料としてはオルガノイドを作成することに成功し、膵がんを中心として、その比較となる他の癌腫のサンプルを取得して検討した。 《課題2》RNA修飾の情報をどのように「疾病制御」に応用できるか明確にするため、バイオマーカーを基軸としたメカニズム解析を進め、POC(Proof-of Concept)を確保した。EVとRNA修飾を着眼点としたがんの悪性化メカニズムを前臨床試験で明らかにし、がんのRNA修飾を標的にしたコンパニオン診断技術を完成させた。特に、RNAを活用した創薬により、がんの完全治癒を実現できるシーズを開発し、その基盤技術の特許化を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画が順調に進捗し、がん幹細胞のRNA修飾酵素Mettl3等のDNA変異、mRNAメチル化、スプライシングを検討し、EX/MVがRNA修飾を介して、がん幹細胞に与える影響を解明し、難治がんにおけるメカニズム解析として論文等で公表した。バイオプシー試料のRNA修飾と全オミック情報を用いて、従来では得られなかった間質や免疫細胞の応答を可視化して理解し、さらに傾向標識したRNA修飾酵素Mettl3等の過剰発現マウスの組織を用いて個体レベルの各臓器(消化器、皮膚、肺、リンパ組織)で検討を進めた。がん患者のEXとMVから蛋白解析で抗原を同定し抗体を用いてEx法を組み立てる開発を進め成功した。Ex法で取集した試料からTR法で計測した。がん細胞由来のPdl1陽性のEX/MVとその内部のマイクロRNA修飾に焦点をあて、RNA修飾酵素におけるDNA変異の有無、マイクロRNAメチル化と標的mRNAの関係、mRNAメチル化とスプライシングの関係、mRNAメチル化と半減期の関係、mRNAのメチル化と翻訳量の関係を検討し、免疫チェックポイントの関わりを解明した。さらに今後は、これらの研究成果をふまえてコンパニオン診断技術として活用し、私たち独自のRNAシーズによる難治がんの完全治癒に向けたシーズ展開を大阪大学を中心とした産学連携で進めていく計画である。
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