研究課題/領域番号 |
20H00543
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分55:恒常性維持器官の外科学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 (2023-2024) 徳島大学 (2020-2022) |
研究代表者 |
片桐 豊雅 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所, 研究所長 (60291895)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
44,460千円 (直接経費: 34,200千円、間接経費: 10,260千円)
2024年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2023年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2022年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2021年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2020年度: 9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円)
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キーワード | 乳がん / がん抑制因子 / 相互作用阻害ペプチド / 治療耐性 / 足場タンパク質 / 治療抵抗性 / がん抑制分子 |
研究開始時の研究の概要 |
がんの分子標的治療薬開発は、がん遺伝子産物の活性制御を狙ったものが主流である一方、その多くは耐性や不応性の存在、創薬フィージビリティの低さから、期待通りの効果が得られていないのが現状である。我々は、既存の治療法とは異なる治療法として、がん抑制因子Prohibitin 2(PHB2)の抑制活性に着目し、その抑制活性を利用したBIG3-PHB2相互作用阻害ペプチド(stERAP)の治療薬開発を進めてきた。本研究では、stERAPのHER2陽性・抗HER2剤耐性乳がん・TNBCに対する新規治療法としての可能性の検討とBIG3-PHB2複合体の乳がん治療耐性機構における役割解明を目指す。
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研究実績の概要 |
研究代表者は、既存戦略とは異なるがん分子標的治療薬の開発を目指し「乳がん関連シグナル抑制因子PHB2」に着目してきた。詳細な機能解析の結果、エストロゲン受容体(ER)陽性乳がん細胞の細胞質において、研究代表者がこれまでに同定した「がん特異的足場タンパク質BIG3」がPHB2と結合し、その抑制機能を制御していることを明らかにした。さらに「BIG3-PHB2相互作用阻害ペプチド(stERAP)」を開発し、その投与にてBIG3から解放されたPHB2の抑制機能が再活性化することを利用した新たな治療法を提唱した。その後、さらに長期間の持続した薬効を示すダブルステープルペプチド (dstERAP)の開発にも成功している。本研究では、ER陽性乳がんに加えて、他の乳がんのサブタイプであるHER2陽性およびトリプルネガティブ乳がん(TNBC)、治療耐性獲得乳がん細胞におけるBIG3-PHB2の細胞内局在を通じた病態意義解明および相互作用阻害ペプチド(stERAPもしくはdstERAP)の新たな治療法としての可能性の追求を目的に本年度も解析を進めてきた。今年度は以下のことを明らかにした。 1)ER陽性乳がん細胞におけるdstERAPの長期薬効メカニズムに関して、抑制因子PHB2に結合するタンパク質をプロテオーム解析および機能解析を行った結果、翻訳後修飾であるSUMO化による転写関連因子群のリクルートを介したPHB2のERに対する持続的結合および転写活性持続的抑制の分子機構を明らかにした。 2)stERAPの抗HER2治療薬との併用による相乗効果、さらにtrastuzumab耐性細胞における薬効の分子機序として、耐性に関与するHER2下流シグナル活性化の持続的抑制を明らかにした。 3)難治性で予後不良なTNBC乳がんにおけるdstERAPの細胞増殖抑制効果、およびxenograft マウスモデルおける顕著なin vivo薬効を明らかにした。 4)dstERAPの治療薬開発のため、信頼性基準下でのin vitro薬効評価モデルの確立を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) dstERAPの長期薬効メカニズムに関し、抑制因子に結合するタンパク質をプロテオーム解析にて探索した結果、翻訳後修飾であるSUMO化を介した抑制因子の活性持続機構を明らかにした。 2) stERAPが抗HER2治療薬と併用することで相乗効果を示すこと、trastuzumab耐性細胞においてもその抵抗性を消失させ、感受性を回復させることを明らかにした。さらに、その薬効機序の一つとして、恒常的なHER2下流シグナル活性化を抑制していることも同定した。 3) dstERAPが難治性で予後不良なTNBC乳がんの細胞増殖を抑制すること、xenograft modelにおいても顕著な薬効を示すことを明らかにし、BIG3-PHB2複合体が既存戦略とは異なる新たな分子標的となり得ることを示した。 4) dstERAPの治療薬開発のため、信頼性基準下でのin vitro薬効評価モデルの確立を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに明らかにしてきたdstERAPの長期抗腫瘍効果について、SUMO化を中心とした翻訳後修飾を通じた抑制因子の長期活性化機構について引き続き解析を進める。この長期薬効については免疫系の関与を考慮し、stERAP (dstERAP) 投与後の腫瘍における網羅的遺伝子発現解析を実施することで、関与するシグナル経路を明らかにする。また、traszumab耐性細胞でのPHB2の細胞膜における抑制機構について明らかにする。さらにTNBC乳がん細胞におけるBIG3-PHB2制御機構の解明について、1) dstERAP投与後の局在変化に関し、ミトコンドリアを中心として観察し、形態変化のメカニズム解明を進める。2) 各種シグナル活性化依存的なPHB2およびBIG3のリン酸化部位および責任キナーゼの同定をin silico予測もしくはプロテオーム解析にて試みる。これらから、TNBC細胞に関わるシグナル依存的PHB2のリン酸化やその抑制活性への影響を検討し、BIG3-PHB2相互作用の抑制の分子機構を調べる。
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