研究課題/領域番号 |
20H00551
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分57:口腔科学およびその関連分野
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
中島 友紀 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (00346959)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
45,370千円 (直接経費: 34,900千円、間接経費: 10,470千円)
2023年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2022年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2021年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2020年度: 17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
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キーワード | 骨リモデリング / 細胞間クロストーク / 骨リモデリング制御分子 / 細胞系譜特異的な遺伝子改変マウス / 人為的制御法 |
研究開始時の研究の概要 |
骨は動的な恒常性を保ちながら常にダイナミックに生れ変わっており、この再構築は骨リモデリングと呼ばれ、健全で強靭な骨を維持する一方で、その破綻が骨疾患へと繋がる。骨リモデリングは、骨表面の実行細胞である破骨細胞と骨芽細胞、そして、骨に埋没した司令細胞である骨細胞の細胞間クロストークによって制御されていると考えられているが、その全貌解明には至っていない。 本研究では、統合的な骨構成細胞分化・機能データベースの構築と細胞レベルでの機能解析から、骨リモデリング制御分子を同定する。さらに、細胞系譜特異的な遺伝子改変マウス作成から生体レベルで骨リモデリングと破綻機構を解明し骨恒常性システムの全貌に迫る。
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研究実績の概要 |
本研究は、骨リモデリングの司令細胞である骨細胞と実行細胞である破骨細胞や骨芽細胞の細胞特性の解明を基盤に、骨の動的な恒常性システムの全貌に迫り、骨疾患制御法の分子基盤の確立へ道をつけることを目指している。新開発された骨細胞特異的なCreマウスとtdTomatoレポーターマウスの交配から、骨細胞が特異的に蛍光発光した骨細胞特異的ラベリングマウスが構築され、生理的な条件下に加え、生体レベルでの運動亢進および不全モデル、老化などにおける予備準備を実施した。さらに、新ディバイスとして作成した時空間特異的な骨細胞欠失モデルを用いて、骨における骨細胞の役割を生体レベルで理解する研究を着手し、世界に先駆け、骨細胞特定的な欠失状態が骨リモデリングへどのように影響をあたるかを生体レベルで観察することに成功した。 これら生体レベルでの研究の発展は、本研究領域に大きなインパクトを当たる可能性を秘めており、特に、骨からの骨細胞の分離法とシングルセル解析を図るプラットホームが完成したと言え、さらに空間的Visium解析の予備実験等の探索も開始した。また、骨リモデリングの実行細胞である骨芽細胞の分化系および骨芽細胞分化マスター転写因子Runx2欠損細胞、破骨細胞の分化系および破骨細胞マスター転写因子NFATc1の欠損細胞を用いた遺伝子発現プロファイリングに注力し、いくつかの候補遺伝子を選抜した。さらに細胞レベルでの解析から、候補遺伝子の骨特異的な改変マウスの作成した。 さらに、大規模なケミカルライブラリーを用いたスクリーニングから、骨疾患治療の創薬シーズの細胞レベルでの選抜が完了し、人為的な治療法を評価するステージへと繋がった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
世界に先駆けた骨細胞特異的なラベリングマウスや骨細胞欠失マウスが完成され、骨細胞のビジュアル化と定量化を図る実験系の構築にエフォートがかけられた。特に、凍結組織切片法の確立と、骨からの骨細胞分離法とFACS法による細胞集団のシングルセル解析は、骨細胞の細胞特性を知るうえで極めて重要な新規実験系であり、その予備実験が順調に進んでいる。 また、本研究を通じて、骨芽細胞分化系および骨芽細胞分化マスター転写因子Runx2欠損細胞、破骨細胞分化系および破骨細胞マスター転写因子NFATc1欠損細胞を用いた網羅的な遺伝子発現プロファイルを構築し、骨リモデリングを制御する可能性がある候補遺伝子の選抜に成功した。選抜された候補遺伝子の細胞レベルでの機能を明らかにするため、遺伝子ノックダウン細胞を樹立することで、骨構成細胞での機能を明らかにすることができた。さらに絞り込まれた候補遺伝子の生体レベルにおける機能を解き明かすため、骨構成細胞特異的な遺伝子改変マウスを構築および解析にステージへと発展した。また、以前同定した骨保護分子Sema3Aの骨芽細胞系譜特異的な遺伝子改変マウスを作成し、これまで不明であった男性性ホルモンによる制御機構の解明した(Endocrinology 2022)。さらに、大規模なケミカルライブラリーを用いたスクリーニングから、骨疾患治療の創薬シーズの細胞レベルでの選抜が完了した。生体での治療効果を評価するため、投与法、薬物体内動態など人為的な治療戦略の足掛かりを得た。特記すべきことに、世界に先駆け、骨と筋肉を同時に強化する創薬開発に成功し、運動器疾患の新規治療戦略の分子基盤を確立した(Bone Res 2022)。
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今後の研究の推進方策 |
骨細胞特異的な新規遺伝子改変システムを活用し、骨細胞のビジュアル化と定量化を完成させる。特に、凍結組織切片法の確立と新規空間解析Visiumの予備実験を開始する。骨からの骨細胞分離法とFACS法による細胞集団の定量化に注力する。また、生理的な正常状態をはじめ、運動亢進や運動不全モデルを検討・施行し、生体から直接、骨細胞をセルソーターにて単離し、次世代シーケンサーを用いて全発現遺伝子情報の獲得を目指す(RNA-Seq解析、シングルセル解析)。また、ストレスのない自由運動による運動機能改善システムの新規確立に注力する。 新たな樹立された骨細胞株を基盤に、力学やホルモンの刺激における遺伝子発現プロファイルを試みる。さらに骨細胞欠失マウスの骨解析(マイクロCTとX線撮影、病理組織標本による骨形態計測)を実施することで、骨細胞の骨組織における役割を詳細に明らかにする。 骨芽細胞の分化系および骨芽細胞分化マスター転写因子Runx2欠損細胞、破骨細胞の分化系および破骨細胞マスター転写因子NFATc1の欠損細胞を用いた網羅的な遺伝子発現プロファイルの構築から、実行細胞の分化責任分子や骨リモデリング分子の同定を目指す。また、新規炎症性骨破壊モデルの構築や、骨構成細胞の網羅的な遺伝情報から、細胞特性および細胞間クロストークを司る標的遺伝子も引き続き選定する。特に、すでに選抜された新規候補遺伝子の生体レベルでの骨への機能を解明し、プロジェクトゴールへとステップアップさせる。 イメージング・サイトメーターを用いた大規模なケミカルライブラリーによる骨疾患改善を目指した低分子化合物の選抜にも、さらに注力するとともに、すでに選抜された創薬シーズの生体レベルにおける骨疾患および運動器疾患の人為的な治療戦略を試みる。
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