研究課題/領域番号 |
20H00572
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
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研究機関 | 新潟医療福祉大学 (2023) 名古屋大学 (2020-2022) |
研究代表者 |
山本 裕二 新潟医療福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (30191456)
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研究分担者 |
木島 章文 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10389083)
福原 洸 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (10827611)
横山 慶子 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 准教授 (30722102)
島 弘幸 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (40312392)
小林 亮 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 名誉教授 (60153657)
加納 剛史 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (80513069)
石黒 章夫 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (90232280)
奥村 基生 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (90400663)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
45,370千円 (直接経費: 34,900千円、間接経費: 10,470千円)
2023年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
2022年度: 11,180千円 (直接経費: 8,600千円、間接経費: 2,580千円)
2021年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
2020年度: 17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
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キーワード | 対人運動技能 / ダイナミクス / 学習 / ロボティクス / 社交ダンス / 社交ダンスロボット / 事前情報 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,スポーツにおける対人運動技能の制御・学習則を解明する.対人運動技能とは,眼前の他者と連携や駆け引きを行う技能と,連携や駆け引きを通して互いに成長し続ける技能の両方を指す.これは様々なスポーツに共通の重要な技能であると考えられるが,従来は個の運動技能のみが扱われており,対人運動技能の制御・学習則は未知である.そこで本研究では,二者が連携や駆け引き,二者が連携して他の二者と駆け引きする対人運動技能の制御・学習過程の調査・行動実験からそこに潜む規則性を見つけ,数理モデルを構築して制御・学習の本質を理解し,ロボットに実装してその妥当性を検証する.
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研究実績の概要 |
従来の社交ダンスロボットの研究では安定性の高いモデルが多く扱われていたが, 実際の社交ダンサーは縦に長く不安定な形状である. また, 社交ダンスには「重力をうまく利用することで自然で美しい移動を行う」という知見があり, 人間に本来備わっているバランスを取る能力を利用して「わざとバランスを崩し, バランスをとる」ことの繰り返しで移動するというものである. そこで,社交ダンスの数理モデルとして,リーダー・フォロワーを考慮し,リードに対するフォロー,フォローに対するリフォローという物理的な力の相互作用を加味した,2つの倒立振子ロボットをバネで結合した,結合倒立振子モデルを提案した.提案モデルを用いてシミュレーションを作成したところ, 従来よりも滑らかな移動を観察することができた. また, リード・フォロー・リフォローによる協調制御を導入したことで, 互いのダイナミクスを活用し, 協調の精度を上げることができた. また,ネット型対人技能として,テニスのシングルスゲームを分析した結果,打球コースの系列に潜む規則性に対応する選手のコート上の動きに3次の系列効果,すなわち履歴現象が観察された.これは,実験的に打球コースを操作して得られた先行研究と同じことが,実際の試合においても見られたことになり,この履歴現象を利用するために,打球コースを切り替えていることが熟練者の特徴であると考えられた. さらに,格闘技型対人技能として,剣道において打突前の相手の構えのわずかな違いを熟練者は判断することができることを実験的に明らかにした.この実験では,打突者の打突前のかかとの高さを3段階設定したビデオ映像を,熟練者,中級者,初心者に対して呈示し,打突の可能性をVASによって判断させるもので,コロナ禍でも対人運動技能を明らかにするために計画された実験であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
社交ダンスロボットに関しては,より人間の動きに近いロボットの数理モデルを提案できることができた.具体的には,2つの倒立振子をバネでつないだ結合倒立振子モデルで,リード,フォロー,リフォローという物理的な力の相互作用を用いて,滑らかな二者の動きを再現することができた. また,ネット型対人運動技能として,テニスのシングルスゲームを分析し,打球コース系列に規則性があること,その打球コースの規則性に対応した相手選手の動きに3次の履歴現象がみられることが明らかになった.これは,実験的に打動作を操作した実験結果と同様であり,実際の試合においてもこうした履歴現象を利用していることが明らかになった. さらに,自転車競技のポイントレースにおける対人運動技能を検討するため,半周ごとの選手間の時間差から,レース全体の集団動態を主成分分析で分析した結果,集団の数と主集団の密度という2つの変数で,集団動態を表現できることを明らかにした.またこの2変数によって状態を4つに分類し,その状態遷移確率を求めることによって,異なるレースの特徴を記述することができた.これらの結果は,オープンアクセス論文として掲載された.
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今後の研究の推進方策 |
社交ダンスに関しては,結合倒立振子モデルのロボットへの実装を計画している.ただし,現時点では一次元上での動き(前後)のみを考慮していること,また,二足歩行ロボットの結合となるため安定性確保のため,吊り下げ型ロボットを検討している. また,ネット型対人運動技能に関しては,実際の試合での国際大会と大学生大会で見られた規則性の特徴をより明確にするために,左右への打球コースの状態遷移確率に基づくシミュレーション実験を行う予定である.そのために,相手打球コースに対応したコート上の選手の動きを表現するモデルを検討中で,有力なのは質量―バネ―ダンパモデルに外力を加えるものである.このモデルを用いて,シミュレーションで得られた動きから,その位置と速度を用いて,相関次元を求め,実際に用いられている打球コースの規則性を明らかにし,学会発表および論文投稿する予定である. さらに,対人技能としての「駆け引き」を検討できる実験課題を考案中で,この実験課題を用いて,二者が「切磋琢磨」する過程を検討する予定である.具体的には,画面上で,自らのエージェントが相手エージェントを衝突によって,設定された区域外へ押し出すような課題である.そして,そのエージェントの動きの学習過程を分析することによって,どういった方略・戦略を用い,どのようにお互いに変化していくかで,徐々に複雑になるであろう「切磋琢磨」の学習過程を検討する.
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