研究課題/領域番号 |
20H00628
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分63:環境解析評価およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
植村 立 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (00580143)
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研究分担者 |
阿部 理 名古屋大学, 環境学研究科, 助教 (00293720)
浅海 竜司 東北大学, 理学研究科, 准教授 (00400242)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
45,370千円 (直接経費: 34,900千円、間接経費: 10,470千円)
2023年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
2022年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2021年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2020年度: 18,200千円 (直接経費: 14,000千円、間接経費: 4,200千円)
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キーワード | 鍾乳石 / 古気候 / 安定同位体 / 流体包有物 / 氷期 / 最終氷期 / 同位体 / 安定同位体比 / 水の同位体 / 氷期サイクル / 酸素同位体 / コア掘削 |
研究開始時の研究の概要 |
長期間の気候変動データは、日射量等の変化に対する気候システムの応答を理解することに加え、気候シミュレーションの予測精度の向上のためにも必須といえる。近年、洞窟の鍾乳石の一種である石筍を用いた気候復元の研究が急速に拡大している。しかし、日本においては、大型の石筍が少なく、連続的なデータを得ることが困難であった。そこで、本計画では、洞窟内において、フローストーンと呼ばれる鍾乳石を掘削することで、連続かつ高時間分解能な気候変動データの取得を目指す。掘削したコアの安定同位体比や流体包有物の分析によって、過去の日本地域における気候変動の実態とその変動メカニズムを解明する。
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研究実績の概要 |
本計画では、主に沖縄地域の洞窟内で鍾乳石を掘削し、鍾乳石コアを採取することで、連続・高時間分解能の環境・気候変動のデータを得る。さらに、鍾乳石内に閉じ込められた流体包有物の同位体比分析をおこなうことで定量的な気候復元を行う。 本年度は、昨年度までに洞窟内の掘削によって得た長尺の鍾乳石ボーリングコアの安定同位体・U-Th年代分析を行った。特に、土壌成分も少なく気候復元に適しており、最も長い計126cmのコア試料(沖縄南大東島の山下洞において掘削)の分析を集中的に実施した。得られた試料の年代をウラン・トリウム法による放射性同位体分析をシンガポール南洋工科大学に於いて実施した結果、洞窟内では隣り合って上下に割れていたため1つの連続した石筍と考えていた2つのコアは別個の2個の石筍であったことが分かった。それぞれが9万年前から1万年前の長期間にわたってほぼ連続的に成長していたことが分かった。年代推定誤差の主な要因である土壌起源トリウムの濃度が極めて低いために高精度でU-Th年代が決定できた。具体的には年代誤差は±257年(成長速度の速い4万から6万年前の範囲)であり、国際的な標準データとなっている中国Hulu洞窟の同年代範囲の誤差±298年を超えるレベルのデータであった。また、最底部9万1千年前であり、これまで報告されている日本最古のU-Th年代であるKiriana鍾乳石(Mori et al., 2018)よりも1万2千年過去に遡ることができた。また、鍾乳石の含水率測定の結果は全体に低く、流体包有物は多く含まれていないことが示唆された。また、同位体分析装置の安定性向上のために温度を安定化させる器具を特注して設置した。これらの成果と今後方針を検討するために12月に研究参加者で打ち合わせを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2回目のコア掘削で得た長尺試料が計画通り最終氷期全体をカバーする古気候データを保存していることが分かり、本計画の最大の不確定要素であった「良質の長期間試料を獲得する」という点が達成された科学的な意義は大きい。一方で、安定同位体の分析速度は機器の不調等により計画よりも遅れいてる。これらを総合的に判断して、「おおむね順調」とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、鍾乳石コアのU-TH年代測定点を増やすことで年代モデルの高精度化を図る。また、炭酸カルシウム及び流体包有物の同位体比分析を進める。また、これまでに得たデータの解析を進める。
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