研究課題
基盤研究(A)
生体内外の環境に由来する様々なストレス (環境ストレス)に対して、生物が適切な遺伝子発現の制御と遺伝情報の恒常性を維持するために必要となる、「環境ストレス応答・ゲノム修復システム」の全体像を理解する。また、その破綻により発症するがん、老化、代謝異常などのヒト疾患の病態解明をおこなう。これにより、将来的な治療法・予防法開発に結びつく知識の蓄積を目指す。
環境ストレスの多くは、生物の遺伝情報が格納されるゲノムDNAに損傷を誘発する。DNA損傷は適切な遺伝子の発現を妨げることで、細胞機能の維持に障害をきたすと同時に、DNA合成を阻害し遺伝情報の劣化をもたらす。このため、環境ストレスへの過度な曝露は、老化や発がんを含む様々な疾患の発症と密接に関係する。本研究では、生体内外の環境に由来する様々なストレスに起因するDNA損傷に対する、DNA修復機構や環境ストレス応答機構の分子メカニズムの作動原理と、これらが障害されることで生じる生体影響について、トランスオミクス解析 (ゲノム/遺伝子発現/モデル動物/ヒト疾患症例)を用いた横断的な研究により理解を深め、関連するヒト疾患の病態解明を目指している。環境ストレス応答機構に異常を持つモデルマウスが複数系統樹立できており、継続して解析を実施した。その中で、特定の環境ストレス過負荷条件下で、予想に反した応答を示したモデルマウスが確認されたことから、より重点的に調査を進めたほか、ヒト病態との比較検討を行った。また本研究の過程で、生体内のDNA損傷修復を評価する新たな手技を構築したことから、今後のモデルマウスの解析にて活用してゆく予定である。さらに、別途病態解析を進めている新規疾患に関連するモデルマウスについても、ヒト症例にて認められる臨床症状を示唆する病態が観察されるなど、着実にデータを蓄積している。このほか、DNA修復欠損モデル細胞を用いた解析から、環境ストレス応答に関する新たな知見が得られており、分子・細胞生物学的解析も順調に推進している。
2: おおむね順調に進展している
環境ストレス応答機構に異常を持つモデルマウスを複数系統樹立し、それぞれ並行して解析を進めているほか、新たな系統樹立にも取り組んでいる。特定の環境ストレス過負荷条件下で予想に反した応答を示すなど、興味深いモデルマウスも含めて、多種類系統のモデルマウスの様々なオミクスデータが蓄積されつつある。さらに、モデルマウス生体内のDNA損傷修復を直接評価する新たな手技を構築したほか、DNA修復機構・環境ストレス応答機構をゲノムレベルで評価する新たな解析技術の確立にも取り組んでおり、これらの新規解析手法を活用することで、DNA修復機構・環境ストレス応答機構の異常により発症する疾患の分子病態解明がさらに進むと期待される。また、新規疾患に関連するモデルマウスの病態解析も順調に進んでいるほか、モデル細胞を用いた解析から、環境ストレス応答機構に関する新たな知見が得られていることなどから、本研究は順調に進展していると考えられる。引き続き、DNA修復機構・環境ストレス応答機構に異常をもつ多種類のモデルマウスの作製と分子病態の検討を実施するほか、関連するゲノム・分子生物学的解析も継続して進める。これらのデータを総合的に評価することで、DNA修復機構・環境ストレス応答機構の破綻により発症するヒト疾患の分子病態の解明につながってゆくと期待され、本研究は順調に進展していると考えられる。
DNA修復機構・環境ストレス応答の検討のために作製した種々のモデルマウスについて、評価・検証を継続するほか、樹立中のモデルマウスについても順次解析へ移行する。表現型解析のほか、環境ストレス過負荷条件下での応答評価や各種オミクス解析 (モデルマウスのゲノム・トランスクリプトーム解析やモデルマウス由来細胞による解析など)を実施し、DNA修復機構・環境ストレス応答機構の破綻による生体影響の解明につなげる。また引き続き、DNA修復機構・環境ストレス応答システムの異常が疑われる症例で、疾患原因が未同定の検体を収集し、各種オミクス解析を活用した実験的アプローチにより、疾患原因変異の特定と変異解析を行う。疾患原因が特定された症例は、順次、環境ストレスと生体影響との関係性についての調査を実施する。これらにより、DNA修復機構・環境ストレス応答機構の異常により発症するヒト疾患の分子病態理解を深める。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 9件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 備考 (2件) 産業財産権 (2件) (うち外国 1件)
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