研究課題/領域番号 |
20H00630
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分63:環境解析評価およびその関連分野
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
井原 賢 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 准教授 (70450202)
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研究分担者 |
豊田 賢治 新潟大学, 佐渡自然共生科学センター, 特任助教 (00757370)
宮川 信一 東京理科大学, 先進工学部生命システム工学科, 准教授 (30404354)
田中 宏明 京都大学, 工学研究科, 名誉教授 (70344017)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
45,240千円 (直接経費: 34,800千円、間接経費: 10,440千円)
2022年度: 16,250千円 (直接経費: 12,500千円、間接経費: 3,750千円)
2021年度: 13,520千円 (直接経費: 10,400千円、間接経費: 3,120千円)
2020年度: 15,470千円 (直接経費: 11,900千円、間接経費: 3,570千円)
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キーワード | 甲殻類 / Gタンパク質連結型受容体 / モノアミントランスポーター / 医薬品 / 下水 / セロトニントランスポーター / ミジンコ / クルマエビ / 抗うつ薬 / 遊泳阻害 / 繁殖阻害 / ドーパミントランスポーター / GPCR / in vitroアッセイ |
研究開始時の研究の概要 |
人が服用した医薬品は、屎尿とともに下水道を経て河川に排出される。人医薬品の半数はモノアミンとよばれる一連の神経伝達物質の作用を阻害するよう作られており、水生生物がこれらの医薬品に長期間にわたり曝露されると、行動や繁殖の異常による個体数の減少、生態系の破壊へと繋がる懸念がある。本研究では水生生態系を支える甲殻類への影響を科学的に評価することをめざし、薬理学的な細胞試験を開発して医薬品が阻害する甲殻類の受容体を同定する。さらに、個体の曝露試験により医薬品が甲殻類の繁殖・行動・環境応答に与える影響を明らかにする。また、下水や河川水中の医薬品が甲殻類の生理現象の異常を引き起こす危険度を推定する。
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研究実績の概要 |
R3年度はクルマエビのNET、DAT、ムスカリン性アセチルコリン受容体(CHRM)、ドーパミン受容体(DAR)1、DAR2、アドレナリン受容体(ADR)1、ADR2、のクローニングに成功した。細胞試験による活性測定を開始した。 ミジンコのSERTに対して、日本で市販されている抗うつ薬およびGPCR阻害薬を網羅的に試験を実施することで、その阻害活性を明らかにした。ヒトや魚のSERTとの反応性の相違が明らかとなった。 ミジンコ(D. pulex WTN6系統)とオオミジンコ(D. magna NIES系統)を用いてserotonin、fluoxetine、sertraline、dopamine、amitriptyline、chlorpromazine、mirtazapine、niclosamideに対する急性毒性試験(OECD TG202)と繁殖試験(OECD TG211)を実施した。遊泳阻害と繁殖、そして生まれてくる仔虫のオスの出現割合の増加による幼若ホルモン作用の検出に加え、オスの出現割合の減少による抗幼若ホルモン作用の検出を目的とした。serotonin、fluoxetine、sertraline、dopamineの4物質は急性毒性試験による遊泳阻害は確認できなかった。NIES系統を用いた繁殖試験ではこの4物質の曝露による高濃度区では試験期間中に産まれた仔虫総数が増加する傾向が見られた一方で、WTN6系統の2条件間ではそのような傾向は観察されなかった。また、amitriptyline、chlorpromazine、mirtazapine、niclosamideのうち、mirtazapineとniclosamideは遊泳阻害及び繁殖の著しい抑制がみられた。amitriptylineとchlorpromazineについても曝露濃度依存的に産まれた仔虫総数が減少した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにミジンコのSERT、クルマエビのSERT、NET、DAT、ムスカリン性アセチルコリン受容体(CHRM)、ドーパミン受容体(DAR)1、DAR2、アドレナリン受容体(ADR)1、ADR2、のクローニングに成功した。また、ミジンコとクルマエビのGたんぱく質連結型受容体(GPCR)のRNAseqを実施して、ヒトや魚類のGPCRに相同な遺伝子の配列情報を入手した。そして多くの遺伝子をクローニングすることができた。甲殻類GPCRに関しては、クルマエビ、ケガニ、ミジンコにドーパミン受容体、アドレナリン受容体、ムスカリン性アセチルコリン受容体が存在することを明らかにした。クルマエビのGPCRについてはクローニングが完了した。甲殻類には動物種でも脊椎動物のHRHに相同なGPCR遺伝子は見出せなかった。 ミジンコSERTについては日本で市販されている抗うつ薬およびGPCR阻害薬を網羅的に試験を実施することで、その阻害活性を明らかにした。ヒトや魚のSERTとの反応性の相違が明らかとなった。 ミジンコの急性毒性試験及び繁殖試験を実施した。オオミジンコを用いた既存のOECDテストガイドラインに加えて、独自に構築したD. pulex WTN6系統を用いた抗幼若ホルモン作用の検出が可能なアッセイ系を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
ミジンコSERTに対して下水が阻害活性を持つか否か、持つとすればどれくらいの活性を有するのかを検証する。 ミジンコ・クルマエビ・ケガニのSERTについて、昆虫細胞でのアッセイ系を開発する。具体的には昆虫細胞発現用のベクター(pIZT/V5-His)にサブクローニングする。 また、ミジンコのin vivo曝露試験から得た知見を他の甲殻類を用いて検証する。
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