研究課題/領域番号 |
20H00634
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分63:環境解析評価およびその関連分野
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
石橋 弘志 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (90403857)
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研究分担者 |
高橋 真 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (30370266)
川嶋 文人 愛媛大学, 農学研究科, 特定教授 (60346690)
有薗 幸司 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 特任教授 (70128148)
藤森 崇 龍谷大学, 先端理工学部, 准教授 (20583248)
加藤 恵介 東邦大学, 薬学部, 教授 (80276609)
日下部 太一 東邦大学, 薬学部, 講師 (00600032)
冨永 伸明 有明工業高等専門学校, 創造工学科, 教授 (30227631)
久保田 彰 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (60432811)
平野 将司 東海大学, 農学部, 特任准教授 (20554471)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
45,370千円 (直接経費: 34,900千円、間接経費: 10,470千円)
2024年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
2023年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2021年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2020年度: 17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
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キーワード | 有機フッ素化合物 / 残留性有機汚染物質 / 環境汚染 / 毒性影響 / PFAS / 核内受容体 |
研究開始時の研究の概要 |
有機フッ素化合物(PFASs)は残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約で対象物質に指定されリスク評価・管理されている。しかし近年、4,500種類以上の次世代型PFASsの存在が報告され、これらPFASsによるヒトや野生生物に対する影響が懸念されている。本研究課題では、次世代型PFASsによる環境汚染・生物蓄積の実態解明と毒性影響を評価し、PFASsの新たなリスク評価手法の確立を目指す。本研究成果は、国際的なPOPs条約関連機関が環境施策を立案するための有用な基礎情報となり、学術的・社会的意義は大きい。また、日本政府が推進している持続可能な開発目標(SDGs)にも対応する。
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研究実績の概要 |
今年度の成果は以下の通りである。 1)令和3年度にPFAS 33物質の測定を実施した別府湾および大阪湾の底質コア試料について、既知・未知有機フッ素化合物のマスバランス解析と時系列トレンドの解明を進めた。底質試料中の微量EOF(有機溶媒抽出可能な有機フッ素)の測定にあたり、抽出効率や使用器具の最適化を行い、高感度のEOF測定系を確立した。確立した手法をもとに底質中のEOFを測定し、別府湾の底質コア試料におけるEOFの時系列トレンドを解析した。また、前年度に引き続き、分析操作が煩雑な生物試料中PFASの分析法の迅速化・最適化を進めた。アルカリ分解の条件や固相カラムの種類など、分析プロトコルの最適化を行い、従来法よりも分析時間の短縮が可能となった。本法を用いて魚類やトビ、イノシシの臓器・組織に蓄積するPFASを測定し、長鎖(C8以上)のPFASが高い生物蓄積性を示すこと等を明らかにした。 2)昨年度までの成果より、ゼブラフィッシュ胚のPFOSおよびPFHxS曝露でpth1aの発現量が顕著に上昇したことから、本年度はカルシウムシグナルと毒性の関連性について検証した。NMDA受容体拮抗薬であるメマンチンとの共処置により、PFOS・PFHxS誘発性の体幹血流低下や心臓周囲浮腫は有意に改善したことから、カルシウムシグナルの撹乱が循環障害に関与する可能性が考えられた。 3)効率的に金属元素類を抽出すべく酸抽出に基づいて新しい手法を開発した。この方法では、撹拌と超音波照射の組み合わせにより、臭化水素酸15-48%を使用して、堆積物または固体サンプルから水銀を中心とした金属元素を効率良く抽出できた。また、この方法は、河川水・土壌や魚などの生物試料等さまざまな環境マトリックスにも適用できることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
別府湾および大阪湾の底質コア試料について、既知・未知有機フッ素化合物のマスバランス解析と時系列トレンドの解明を進めた。底質試料中の微量EOFの測定にあたり、高感度のEOF測定系を確立し、確立した手法を用いて、別府湾の底質コア試料におけるEOFの時系列トレンドを解析した。 前年度に引き続き、分析操作が煩雑な生物試料中PFASの分析法の迅速化・最適化を進めた。アルカリ分解の条件や固相カラムの種類など、分析プロトコルの最適化を行い、従来法よりも分析時間の短縮が可能となった。本法を用いて魚類やトビ、イノシシの臓器・組織に蓄積するPFASを測定し、長鎖(C8以上)のPFASが高い生物蓄積性を示すこと等を明らかにした。 PFOSおよびPFHxSのゼブラフィッシュ胚に対する毒性作用機序を明らかにするため、カルシウムシグナルと毒性の関連性について検証し、NMDA受容体拮抗薬メマンチンとの共処置試験により、カルシウムシグナルの撹乱が循環障害に関与する可能性が考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
底質試料中のEOFの測定法についてさらなる改良を進める。現行法により測定したEOFは定量下限付近での測定誤差が大きい。その解決方法としてCICの高感度化とEOFの抽出方法の改善を検討する。そのうえで底質コア試料中のEOF測定と時系列トレンドの解析を進め、先行のPFASの測定結果とあわせて、EOF中の既知・未知有機フッ素化合物のマスバランスを解析する予定である。 生体試料を対象としたPFASの測定に関しては、迅速化・最適化された手法を多様な野生動物の臓器・組織試料に適用し、次世代型PFASによる生態系汚染の実態や生物蓄積の特徴について、さらに調査研究を進める。また、愛媛大学es-BANKに長期保管されている鳥類試料を活用し、生態系におけるPFAS汚染の時系列変化について底質コア試料の結果と比較しながら、その実態を包括的に解析・考察する。 近年、環境中のPFASは世界中で問題となっており、特に漏洩サイト近傍の地下水や土壌については多くの分析が行われている。しかし地下水や土壌の分析は時間を要するため,、簡易迅速な方法が求められている。PFAS汚染の原因である漏洩サイト近傍の地下水や土壌の分析は重要であるため、これまでの分析法開発における知見をもとに、今後は地下水や土壌の簡易迅速かつコンタミの影響の少ない分析法の検討を進める予定である。 ゼブラフィッシュ胚に対する毒性研究では、PFOSおよびPFHxSのNMDA受容体を介した神経系に対する影響を行動解析や神経活性マーカーの測定などで評価するとともに、炭素数の異なる他のPFASについて毒性の類似性や相違点を調査する。 PPARαに対するPFASの相互作用に関する研究では、PPARαに結合するPFASの構造的特徴の組み合わせを明らかにするために人工知能技術を応用し、毒性が高いPFASをスクリーニングするための迅速で簡便な手法を構築する。
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