研究課題/領域番号 |
20H00670
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
大矢 裕一 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (10213886)
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研究分担者 |
高井 真司 大阪医科薬科大学, 医学部, 教授 (80288703)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
45,630千円 (直接経費: 35,100千円、間接経費: 10,530千円)
2024年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2023年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2021年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2020年度: 20,800千円 (直接経費: 16,000千円、間接経費: 4,800千円)
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キーワード | インジェクタブルポリマーゲ / 生分解性ポリマー / ドラッグデリバリー / 癒着防止 / 血管塞栓 / インジェクタブルポリマー / ゾルゲル転移 / 生分解性高分子 / 再生医療 / 脂肪由来幹細胞 / ドラッグデリバリーシステム / インジェクタブルポリマーゲル |
研究開始時の研究の概要 |
温度に応答してゾル状態からゲル状態へと転移するポリマーは,注射可能で体内でゲル化するインジェクタブルポリマー(IP)として医療用材料として利用可能である。本研究では,独自に開発した体内での分解時間の自在制御が可能なIPに,さらに組織接着性を付与し,五十肩等の慢性痛などを治療する血管塞栓療法材,腹腔鏡手術で使用可能な癒着防止材,抗原とアジュバントを望む放出パターンで徐放するワクチン製剤,麻酔効果を持続させる麻酔薬徐放製剤として応用する。
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研究実績の概要 |
本研究では,体内へ注入後,体温に応答してゲルを形成する温度応答型生分解性インジェクタブルポリマー(IP)の医療応用について検討する。本IPシステムは,温度上昇に伴いゲル化する際に,チオール-エン反応等により共有結合架橋を形成し,体内での分解時間を制御できる点に特徴がある。今年度は,(1)光照射によりゾル化する機能の付与,(2)多血小板血漿(PRP)を封入IPによる脂肪組織再生,(3)抗原,アジュバントとともに骨髄由来樹状細胞(BMDC)をIP注入することによるDCワクチン療法,(4) 抗原とアジュバントをIPゲルから徐放することによるワクチンとしての免疫効果の増強,について検討した。 (1)光照射によって開裂するケージド化合物(DEACM)を両末端に結合したIPを合成した。これを含むIP製剤はゲル化した後,光照射により開裂してカルボキシル基を生じて親水化し,ゾル化することが確認された。この系は,塞栓の再開通や癒着防止材として使用時の余剰部分の除去などに有用であると思われる。 (2)ラット全血からPRPを採取し,PRP封入IPゲルを作成し,ゲルからのサイトカイン放出を確認した。さらに,ラット鼠蹊部にPRP封入IPを注入し,所定時間経過後にゲル注入部位周辺に脂肪組織が生成していることを認めた。 (3)マウス骨髄から単離したBMDCを,モデル抗原およびアジュバント(CpG-DNA)とともにIPに封入し,モデル抗原を発現する癌細胞を移植したマウスに投与したところ,腫瘍増殖抑制効果を発現し,DCワクチンとして働くこと示唆された。 (4)抗原とアジュバントを内包させたゲルからの徐放について検討した。末端をスクシンイミド化したIPとポリリシンを混合した場合に長期にわたる徐放効果が確認された。これを担癌マウスに注入したところ,腫瘍増殖抑制効果が観測され,癌免疫療法へ応用できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
徐放型ワクチン製剤およびDCワクチンとしての応用については,担癌マウスを用いたin vivo実験において良好な実験結果が得るに至った。AdSCのゲル内部での生着率向上についても,ゼラチンを添加しそれを架橋剤とすることにより,生着率の向上が達成されることを示された。光照射によりゾル化するIPゲルについては,合成に成功したが,これを血管塞栓材として使用するには,目標とする物性が得られず,動物実験を実施するまでには至らなかった。癒着防止材としての使用についても,ラットで良好な実験結果を得たものの,中大動物(イヌ,ウサギ)の実験には至っていない。麻酔薬徐放については,動物実験を終了し,論文投稿の段階である。実施できていない部分はあるものの,全体としてはまずまずの成果が得られていると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
麻酔薬徐放製剤による麻酔鎮痛効果の持続時間をより長くできるよう性能向上を試みる。また,IPゲル内部とAdSCの組み合わせによる再生医療では,サルコペニアを対象疾患として設定し,動物実験を行う。また,多血小板血漿(PRP)とIPとの混合による脂肪組織再生について動物モデルを使用して検討を加える。さらに,歯科医師との共同研究を開始し,歯槽骨再生モデルの実験が可能となったので,β-TCPのような無機物顆粒を含んだIPによる骨再生を検討する。疎水性薬物をIPミセルに内包した時のゲル化特性,ゲル物性および薬剤徐放についても検討する。中型動物における癒着防止および安全性試験については,引き続き検討課題とする。
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