研究課題/領域番号 |
20H00684
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研究種目 |
奨励研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
1130:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
加藤 順子 早稲田大学, 国際学術院, 大学教員
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2021-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2020年度)
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配分額 *注記 |
430千円 (直接経費: 430千円)
2020年度: 430千円 (直接経費: 430千円)
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キーワード | 白人至上主義 / 民主主義 / 合衆国憲法 / 黒人選挙権 / 奴隷制 / 南北戦争 / クー・クラックス・クラン / 民主党 / 合衆国憲法5分の3条項 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の概要は、南部奴隷州でありながら、奴隷に対する教育を州法で禁止せず、また、奴隷制反対協会の数が全米一を誇った時もあるテネシー州において、なぜ1840年代にはその良心の声は消え、南北戦争後には白人至上主義組織KKKが誕生し、発達していくのかを解明する研究である。テネシー州の例から、アメリカの民主主義において良心的な少数意見が抹殺されていくプロセスを探る研究である。
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研究成果の概要 |
渡航制限のため研究内容を変更し「白人至上主義」組織とされるクー・クラックス・クラン発祥の地テネシー州を中心に「白人至上主義」という語が使われなかった時期を調査した。白人の優位が自明である奴隷制時代には一切言及されず、南北戦争前夜に連邦離脱派が「白人至上主義」のための離脱とは主張しなかったこと、黒人に対する暴力が多発した終戦直後も「白人至上主義」は標榜されていないことが判明した。 黒人奴隷は5分の3だけ人間であると誤解される憲法第1条2項も奴隷労働と自由労働の生産性を比較したものであり白人種の優位を謳ってはいないことを確認し、この語が米国史を一貫する思想ではないことを明らかにした。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究は、「白人至上主義」という語が合衆国建国当初から19世紀末までの長きにわたり使われなかった史実を明らかにすることによって、現在その語の乱用がアメリカの民主主義を脅かしていることに一石を投じる試みである。「白人至上主義」という語は、Black Lives Matterの高まりを背景に米国史を一貫する思想であるかのように誤って理解され、アメリカ社会を異人種間で分断するのみならず、白人全てが「至上」であるかのような言説が白人社会内の不平等を不可視化している。19世紀末に民主党白人エリートが自らの立場を維持する目的で使った政治スローガンを21世紀に無批判に使うのは民主主義に資するものではない。
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