研究課題
奨励研究
高等学校数学A「確率」におけるロールプレイ教材を開発・実践し, その検証を行う。具体的には, 「確率的な考え方をとりいれた企業キャンペーン」をテーマとし, 生徒に印象(人間による価値判断)とコスト計算(数学)を結びつけながら暫定的であるが洗練された結論に向けて思考させることを企図した授業を提案する。提案授業実施後に, 学習動機の2要因モデル(市川)を用いて, 動機づけの観点から授業分析を行う。
本研究では,高等学校数学Aにおける企業提案を題材としたロールプレイ教材を開発し,アンケート等の分析によりその検証を行った。その結果,ロールプレイ教材において数学にとどまらない多様な価値観に基づく議論が行われることが,本実践でも確認できた。また,生徒の感想からは個々の価値判断に基づく考察につながっていたことが読み取れた。学習動機の2要因モデル(市川)を用いた分析からは,通常授業とロールプレイ教材では生徒の動機の自己認識が異なり,特に,ロールプレイ教材では「学習していることを大事で役に立つものだと感じる」ことにつながりやすい可能性があることが明らかになった。
先行研究では,生徒にとって真正な問題を題材に,社会的オ―プンエンドな問題の特性(島田・馬場,2014)を検証しながら教材開発を行ったが,数学の授業で扱える「生徒にとって真正な問題」が豊富で無いことに起因する教材開発の困難性を解決することはできなかった。本研究では授業内で生徒にロール(役割)を設定し,そのロールにとって真正な問題を扱う「ロールプレイ教材」に注目した。数学教育分野における,ロールプレイ教材に関する教材・研究の蓄積は十分ではなく,動機付けの観点からロールプレイ教材の可能性を検討した本研究は,数学科における教材開発の幅を拡げるという点で意義のあるものである。
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