研究課題
奨励研究
大分県玖珠盆地から産出する淡水魚類化石群は「大分県の化石」としても指定されているものの, 詳細な研究がおこなわれてこなかった. 県の化石として指定されたとしても, 化石がもつ自然科学的な意義づけがなされていなければ教育資源とは十分に発揮できない.本研究では, 玖珠盆地産淡水魚類化石群について, 現生種との形態比較を行い, 分類学的研究を行い, 東アジアの淡水魚類の起源と進化の解明および, 地域の自然史教育資源の充実を図ることを目的とする
大分県玖珠盆地に分布する中部更新統野上層からは珪藻,植物,昆虫および淡水魚類の化石が産出する.野上層産淡水魚類化石のように全身骨格が保存された更新世の淡水魚類化石は稀であり,日本だけでなく東アジアの淡水魚類相を理解する上で重要である.また,日本地質学会より「大分県の化石」としても指定されており,地域の教育資源としても重要な化石群である.本研究ではニゴイ属化石について現生種との比較検討を行った.結果,玖珠盆地産ニゴイ属魚類の化石は,歯骨,主鰓蓋骨,下鰓蓋骨,椎骨数の特徴の組み合わせから現生種とは異なることが明らかとなった.したがって,絶滅種の可能性がるため,今後は種の記載を行う予定である.
ニゴイ属の全身骨格化石は玖珠盆地産の標本以外見当たらない.化石種と現生種の比較骨学的研究からニゴイ属魚類の古生物地理,進化,系統の知見を得ることが期待される.また,本研究で取り扱った玖珠盆地産魚類化石群は日本地質学会より「大分県の化石」として指定されており,上野ほか(1975,2000)などの研究に続き,本魚類化石群を継続的に研究することは地域の理科教育資源の充実につながることが期待される.さらに,淡水魚類の古生物学的な知見を得ることは,現生淡水魚類の起源と分布,生態の知見を蓄積することにつながり,淡水魚類の保全を検討する際に必須なデーターとなる.
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