研究課題
奨励研究
せん妄を発症すると臨床転帰が悪化(入院期間の延長、死亡率の上昇, 認知機能の低下等)するため, その管理は重要である。しかし, せん妄治療に適応をもつ治療薬はなく, その開発は急務である。本研究では、せん妄モデル動物を用いて新規睡眠薬のラメルテオンによるせん妄抑制効果のメカニズムを解明する。
せん妄の発症機序として脳内の炎症性サイトカインの上昇が報告されているため、せん妄モデルマウスとしてリポ多糖を腹腔内投与し、脳内の炎症を惹起し、さらにせん妄を誘発するためジアゼパム投与を行った。その後、ペントバルビタールの投与による体向反射消失時間を測定することでせん妄症状である過鎮静の評価を行う方法を確立した。せん妄モデルマウスを用いてせん妄抑制効果が期待できるラメルテオンを含む現在上市されている医薬品において、体向反射消失時間の短縮効果の評価を行った結果、脳内炎症により延長した体向反射消失時間はラメルテオンでは短縮効果が得られなかったが、抑肝散の投与により短縮結果が得られた。
高齢社会に伴い急増する高齢の入院患者では一過性の認知機能障害である、せん妄が頻発することが知られている。せん妄を発症すると臨床転帰が悪化(入院期間の延長、死亡率の上昇、認知機能の低下等)するため、その管理は重要である。しかし、せん妄治療に適応をもつ治療薬はなく、その開発は急務である。本研究では、せん妄モデルマウスの作成を確立し、せん妄抑制効果が期待できる医薬品および成分をせん妄モデルマウスを用いて検討することとした。今後、せん妄発症機序の解明が進めば、予防薬及び治療薬の開発につながり、高齢者の安全な入院管理や医療費の抑制が期待される。